第9話 お婆さんの要求 ④

 俺はお婆さんから要求された素材集めの最中にレベルが上がり始めて新しいスキルを習得した。しかし、俺がいる世界はゲームに似てもそれとは違く、スキル詳細が簡単に見れる訳では無かった。その為また、いつもの図書館へ向かった。


 図書館に入ると相変わらず中央のカウンターにお爺さんが管理をしており、ただ何もせず、背筋を伸ばして真っ直ぐ立ち、来館者が来るのを待っていた。


「よっす爺さん! またきたよ」

「これはこれは、修平様ですね。また何かお探しの本がお有りで?」

「うん。アイテムコレクターとしてのレベルが上がって、新しいスキルを習得したんだけど、どんなスキルなのか分からなくてさ」

「それでは、職業別のスキル詳細ですね。今、探します」


そしてこの前と同じく、爺さんカウンターに置いてあるPCの様なキーボードを操作すると、円柱型の図書館が金庫のダイヤルの様に回転し、俺の探す本が爺さん目の前にスムーズに渡される。


「こちらでよろしいでしょうか?」

「サンキュー!」


 俺は図書館から職業別のスキル詳細が書かれている本を借り、近くにあった机で本をアイテムコレクターのページで開く。


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『アイテムコレクター』

商業系職業。何処にでもある素材から貴重な素材まで現地や冒険者とのトレードを通して集め、コレクションまたは売り捌く事が可能。街では出回っていない希少な素材もアイテムコレクターからでは格安で手に入る事もある。


スキル詳細:

『レアドロップ%』

初期から習得するスキル。アイテムコレクターが居る一定の範囲にて、自然の摂理を捻じ曲げ、本来なら希少の素材さえも一定の確率を持って入手を可能とするスキル。レベルアップ毎に0.1%確率が上昇する。


『ドロップブースト』

レベル50で習得するスキル。アイテムコレクターが倒したモンスターの生命の摂理を捻じ曲げ、確率100%を基準に素材の入手数を二倍にする。100%を超えた分は、超えた分の確率で入手数が三倍に倍増する。200%で三倍が確定する。


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 二倍……だと?それも自動スキルだから永久効果……!素晴らしい……素晴らし過ぎる!!素材集めが捗るううぅ!


 まだまだアイテムコレクターのスキル詳細は続きがあるがネタバレになるのでやめよう。


 という訳で俺は、またギルドでレイクと合流し、次の素材を探しに行った。次の素材は……『アンデットマンの霊魂』だ!霊魂って手で取れるの……?確か、夜の墓場だったよな。今は真っ昼間だから夜まで時間を過ごさないとな。


「んー夜まで何しようか」

「じゃあ装備を整えるのはどうかな? モンスターを狩りまくって金も稼いだでしょ? なら、今よりもう少し良い装備が買えそうじゃない?」

「確かに、そうだな。そうしよう」


 俺は、夜の墓場に出るというアンデットマンを湧かせる為に、夜まで時間過ごす事にした。その過ごす時間の一部として武器や防具を再調整する事にした。


 さてさて、金も結構余ってるし此処はもっと良い装備を買いたい所だか、ここは異世界。ゲームではなく、実際の体を動かしている事を忘れてはならない。つまり、重い武器は当然、持てる……?


 俺は街の武器屋に入りながら、入った直ぐ部屋の角に置いてある大剣を片手で持ち上げようとすると、それは凄まじく軽かった。いや、若干の重みは感じるものの、全くそれが重いとは感じない。俺は自分の筋力を疑う。


「え……なんで持てるんだ? 筋トレとか全くしていない筈なのに……」


 そう呆然としていると、レイクが横から声を掛けてきた。


「あれ? 斎藤君知らないの? 冒険者登録カードには、基本ステータスを基準とした身体能力値も表示されるんだよ」

「なんだって!? し、知らなかった……」


 俺はふとポケットから冒険者カードを取り出しカード内容を見ていると、基本ステータスの下に小さく『+』という表記を見つけた。アレか、ネットの記事や攻略サイトで見る折り畳みコマンドだ。


