第5話 コレクター魂 ②

 あれから俺は兎に角スライムを狩り、ぶっ通しで八時間が経っていた。景色はすっかり夜になり、俺のスライム狩りに付き合ってたレイクも近くの岩場に座り込み、休憩している。


 斯くして、スライムをただひたすらに狩り続ける俺は、体は体力の限界に達しているのに、いつの間にかレベルが上がりまくっているおかげか、最早その場から動かず、剣を適当に振り回しているだけで、剣の刃に当たったスライムは即死する。


 しかし、スライムの魔石は手に入る気配が一切しなかった。もう背中のリュックサックにはスライムの体液が千個を超えている。因みにこの世界の『所持』は、同じ物は一つにスタックされて例え千個のアイテムがあってもバッグがパンパンになる訳では無いと気付いた。


「斎藤君……もうやめません? 夜間は昼間より強力なモンスターも出ますし……」


 あぁ、レイク。君は俺に今何と言った?夜間は強力なモンスターだと?そいつは狩るしか無えよなぁ!?と思ったが、既にその強力なモンスターは倒しているのだと、リュックサックの中にいつの間に入っていた戦利品が証明していた。


『ブラックスライムの体液』

夜間にだけ現れるスライムの変異種。身体を毒の体液で構成しており、普通のスライムとは違い、攻撃的。この体液は回復の薬草を解毒薬に変化させる事が出来る。


 んまぁ、このブラックスライムに関しては俺の目的では無いし、無駄に消耗するのもアレだしな。帰るか!


 俺は、レイクの言われた通り、街に戻り、宿代を確保する為に商店で、少しだけスライムの体液を売る。すると、その売り先の商店は、最初俺の事を怒鳴り散らした挙句俺を、クビにしたおっさんの店だった。


「てめぇ、何しに来やがった」

「単なる客だよ。物、売りに来たんだよ」

「へぇ〜、物ねぇ。今日一日で何を持ってくるんだか……」


 ざっと『スライムの体液』五百個ほど。この世界のアイテムは入手した瞬間に、それに適応した入れ物に変化するという。俺は、おっさんの前にどっさりと細い試験管に入ったスライムの体液を五百本並べる。


「はいよ」

「どんだけ狩って来たんだ……? まぁ、良い。それじゃあ合計で……5000ゴルドだ」

「あー、それが店が買い取ってくれる基準?」


 合計売却額を聞いて俺は、そう言えばアイテムコレクターは他の冒険者にも売る事が出来ると思いだす。流石にモンスタードロップのアイテムは店で買う事は難しいだろう。そんな時に直接即座に買える窓口がアイテムコレクターってか。ふむふむ、だんだん理解して来たぜー。


「は? 何言ってんだ?」

「いやー俺、アイテムコレクターになったからさ、もう少し高く売れるかなーっと」

「はんっ! そういう事か! 好きにしろ」


 という訳で俺は、アイテムコレクターの特権、『所持物を冒険者へ売却』を実行する。ルールは簡単。売り手は好きに所持物の一個単位の値段を決め、後は買い手を待つ。それだけである。直接買い手を探しても良いが、他のアイテムコレクターの中では『非効率』らしい。


 なので早速……。


「スライムの体液一個30ゴルドだぜ〜誰か欲しい奴は居ねえかぁ〜?」


売却を始めてから十分程経った時だった。俺の前に腰を曲げながら杖を突く、深緑色のロープを着たお婆さんがやって来た。


「ヒッヒッヒ……若造。モンスターの素材を売っているのかね?」

「ん? あぁ、今はスライムの体液しか無いけど……とりあえず今日の宿代を確保しようかなーって」

「そうかそうか。若造、もし良ければ、儂なら商店より高く買ってやるぞ……。モンスター特有の素材で薬を作っておってのぉ……」

「よし乗った。どうせすぐ手に入るから、スライムの体液、千個売るわ」

「!? ほ、ほう……そうなると……合計五万ゴルドじゃのぉ……」


うおおおお!商店より十倍の利益じゃねぇか!この人は使えるぜ!


「ありがとよ! 婆さん!」

「ヒッヒッヒ、ならスライムの体液を売ってくれた例としてこれをやろう」


 お婆さんは俺に金を渡すと、ロープのポケットから怪しげな血のように真っ赤な薬の小瓶を俺の手に渡す。


「何これ……」

「普通の回復薬を基本に、スライムの体液やモンスターの素材を調合する事で作れる、強化回復薬じゃ。更に効果も強く、酔い効果もあるから多用は禁物じゃ」

「へぇ〜」


 俺はお婆さんの話は半ば半分聞いて居なかった。ただその赤い薬を見つめ感動を覚えていた。やっぱりこの婆さんは良い人だ。俺のアイテムコレクトを一気に進ませてくれる様な気がする!


「ねぇ、婆さん! 何処かで店をやってるの?」

「ヒッヒッヒ……街の外れで一人じゃ」

「よっしゃあ! じゃあまた今度、もっと沢山モンスターの素材持ってくるから売るよ!」

「それはありがたい話じゃ。なら今度一度来てくれ、お主に是非集めて欲しい素材がある。新しい薬の開発じゃ。報酬も高く用意してやろう」

「オーケー!」


 そういう訳で俺は、お婆さんと別れた後、街中でレイクと合流し、宿に泊まった。そうしてふと冒険者登録カードの情報を見る。


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レベル:25

体力:225

攻撃力:56

防御力:78

魔力:0

俊敏力:55

運力:27


習得スキル:

・レアドロップ2.5%(自動)


───────────────────────────


 おぉ……スライム狩りだけで25も上がったのか。ステータスもなかなかリアルだなぁ。

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