第31話 神具『琴笛』

その晩 

葵はアニーとデルと一緒に

ラックの家にお邪魔する事になった


「こんばんは!

おじゃまします!」


「みんな!

よく来たね!こっちへ来て!」


ラックの家は

小さくはあったが精錬された内装で

王都の古美術が幾つも 置かれていた


「これは何ですか?」


葵は無造作に置かれている笛を見つけ

吸いつかれるように 目が離せなくなっていた


「これは 父さんが13年前

スンツヴァル王都の市街地に住んでいた時

古美術店で見つけて

たまたま購入したようなのだけど・・・

それがどうしたの?」


「少し触っても 構わない?」


葵は古い笛を手にした!

するとその瞬間 次元の歪みが生じ

魂に直接 語り掛ける言葉を聞いた


□◆□◇◆


我が子よ!

神具『琴笛』を手にせよ・・・

汝に 新たな力を与えよう!


□◆□◇◆


「今のは何だ?

『琴笛』とは? 

どこかで聞いた事がある声のような・・・」

ラックは 葵に語られた言葉を 

不思議と理解する事ができた


すると客間の奥から

村長ガデムと妻ルスタ

ヨーデルが 慌てて飛び出してきた!


「何事だ!?」

ヨーデルは 『琴笛』を手にした葵を見て

驚愕していた!

「これは!どういう事だ!」


これまで 古来の美術品として

展示していた笛が・・・

葵が手にした事によって

これまで感じた事がない 

神々しい器具に 変化し

光輝いているではないか!


「父さん!

これは・・もしかしたら

伝説の神具ではないかな?


「神具『琴笛』だと?

伝説では2000年前に初代巫女様が

スンツヴァル王都を建設した際

初代皇帝に都を「聖なる力」で守る為に

安置するように命じた神具であり 

1000年前に行方不明になったと聞いたが・・・


そのような代物が 

どうして我が家に・・

それに葵ちゃんが 手にした事で

どうして このような姿に変化したのだ・・


ヨーデルとガデム村長とルスタは

3人で顔を合わせて・・頷いた

心臓の鼓動が激しくなり

汗が止まらなくなっていた・・


そして話し合いの結果

3人はある結論に達していた・・


≪もしかしたら

葵ちゃんは 巫女様なのではないか?≫


まだ半信半疑ではあったが

神具『琴笛』が本来の持ち主の手に戻り

神具としての輝きを 取り戻した事が

葵が巫女である 明らかな証明であるといえた


≪これは 凄い事になったぞ・・

急ぎ アダム皇帝に知らせなくては!!≫


ガデム村長は手紙を書き

スンツヴァル王都アダム皇帝に向けて

早馬を出したのであった


□◆□◇◆


「葵ちゃん!

すまないが・・その笛を

もとあった場所に 戻してくれるかい?」


「はい!すいません

勝手に触ってしまって」


「いや!構わないよ・・」


ヨーデルは神具『琴笛』の存在に

心穏やかではなかったが・・

とりあえず食事をする為に

皆を 客間に招いた


「君たちは私に

相談があると言っていたが

その前に家内が君達のために作った

晩餐会を楽しもうではないか!」


ヨーデルは葵の皿に

ガデム村の家族料理をのせてくれた


「ヨーデルさん!

とても美味しいです!」

葵は家族と食事をしているような

和やかなひと時を過ごし 

心から満足を得ることができた

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