第2話 荒療治でも治りません。
現場 井ノ
斧のような切り口で頭蓋骨を割られ殺害、血を流し倒れているところを通行人の女性が発見、通報。
「被害者の名前は佐渡 類助、システムエンジニアをやっていたらしい。鞄にそれらしき名刺があった、問い合わせ話を聞いたところ職場では非常に大人しく仕事にも真面目に取り組み恨みを買うようなタイプには見えなかったと。…て話聞いてるのか!」
「ウソ、セーラー服?
かわいい〜! 中年セーラ〜!」
「写真を撮るな!」
流血したセーラー服の遺体を「映え」に使えると思っている今どきエゴ女子は基本的に人の話を聞かず独断で動く
堅物刑事の話よりポップな事件現場の方が気分が高揚するのだろう。
「おい、相棒はどこいった?
遅れているなら有り得ない事だぞ!」
「うるさいなぁ、そろそろ来るよ。」
声を気にせずアングルを気にして写真を撮り続ける。捜査一課の刑事は彼一人、他は関わりたくないと帰ってしまった。その上で片割れは現場に遅刻をしている。
「おまたせ〜、待った〜?」
だらだらとした口調で歩道橋を渡り、道路を挟んでゆっくり男が近寄る。
「遅いぞ平斗
「ちゃんと名前呼ばないでよ、それよりこれ食べる?
今そこの店で買ってきた、ドーナツ」
意気揚々と蓋を開け中を見せてきた中には確かにドーナツがぎっしりと詰められているが、既存のものより違和感を感じる。
「なんか赤いぞ、上に何かけた?」
「ケチャップだよ」「ケチャップ⁉︎」
栗栖は極度のケチャパーで、掛ける対象には見境が無い。御飯には勿論デザートや飲み物にまで満遍なくかけ倒す
「気持ち悪い!
さっさとしまえ、寒気がする」
「なんだよ文句かよ、まぁいいや。」
リコピンで覆われたドーナツを頬張りつつ被害者の元へ。彼曰く、ケチャップは神の滴なのだそうだ。ドーナツの穴も驚き縮こまるだろうか?
「おわ〜パックリじゃんか。」
「やっと来たの、てかよくそんなもん死体の前で食べられるよね」
「死体とツーショットかましてる奴がよく言うな。」
「なんか言った?」
「い、いや..後は任せてもいいか?」
偏食と変態、普通に考えれば近寄りたくは無い二人に何故平然と寄り添うかそれは過去にとある〝縁〟があるから本人はそれを呪いと呼ぶが、確かに切れない絆のようなものだ。
「ありがとさ〜ん、後やっとくわ。
警視庁捜査一課刑事さん」
「藪雨 吾郎だ、絶対覚えるなよ?」
「じゃあなんで名乗るのさ..。」
類は友を呼ぶ
彼もまた、一人の変人なのだろう。
「さて、嘘も上手く付けたし別の現場に急ごうか」
「別の現場って何さ、他にアテなんかあったっけ?」
「電車の中でちょっとね〜。
ここは‥取り敢えずスキャンしておいて、それなら腐らないし」
「はいよー」
懐から取り出したカメラのような電子機器で遺体を撮影する。焚いたフラッシュが消える頃には遺体も消えていた
「はい完了♪」
「後は〝アイツ〟に任せよう。
元々死因だなんだはわからんし」
捜査一課の知り合いに任された現場を適当に引き受けてはこうして後回しにして放ったらかす。
これを繰り返し行なってきた、しかし嫌われている理由はそこでは無い。
「次電車の中ってったっけ。
罪状は?」
「んー痴漢。」「マジ?」
彼らの捜査する事件は、少し変わっている。誰も調べたがらない。
「警視庁捜査「遠」課
希埜出
「なんで急に名乗ったのよ?」
「二人でキャンディとクリスでーす」
「別々に言ってるじゃん。
二人でじゃないよね、一人ずつだよ」
署内で疎遠の二人だけの部署。
給料の出所が未だにわかっていない。
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