第3話 変態と変人は似て非なる者
円状に各駅を回る路線は平日ともなると常に人が敷き詰められている。
ここにわざわざ入り烏合の衆の仲間入りをするのは滑稽極まりない愚行だがそれが大きく捜査に影響するのだ。
『中入った〜?』
「なんでワタシだけなのよ、一人で喫茶店でラクしようってワケ?」
キャンディのみを車内に入れ、クリスはコーヒーを啜りトランシーバーで遠隔に指示、確かに一見手抜きに見えるが、捜査という言葉は都合が良い。
『何言ってんの?
電車で痴漢っていえば相場は女子よ、さぁロリコンよ集まれ。』
「何さらっとキモい事言ってんの!?
マジでやめなよ、リーマンなんて雇われた狂人ばっかなんだから!」
『そっちの方がイメージヤバいじゃない..。まぁいいやスマホの画面動画にして、周り写して貰える』
「スマホの画面?」『そ、画面。』
キャンディのスマホのムービーを、クリスのスマホの画面と連動する。
『うわスゴッ..!
思ったより人いるね。こりゃ随分と釣れそうだけど、大丈夫?』
「んな訳あるか!」『だよねぇ。』
背の低いキャンディの視界は限界がある。耳にはめたイヤホンを落とさないように気をつけてながら必死に腕を伸ばしスマホを掲げて動画を撮影する。
「見えてる?」
『うん、いっても頭ばっかだけど。』
「そりゃそうでしょ人写してんだから
もっと細かいとこ見なさいよズームとかしながら。」
クリスの軽い口調に少し苛々しながら撮影を続ける。
『何か触れられてる感覚は無い?』
ん..少し違和感は感じるけど満員だからだと思う。触られてる訳じゃない」
『いや、触られてるね。』「ウソ⁉︎」
キャンディの直ぐ背後、ズームした動画で見ると掌が動いている。
『画面一瞬後ろに向けたでしょ?
その時見えた、思いっきり触ってる』
「何してんだよ..!
今すぐ此処から突き出して...」
『いや、少し耐えてくれ。
ただの痴漢じゃなさそうだよ』
「レアな痴漢なんかもっとヤだよ!」
痴漢にしては独特だ
相場腕が伸びるのは尻だろう。しかしこの痴漢は肩甲骨を摩っている、肩にある翼のような出っ張りの骨を掌で擦っているのだ。電車の中で、アブノーマルなアブノーマルを見つけた。
「おい、早くどうにかしてくれよ!」
『一度スマホに映せる全面を映してみてくれる?』
「...やればいいのね、わかった!」
手首を回転させゆっくりと車内の映像を一周させた。
『‥次の駅で降りてくれ、各駅だからもう直ぐ止まる。』
「何が起きてるの⁉︎」
『後で説明する、取り敢えず降りて』
次の駅まで停車を待つ。
「早く停まれよ..!」
アナウンスが鳴り駅へ着くと電車は止まった。しかしおかしい、扉が開かない。これでは駅へ降りれない。
「...どうなってるの?
クリス、扉が開かないよ!」
固定されているかのようにガッチリと閉め切られている。押しても引いても駄目なときはどうすればいい、三つ目の方法を聞いておくべきだった。
『やられたね…相当マズい。』
「マズいって何が!
...ちょっと、何この人たち?」
スーツを着た男たちがにんまりと笑いながらこちらをみている。
『分かりやすく言うよ、その車両はね〝痴漢専用車両〟だと思う。』
烏合の衆が翼をはためかせるようだ。
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