第19話 ダンとの別居

その晩 葵は夢を見た


これまで開かれなかった道に

光りが照らされて


真っすぐ 前を見つめて

歩いていけるような!

期待感が不思議と 湧いていた


まだまだ小さな灯だけれど

わたしの周りには

たくさんの灯があって


私の小さな 胸の鼓動が

ジンジンと 響き

全ての闇の束縛が 少しずつ 

解き放たれていくように感じる・・


「父さん!待っていてください!

私が 父さんを救ってみせます!」


葵は夜中に 目を覚まして

今日一日の出来事を 

思い返していた

サラの店の2階にある 

住居に用意された

柔らかい羽毛のベットが 

何とも心地よく

心穏やかに 休むことができていた


「ありがとう!サラさん!

今日は とても素敵な一日でした!


サラさんが作ってくれた

パサラ料理は、本当に美味しかった!

優しく なんだか懐かしい味が

これまで隙間だらけの 心の溝を 

覆いつくしてくれる

母のハグのような 優しさが感じられた


「わたしの人生は これから

どうなっていくのだろう・・


今晩だけサラさんの家に泊まる筈だったが

明日 ヨーデルさんと村長さん達が

父さんに 大事な話をしにいくと 聞いている


私は 本当は父さんと一緒に暮らしたい!

でも サラさんが言っていたように


しばらくお互いに 距離をあけて

暮らした方が 良いのかも?しれない・・


葵は いろいろ考えていたが 

頭がいっぱいになり

そのまま 深く眠入っていた


□◆□◇◆


翌朝 

葵は目覚めると


サラが優しく 

起こしにきてくれた


「葵ちゃん!

おはよう!よく眠れたかしら?」


「おはようございます!サラさん

お陰様で ぐっすり眠れました!

ありがとうございます!」


「良かったわ!


葵ちゃん 今から

大事な話があるから

1階に 降りてきてくれるかしら!」


「分かりました!

すぐに行きます!」


葵が 向かうと

そこには ヨーデルと

サラさん夫婦が

美味しい朝食を用意して 

葵を待っていた


「おはよう!葵ちゃん

今朝は とても顔色が良いようだね!」


「はい!ヨーデルさん

ありがとうございます!」


「葵ちゃん!早速だが

君に大切な話があるのだ!」


「何ですか?」


「実は ついさっきまで

君の父さんに 会っていたんだ!」


「父さんに! ですか?」


「様子はどうでしたか?

お酒を飲みすぎていませんでしたか?


いつもデムの実の報酬を得た晩は

飲みすぎる傾向にあるので・・

心配していたのです!」


「葵ちゃん!

君は本当に優しい子だね!


父さんは 大丈夫だよ!」


「そうですか?

それなら 良かったです!」

葵は本当に 

父の安否を心配しているようだった


「葵ちゃん!しばらく父さんと別れて

ここでサラさんと一緒に暮らさないか?


それが 君たち親子にとって

大切な事だと 私は思うのだ!」


「そうよ!葵ちゃん

私達夫婦と一緒に暮らしましょう!」


「皆さん!

ありがとうございます!


でも父さんが 家で待っているので

私は 家に帰ります!

帰らせてください!

私がいないと 

父さんが困るのです!」


「その点は 心配いらないよ!


今朝 村長と一緒に

今朝ダンの家まで出向いてね

ある提案をしたのだ!


それは 男手ひとりで女の子を

育てるのは大変だろうから

しばらくガデムの町全体で

葵ちゃんの面倒を見ると 

提案をしたのだ!


実は以前より

ガデム村で取り組んでいた 村事業があってね!


エーランド島南部にすむ

ラシュール人との事業提携があり

リムラ村の特産品であるデムの実を

エーランド島でも栽培したいと

申し出があったのだ!


ダンはデムの実栽培に関しては

かなりの知識があり

腕の良い農家だから


デムの実栽培を営む

農家に対して、報奨金を出すので

1年間ラシュール人に対して

デムの実栽培の指導をするように

正式に依頼をかけることになったのだよ!」


「父さんは 何て返事したのですか?」


「最初は渋っていたが・・

ラシュール人は体格がよく

農作業するには適しているといえる

良い労働力が来てくれることは

ダンにとっても メリットがある事なので

この提案を受けてくれたよ!」


今回の申し出は

これまでのダンであれば

悪根の呪いによる精神汚染により 

正しい判断能力ができない筈であったが


村長の妻ルスタの妖精族の秘術により

ダンが一時的ではあるが 

正気に戻る事に成功していた


ダン自身 葵に対して

この1年間どれだけ酷い暴力をしてきたか

認識ができていたので・・


葵をこれ以上傷つけない為に

今回の申し出を受け入れてくれたのだった


それに・・今決断をしないと

いつ狂暴な 性格に戻ってしまいそうで

ダン自身 恐れを抱いてた・・・


「分かりました!

父さんと私の為!

という事ですね!」


「そうよ!

葵ちゃん 分かってくれて

私達はとても嬉しいわ!


あなたは これから

私達の 大切な家族よ!」


「皆さん!

ありがとうございます!

これからよろしくお願いします!!!」

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