第7話 お婆さんの要求 ②
さて、早速素材集め兼レベル上げの始まりだ。レベル上げにはレアドロップスキルの強化に意味がある。と言っても1レベルに0.1パーセントだから気の遠くなる話だが。
今のレベルは25。スライム狩りよりはこれから狩るフィアスウルフの方が経験値は大きいだろう。集める素材は『鋭爪』。簡単に言えば倒したフィアスウルフの爪を剥がせば良いという事になるが、こんなに多数のレアアイテムを要求してくるんだ。きっと簡単には行かないんだろう。
俺は、フィアスウルフを探しにレイクと街の外に出て、ウルフの巣を片っ端から探る。ウルフの巣の種類は多種多様で、岩の壁に洞窟の様に隠れていたり、草むらの一定範囲を縄張りとしていたり、何かのモンスターの拠点であっただろう場所を新たな拠点として巣を作っていたりしている。
「よっしゃあ! レイク! 部下もリーダーのフィアスウルフも片っ端から狩りまくるぜ! そして爪を剥がせえぇ!!」
「おう!」
「ウガアアァッ!」
いやー、今や狼なんて剣で斬り殺してんだよなぁ。生前とか野性の狼なんて会った事ねぇし、もし会ったとしても剣で戦おうとするなんて思わなかっただろうなぁ。
そして倒した狼は部下構わず、全ての爪をメリと剥がす。痛いんだろうなぁ〜爪を剥がすのって。良く拷問とか使われるって聞くけれど、死んでちゃそれも分かんねえか。
それからずっとウルフの巣を荒らしまくって四時間後。経験値も素材もめちゃくちゃ集まった。スライムの体液程では無いが。俺はふと冒険者登録カードを見る。
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レベル:40
体力:300
攻撃力:131
防御力:123
魔力:0
俊敏力:85
運力:42
習得スキル:
・レアドロップ4%(自動)
所持金:50100ゴルド
所持物:
・スライムの体液×200
・ウルフの爪×650
・フィアスウルフの鋭爪×330
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うんうん。順調に上がってるぅ!って……鋭爪いつの間に大量に手に入れたたぁあぁ!?そこまでレアじゃなかったんかねぇ?
「ふぅ……いやぁ、斎藤君を雇って良かったのか悪かったのか……雇った側の僕の方が大変な思いさせられるなんて。君は何がなんでも『やり過ぎ』なんだよ」
「はっ! それは褒め言葉になるぜ? とあるゲームをやっている時になフレンドに教えて貰ったんだ。『何かをやろう。何をやってくれと指示をされた時、何でもかんでも必要以上の事をする。やり過ぎだと思わせるのが大事なんだ』ってな。んまぁ、その言葉が適応するのは時の場合によるけどな」
「やり過ぎだと思わせる事か……いやいやいや、なんか名言みたいに言ってるけど、何の教訓にもならないから」
教訓では無いと俺はレイクに反論されるが、正直言って俺はこの考える曲げる気は無い。だって……ゲームじゃあ、経験値も溜まって素材も余分に溜まって、売れば金も稼げる!一石三鳥じゃね?
「ま、そう言う事だ! じゃ、次行くぞ!」
「え、休憩なし……?」
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さて次は『ゴブリンの剛魔石』か。魔石と言わずにわざわざ剛と付けるのが何か理由がありそうだな。一応調べておくか。俺は、アイテム図鑑の魔石カテゴリーの本を開く。
『剛魔石』
普通の魔石より多くの魔力が凝縮された魔石の事を言う。普通のモンスターなら単なる魔石しか生成しないが、生息地域と環境が限られ孤立し、本来の性質は別の行動を強いられているモンスターが学習する事で、体質が強化され、稀に剛魔石を生成する。街には殆ど出されず高価で取引される為、かなり希少。
うわぉ……。ゴブリン魔石だってそこそこ希少って書いてあんのに、剛魔石自体がかなり希少と来たか。こりゃきっとえぐいぞぉ〜 ワクワクするぜぇ。
ではこれから荒野地帯にいるゴブリンを探す訳だが、まず荒野地帯が何処にあるか分からない。南?北?んなアバウトな勘を信じても時間を無駄にするだけだ。レイクも疲れている事だし、休憩も兼ねて街に戻ってワールドマップを探そう。と言ったらやっぱり図書館かなぁ?
