第5話 死して尚喰む
遺体解剖室
「パックリだな、後頭部真っ二つ。
首の骨まで削ってる」
解剖医という職業柄白衣にマスクと清潔感を煽っているが、個人的にはTシャツに短パンで構わないと思っている
「ムゴタリウスだね〜..。」
「なんだその態度、つか飯食うなケチャップ臭いんだよ。それと面倒だからって勝手に死体持ってくんなよ!」
キャスター付きのイスでクルクルと回りながら解剖医の金でデリバリーしたホットドックを頬張っている。
血の気の引いた安置室でケチャップ三割増しだ、リコピンの過剰摂取で死に至る可能性もゼロではない。
「文句言うなよ鉄
「フルネームを呼ぶな!」
「いつも新しい死体解剖しては写真撮って待ち受けにしてるよね〜。」
中2チックな本名を執拗に気にしている為名前を呼ばれるのを極端に嫌がる死体解剖医になったのは名を呼ばれる事も無く自分のペースで真相を解明出来ると思っているからだ。
「うなじ辺りまでズバっといくって事は相当な恨み買ってたのかね?
異端狩りってのは皆残忍な殺され方されるって訳だけどそういう事か。」
「いや、恨みを持ってる奴は人を殺さない。恨みってのは感情だからな、行動より思いに繋がる。実際に行動起こす奴ってのは簡単な道理だろうよ、邪魔だったからとか気持ち悪いとかな」
「変な奴だなそいつ。」
「お前が言うか?
まぁでも異端を殺る奴ってのはどっちかだろうな。極端に没個性の奴かもしくはど偉いクソ真面目な常識人...」
「そんな人いる?」
「ごまんといるわ、溢れてんだよ」
獣は意外なトコロに住まう。
餌を充分に確保でき、かつ競争の乏しい場所。牙など見せずとも良し。
「うわくっさ!
アルコール臭、便所なのここ?
それはアンモニア臭か、お弁当買ってきたよ〜唐揚げのやつ。」
「あいつか?」
「絶対に違うな、チビ女め。」
鳥の末路ならセーフだと思ったのだろう、生前度外視で身の毛もよだつコープスジョークだ。随分と人を選ぶ。
「うわ〜朝のおじさんだ、セーラー服着てないと普通だね。」
「鎧剥がせば皆そうでしょ、てか何でこんな分かりやすい死体調べてんの?
完全に見たまんまの奴なのに」
「お前が送ってくるからだろうが!
武器はナタ、オノ、頭蓋骨割れてる、他に聞きたい事あるかコラァ!?」
解剖医は今これでもかといきりたっている、昇る血があるだけマシだ。
ーーーー
『キーンコーンカーンコーン..』
「おはよう御座います!」
有美学園
日本の都市である西帝都でも有数の進学校であり名門の高校。快活な挨拶で一日を始めたクラスの教室の中には担任と呼ばれる支配者が住んでいる。
「おはよう。」
朝のホームルームが始まるが、ここでの教師の会話など耳を外してもいい内容だ、念入りに聞く生徒などいない。
「そういえば皆知ってるかな?
最近起きている連続殺人事件は。」
生徒が少し反応を示した。聞く耳を持たないという事は裏を返すと、話題性の限界が無いという事だ。
「おかしな格好の人間ばかりが殺される、それも酷く残忍な形で。」
「変質者が死んでいるんですよね?」
生徒の一人が問いかける。
「そうだね、一概にそう呼ばれる人たちが次々と被害に遭っている。」
「だったら自業自得だろ」
「…そう思う?」
正義とはおそらく、正当化の略である
ただしいものもそうでないものも、言葉一つで作り替えては錯覚させる。
「それじゃあ皆
今日一日も頑張って、号令。」
チャイムの鐘は幸福か絶望か、意識せずとも答えは出るだろう。
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