第5話 1年前の悲劇
「ダン!
貴様なんて事をしたのだ!
葵ちゃんはまだ12歳なのだぞ!
こんな幼い子に重労働をさせ
栄養失調と脱水で死にかけていたのだぞ!
この間も注意した筈だ!
それをまた・・お前は・・・」
ヨーデルは激しい剣幕で
ダンの胸ぐらを掴み 罵倒した!
しかしダンの目は虚ろであり
心がここにない様子であり
謝ってはいるが・・どこまで
理解しているのか分からない様子だった・・
(この男は・・・
はじめてリムラ村で会った時
預言者アブラハ様が、出会わせてくれた
その時は、とても人間味があり
優しい青年だったのに・・・・)
■□■◆◇
1年前
リムラ村が悪根の術者達に
襲われる事件が起きた!
村の社会が崩壊し
お互いが憎み合うようになり
多くの若者達、家族が村を去り
廃村化がどんどん進んでいった・・・
しかしそんな中ダンは
村人達の為に、最後まで犠牲を払い
力を尽くした功労者であった・・
それに 娘の葵ちゃんに対しても・・
愛情を注ぎ、とても優しい父親であったのだ!
しかしリムラ村最大の悲劇が起こる日
ダンは 私に助けを求める為に
ガデム村の途中まで来ていたのだ・・
しかし途中村人達に
取り押さえられ連れていかれていまった
私は あの時 ダンを
助けられなかった事を
今でも深く後悔している・・・
私が聞いた 最後のダンの叫びは
今でも 忘れる事はできない・・・
「やめろ!
俺には大切な娘がいるのだ!
あの子を守れるのは 俺だけだ!
頼む!俺の愛するあの子への
愛情を奪わないでくれ!!!!!」
ダンは、本当に優しい男だったのだ!
それなのにあの日を境に
完全に別人になってしまった・・
何か・・呪いのような術にかかり
心が支配されているのではないか?
ヨーデルは そう思えてならなかった・・
■□■◆◇
「旦那様 申し訳ありません
私も気をつけていたのですが
コイツ私に何も話さないもので・・・」
「お前を恐れているからだろう!
そんな事も分からないのか!?」
その様子を見ていた
エリーおばさんは思わず叫んだ!
「旦那!
葵ちゃんは私が引取るわ!
この男に父親の資格はないよ!!」
「葵ちゃんは
アンタの奴隷じゃないのよ!
どうしてもっと優しく接してあげられないの?」
(血が繋がっていないからといって・・
これでは葵ちゃんが可哀すぎるよ!)
「葵ちゃん!
私と一緒にここで暮らしましょう!
私があなたの面倒を見るわ!
大切にすると約束する!
あなたに苦労はさせない!
あなたに沢山の愛情を注いであげるから!」
エリーおばさんは葵を抱きしめ
涙ながらに葵に訴えた!
「待っておばさん!
(ラックが口を挟む)父さん・・・
葵ちゃん僕達と一緒に暮らせないかな?
家族になって欲しい!
お願い!父さん!!!!」
ラックは必至だった
「そうだな・・・
父親とは距離を置いた方がいいかも・・・」
(その方がこの子の為になるかも)
葵はまわりの大人たちの会話を聞き
俯いていて話を聞いていたが・・
「わたしは・・・
父さんと一緒にいたい!」
「えっ!?」
エリーおばさん
ラック、ヨーデル
みんな声を合わせて驚きの声をあげた!
葵にとって
今は厳しい父親であるが・・
1年前まで優しい父親であった記憶が忘れられず・・・
今は心も体もボロボロであったが
過去に受けた 絆は決して
崩れ去るものではなかったのだ!
(葵ちゃん・・君という子は・・・)
ヨーデルは泣きたくなる思いになった・・
2人の過去の関係性を知らなかったら
無理やりでも 引き離すのだけれど・・
ヨーデルにはそれが出来なかった・・
「ダメだよ!葵ちゃん!
このままダンさんといたら
いつか命が・・・」
ラックは涙ながらに必死に葵を説得しようとした!
ラックは14歳の男の子だが
事の深刻さは分かっているようだった
しばらく話し合いがなされたが・・結局
葵の思いを尊重する事になった
「いいかダン!
今度葵ちゃんに手をかけたら、赦さないからな!
お前との商売の取引きも終わりにする!
仕事を失う事になるから覚悟しておけよ!!
分かったな!!」
「ハイ・・・・
分かりました・・・」
しかしダンは なおも虚ろな表情であり
闇が彼の心を覆っていた
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