 俺は、その記号を軽く触れて見る。すると、ステータスはより詳細に表示された。


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レベル:80

体力:500

攻撃力:331

防御力:243

魔力:0

俊敏力:165

運力:139


+身体能力値:

筋力:26

耐久:16

精神:0

脚力:11

万運:6


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 ほ、ほう……?低いのか高いのか分からん値だな……。


 そこで俺はレイクから身体能力値の意味を教えてくれたが長いので纏めるとこうなるらしい。


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 筋力は重い武器の所持に必要になり、実は微力ながら攻撃力に加算される。


 耐久は凡ゆる攻撃や衝撃にダウンせず耐えられる値となり、防御力に加算される。


 精神は魔法を使うのに必要とし、魔力に加算される。


 脚力は実質的に足の速さを示す。


 万運は森羅万象の理がどれだけ捻じ曲げられるかの値。0から遠ざかる程、現実ばなれした運が動く。


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「いや運だけなんか凄くね?」

「そうだね。だから本当に運が高い人だと、幸運ばかり起こって、良い方向にも悪い方向にも、その人にとっての『幸運』が動くんだ」

「悪い方向って……もう嫌な予感しかしねぇわ」


 そういう訳で、初めて大剣が軽々と持てる理由を知った。因みに今俺が持っている武器はグレートソードという名前だ。ゲームでも良く聞く名前だな。


「じゃあ、なんとなく武具新調するか!」

「うん!」


 そうして全身の装備をより重く、硬い装備に変え、所持金は74100ゴルドとなった。それから俺は、レイクと雑談なりして、漸く夜が来た。


 時間制限の無い素材は幾らでも時間を費やさせるが、夜の墓場と言ってもこの世界に置いて、いつぐらいの時間が『夜』なのか正確に分からない。今の時間帯は、すっかり陽も沈んだ夜に見えるが、こういう時は兎に角急がなくては。


「レイク! もう時間だと思うぞ! 墓荒らしに行くぞ!」

「墓荒らしって……墓石は絶対に破壊しちゃダメだからね!」

「わーってるよ!」


 レイクの言う通りだとここで初めて気付かされた。素材集めてとは言うものの、周囲の物を破壊して弁償問題になっては元も子もない。時には慎重にやらないいけない時もあるんだなぁ。


 どうせ異世界の時計の読み方なんざややこしいに決まってる。だから俺は勘で時間を把握する。多分今は夜の八時。こんな時間に墓場にアンデットマンなんて出てくるのだろうか。


 そうして俺は街の墓地の前まで行くと早速不穏な看板を見つける。


『三の鐘から四の鐘まで墓地の出入りは危険な為、立ち入りは禁止する』


 三の鐘……?深夜三時って事か?まぁ、いいや。夜は立入禁止ってもう出ること確定じゃん。じゃあ遠慮無く。


 俺は墓地前の立入禁止の看板を跨いで墓地へ入って行くと、その瞬間から直ぐに不穏な空気を感じた。死者の魂が安らかに眠る場所とは到底思えない空気。安らか眠りというより、溢れ出んばかりの憎悪。いやもう此処潰せよ。墓地として役割果たしてねぇじゃねぇか。


 まぁ、今の時刻が分からない以上、とりあえずアンデットマンが出現しない時間まで狩り続けるか!


「今日はスピードを上げるぞレイク」

「うん! 分かった」


 そうして四時間狩り続けた。最早レベルがこの地帯の推奨を遥か上回っているのか、装備を新調した意味が無いと思えるほど、モンスターがサクサク死んでいく。


 どうしよう。手応えがなさ過ぎる。勿論この程度でレベルも上がらんし……、素材集めにやり甲斐を感じない……!


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レベル:80


所持金:80000ゴルド


所持物:(ドロップブースト250%)

・スライムの体液×200

・ウルフの爪×650

・フィアスウルフの鋭爪×300

・ゴブリンの魔石×500

・ゴブリンの剛魔石×100

・アンデットマンの臓物×600

・アンデットマンの霊魂×100

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レアドロップが大好きなゲーマーは異世界に行ってアイテム収集屋になりました。 Leiren Storathijs @LeirenStorathijs

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