トリッキースレイヤー

アリエッティ

第1話 変わっているだけ

 平日の公園に警官が蔓延る。穏やかでは無い光景に珍しがる通行人もまぁいるが、見ているのは警官ではなく被害者の方。人が殺されたようだ。

「被害者は佐渡 類助さわたりるいすけ41歳、所持していた小さなバッグからは免許証と社員証、ペットボトルの飲み物が入っていました。」

パックリと頭を割られて倒れている、昼休み中に被害に遭ったようだ。律儀にバッグを持参している。


「通報を受けたのは12時過ぎだったが実際に犯行を見た者は?」

若い刑事が質問を追加する。昼間の明るい内から堂々と頭を割る瞬間があるのなら一人くらいは見ている筈だ。

「直接的に見た者は誰も..。

偶然前を通りかかった女性が声を上げながら急いで通報したようです。」


「そうか...」

気付かれない速度で行える程控えめな行為では無い故に疑問が残る。それとは別に被害者には、よりわかりやすく大胆な疑問が生じていた。


「...言いにくいが、被害者の〝ナリ〟に違和感はないんだよな?

元々こういった姿をしているのか。」


「はい、問題はありません。

この男性は普段から常に〝セーラー服を着用〟して生活をしています。」


「異端狩り」

そう呼ばれていた。独特な趣向の人々が殺害や暴行の被害に遭う事件が続出し、今も尚増え続けている。見かけの偏見が、殺意に変わるのだろうか。

「一通り調べて奴らに回せ。

こんな事件は専門家に任せよう」


「直ぐに連絡します。」

メモをスマホに持ち変え画面を弾き耳にあてがう。

「…あぁもしもし?

警視庁捜査一課の鯉堂こいどうだ。異端狩りが出た、今すぐ現場来れるか?」

連続異端殺害事件、担当するのは警察署の中でも疎外気味の隠れ部署。


「あ〜仕事スか?

おい、また出たんだってよ」


「ちょっと最近頻繁じゃない?

短過ぎるよ死ぬスパン、粘れよ少し」

部内の警官は二人

テキトーなのらりくらりフワフワ男。

デリカシー皆無のミニマム女。

署内でも浮いた存在の二人は正に異端といえる事件を追うに相応しい。というよりは押しつけるのに丁度良い。


「行くか〜今月厳しいし。」

「金目当てで死体見に行くの?

嘘だろ悪趣味、刑事て気持ち悪いね」

解決できればそれでいい。

おざなりな感情を持つには案件が大き過ぎる、給料は他の事件と変わらない時間と労力だけが奪われる。


「おまわり出勤しまーす。」

「刑事だけど、アタシら刑事よ?」

捜査開始は長引きそうだ。

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