俺はレイクと一緒に街に戻ると、レイクとは一旦離れて、一人で図書館へ向かった。
図書館に入ると、円柱型の図書館の中央カウンターには、変わらずあのお爺さんが立っていた。俺は、二度目という事なので気軽に話しかけた。
「おっす爺さん。また探し物があるんだけど良いかな?」
「おや? これはこれは貴方ですか……。えぇいつでもお越し下さい。本を探すのは私ではなく、この図書館自身ですから」
一見深い事言っているように聞こえるけど、実際は図書館のスーパーテクノロジーに頼ってるだけだからなんとも言えねぇ。
「えっとだな。ワールドマップってある? あー世界地図というか、この辺り周辺を記した広域地図でも良い。荒野地帯が何処に有るか知りたくてな」
「あぁ、世界地図ですか。それでしたら此方に」
お爺さんは、カウンター下の引き出しの様な所から、両腕広げる巨大な世界地図と手の平サイズのパンフレットの様な紙をカウンターの上に広げ、自前のメガネをポケットから取り出して地図をまじまじと見つめる。
「荒野地帯となりますと……この街から真西の方角になりますな。ただ、荒野地帯はレベル50〜80の高レベル帯のモンスターが出現しますのでご注意下さい」
「お、ほぅ……」
地図を探してくれと言っただけなのに、地帯の情報まで教えてくれるとはなんて親切なんだ……。にしてもレベル50〜80かぁ……。今はレベル40だし。10レベルも差があって一匹のゴブリンに勝てるか不安だ。
レベリングについては、自分よりレベルの高いパーティと組み、自分のレベルと差が激離れしたモンスターと戦う事で、例えレベル差の補正が掛かっても爆速レベリングができるんだが……素材集めたる物、効率が最優先となる。
いくらレア素材が欲しいからって自分より高レベルの敵と戦って素材集めするのは、負けて時間を無駄にするリスクもあり、特に長期戦なんかに持ち込めば、それほど面倒になる。そういや、この世界で死んだらどうなるんだろ……?
つまり、どうするべきか……。サクッとレベル上げる方法でも無いかねぇ。何度も言うがレベル上げには興味は無い。ただ適正レベルでも良いから、効率化の為に経験値が欲しいっ……!
「なるほどねぇ……すまん爺さん。もう一つ悩みが出来た。サクッとレベル上げ出来る所って無いかな?」
「ふむ……手っ取り早くレベル上げですか……。それなら闘技場とか如何でしょうか? 其処であれば、対戦相手とのレベル差によって一定の経験値が決められております」
あー、闘技場ねぇ……。なんか異世界転生で『戦う!』とか言ったら大体闘技場だよな。うん。まぁ、あんまり時間割きたく無いし、一戦だけでもやるか。
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俺はただ素材集めの効率化の為に、闘技場の出場を決めた。大丈夫。5レベルだけでも良いんだ。敵とのレベル差を広げてはならないからな。
俺は闘技場にエントリーし、指定された控え室で待っていると、割と直ぐによびだされた。控え室から出ると、鉄と錆の匂いが鼻を刺激する広い廊下に出て、この先が闘技場だろう巨大な門を潜る。
すると、地面が砂地の超巨大円型の闘技場に出る。三百六十度観客がおり、司会の声さえも掻き消される程の歓声が上がる。ただこの歓声は良く聞けば分かる。出場者の応援なんかではなく、『賭け』で勝つか負けるかの観客達の勝負に歓声が広がっている事を。
そこで、観客の声に負けじと声を張る司会がマイク越しで出場者の名前を叫び、また煽る。
『さぁ、今回も始まる恒例の命の奪い合い、
言いたい放題だな。まぁ、この煽りがあるからこそ、出場者はやる気を出すんだよなぁ……?
『それに対するは、大剣とパワーだけをこよなく愛する男、防御力は紙同然のディナトス! 愛の力と素材屋、一体何方が勝つのかあああぁ? レディー……ファイト!!』
あぁ、やっべ。ゲームだったら相手のレベル分かってたんだけどなぁ……まぁ、体術とステータスに頼れば何とかなるかなぁ……。
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レベル:40
体力:300
攻撃力:131
防御力:123
魔力:0
俊敏力:85
運力:42
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