第30話 デルの葛藤

「おはよう!葵ちゃん!」


「おはよう! 

デルちゃん!お待たせ!

さぁ一緒に学校へ行きましょう」


デルは毎朝

葵が住む サラの店まで 

誘いにきており

葵にとって 大の親友になっていた


アデルス学園での 学校生活は

ラックやアニーも加わり

4人でいつも行動を共にしていた


葵は クラスで人気者であり

いつも人だかりができており

週末は サラの店の半分以上は

アデルス学園の生徒達で占めており

大盛況であった!


彼らは思春期ならではの悩み

親との確執 将来の不安など

個々に抱えていた 心の内にあった問題を打ち明け

葵が励ましの言葉をかけ

お互いに 共有し合うようになり 支え合っていた


これまで学園内にあった

貴族と平民の格差社会があったが

身分の垣根は消え 皆が家族のようになり

互いを思いやるように なっていたのである


学園長のルスタは 

葵が学園に通うようになり

学生の心に根付く悪根の力から解放され

思いやりと優しさを兼ね備えた子供達であると!

誇らしげにしており 

アデルス学園の評判は 遠く

スンツヴァル王都の王宮まで届いており

入学希望者が殺到するほどになっていた


□◆□◇◆


葵はデルと2人で

学校に向かう道中 

デルが突然立ち止まり 叫んだ!


「葵ちゃん

実は 相談したい事があるのだけど・・」


「どうしたの?

デルちゃん!!」


「実は・・わたし 昨晩発生した

盗難事件の犯人を

目撃してしまったのよ!!」


「犯人を見たというの?」


「そうなのよ・・・盗みは 悪い事だし

本当は 村の保安官に伝えて

罪を犯した者は スンツヴァル王都議会法の規定に従って

厳しく裁かれる事になっている・・・でも・・」


「デルちゃんは

盗んだ相手の事を 考えて

何とか 穏便に解決したい!と

考えているのね?」


「ええ・・

どうして分かるの?葵ちゃん!

あなたには 何でもお見通しね・・


あの子たちは

きっとリムラ村の子だと思う・・」


「リムラ村?

ええ・・身なりが随分汚れていて 

しばらく食べさせてもらっていないのか・・

凄く痩せていて・・まるで・・」

デルは言いかけて 涙ぐみ

言葉が続かなかった・・


(デルは初めて葵に出会った日の事を

思い出していた・・・葵自身も かなり痩せており

いまでこそ3食 食事を提供してもらっているが

当時は・・一日デムの実だけだった話を聞いて 衝撃を受け

とても胸を痛めていたのであった・・

だからこそ 葵と同じ境遇だった子供達を見ると


裁く気持ちより 

何とか助けてあげたい!

同情心が強く 湧いてくるのであった!


「葵ちゃん!

私ね! 葵ちゃんに出会ってから

周りの人の事が とても気になるようになったの・・

困っている人がいたら 助けてあげたい!

何故そのような思いになるのか?

不思議に思うわ・・


なぜならこれまでの自分は

美意識が高くて 王都の流行にばかり目がいっていて

身なりや まわりからどう見られているか?

そんな事ばかり考えて 私の内面は

とても幼く 自分勝手な人間だったように思うの・・


当時の自分の姿を思いだすと

とても恥ずかしい 気持ちになるわ!


でも今は 盗みをしたリムラ村の子供たちの姿が

頭から どうしても離れないの!

あの子たちには 裁きよりも

救いの手を 差し伸べてあげるべきだと思うの!!


そしてあの子たちに 

優しく語り掛け 助けてあげたい!

温かい食事が食べられて

私達と一緒の学校に行けるように

村で支援する事はできないのかしら?」


「デルちゃん・・

素晴らしい考えだと思うわ!


私も あなたの立場なら

同じ判断をしたと思うわ!」


「本当に?

そういってもらえると とても嬉しいわ!


私自身 リムラ村への偏見が強くあって

廃村化し 怖い村だと・・・

実際この村の人々は ヨーデルさん以外

誰も近づこうとしない 偏見がある事を

とても恥ずかしく思います・・


今尚リムラ村に暮らす 残された人達を

どうにか助けてあげたい!そして

リムラ村に活気が生まれるように

できる事を これから考えていけないかしら?」


葵はとても驚いていた

まさにデルが提案した 同じ内容を

ヨーデルさんに伝え 

アデルス学園の有志を集めて


週末に ボランティア活動を提案したい!と

考えていたのであった!


デル自身 葵から受けた

妖精族の秘術の影響で

大人顔負けの発言ができるようになり

毎日 生きがいをもって生活できるようになっていた!


全て葵が 巫女として

完全に目覚めようとしている 前兆であるといえた


「デルちゃん!

ラックとアニー 今晩にでも

サラさんやヨーデルさん

村長さんに 相談してみましょう!!」


「ええ!喜んで!」


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