第4話 デムの実 過酷な労働

「大丈夫だ!ラック 

安心しな!

おそらく熱中症だと思う 

それより・・・」


ヨーデルは言いかけた事をやめた


■□■◆◇


実は10日前にも

今回の事件を予兆させる出来事があった

ヨーデルがダンの畑の横を通りかかった時

ダンの罵声が聞こえてきたのだ!


「働け!今日のノルマは

まだまだあるのだ!

そんなのろまな運搬だったら

日が暮れてしまうぞ!!」


7月上旬から8月にかけて 

デムの実の収穫期であり

熟したデムの実を捥いで 

作業小屋に運ぶ仕事が

リムラ村のどの農家もおこなっており

とても重労働の仕事であった


そんな大人でも辛い仕事を

ダンは娘である葵に担がせ

何度も往復させていたのだ!


畑と作業小屋は500メートル離れており 

籠に30個のデムの実をいれると5Kgの重さになり

12歳の少女が運ぶには 

かなり過酷であるのに


朝から晩まで 

働かされていたのである


「ダンめ!何て事を!!」

ヨーデルは ダンに注意しようと

近寄ろうとしたが 馬車にのって 

農場の方に行ってしまった


ヨーデルは 

葵がよろけながら農道を歩き・・

今にも倒れそうになっている姿を見て

居ても立っても居らず・・

近寄って声をかけたのである!


「大丈夫かい!!葵ちゃん!」


「ヨーデルさん・・私は大丈夫です

ありがとうございます・・・」


葵は頬は真っ赤になり

少し熱中症になりかけていた・・


「葵ちゃん!今日はとても暑い

私が水を持っているからこれを飲むといい」

ヨーデルは 手持ちの水筒を 葵に渡すと

しばらく介抱をしてあげた


「葵ちゃん

毎日 父さんの仕事を 

手伝っているのかい?」


「はい・・

でも私は 体力がなく

なかなか言われた通りに 

仕事をこなせないので

とても時間がかかってしまうのです・・・」


「デムの実の運搬は

大人でも辛い仕事なのだよ・・辛くはないかい?」


「デムの実運びは 

私の仕事なので!大丈夫です!


まだ仕事があるので・・失礼します」


葵は笑顔を見せたが 

少し暗い表情をしており 

幼い少女が精神のギリギリな状態である事を見てとれた


「葵ちゃん!これからもし

辛い事があったら 

私を頼って いいからね!

何でも相談してくれ!

きっと 君の力になるから!」


「はい・・・ヨーデルさん 

ありがとうございます!

でも私は 大丈夫です!

父さんは 厳しい人ですけど 

本当はとても優しい人ですから!」


(このままでは この子は 

いつか参ってしまかもしれない!

何とかしなくては!!」


ヨーデルは葵が労働力としか思われておらず

幼い子供に辛い仕事を

強いている現状に胸を痛めた!


それ以来

葵を 助けたい!と

思うようになり


仕事でリムラ村に 来る度に

ダン親子に声をかけるようにしていたのだが・・

今回・・葵が意識不明の重体になっている状況に

ヨーデルは怒りを覚えていた!!


(もうこの親子を 

ほってはおけない!!)


「ラックこの子には、

薬が必要なようだ!

エリーおばさんに手紙を書くので 

急ぎ 呼んできておくれ!


頼んだぞ!!!」


「うん 分かった!」


ラックは急いで荷馬車を飛び出して

エリーおばさんの家まで駆けて行った


ヨーデルは急いで 葵を

エリーおばさんの家に運び込んだ!


そして葵をベットで横に寝させ

冷たい水で 何度も頬を拭き 

全身の熱が冷めるように 手を尽くした!


「良かった!

ようやく意識が戻ったようだよ!

しかしかなり衰弱している・・


このまま発見が遅れていたら

命の危険があったと思うよ・・・」


エリーおばさんは目頭を熱くし

葵を優しく 看病し

いたわっていた


葵はうっすらと目をあけた


(ここは?)


「葵ちゃん!!

大丈夫かい!!!」

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