15話:Secret (秘密)
僕はまさかお腹を鳴らしているのが自分だと思わずに鉄秤と聖に対して恥ずかしくなり、
「幻夢、まぁお前らしいといえばお前らしいな。」
鉄秤が少し困ったような感じでぽつりと呟いていると、詩音が調理室と僕達のいる部屋の間のドアを開けて声をかけてきた。
「みんな食堂で食べないのか? 今日は水羽と一緒にハンバーグを作ったんだが……。」
彼女は少し不安そうな顔をしながら調理室の中を覗き見る。調理室からはかなりいい匂いが漂ってきてお腹が再び鳴りそうだった。
「姉さん行くよ。ちょっと待って。」
聖がニコニコ笑いながら颯爽と調理室へ入った。僕と鉄秤も詩音に促されながらも調理室の中へと入る。
調理室では水羽が黙々と1人でハンバーグを焼いていた。ジューという音と共にハンバーグの焼けるいい匂いが調理室に充満する。
「まだ焼くので先に食べてください。」
水羽が僕と鉄秤の存在に気づいたのか笑顔で僕達に話しかけた。僕は辺りを見回すと聖が食堂への扉を開けて中へと入っているのが見えた。
体がもうハンバーグを欲しているのかクラクラとする感覚が襲いかかる。
そして僕はもう我慢出来ないという気持ちで鉄秤を置いて食堂へのドアを開けた。
「幻夢、先に食べてるぞ。」
食堂に入ると僕の存在に気づいた路月が僕の方を見るとオレの隣に座れと言うように彼の左側の椅子を手で叩いてくる。
おそらくここに座って欲しいという彼の意思なのだろうか。
僕は彼に促されるままに彼の隣に座った。
「鍵さん、雅楽さんの状態は……。」
僕は路月に訊ねた。すると彼は僕の右肩を叩くとニヤリと笑いながら答える。
彼の右目にかかっている黒い髪の毛が肩を叩いた反動で揺れた。
「大丈夫だ。今は寝ている。相当疲れていたみたいだな。」
彼はそう言って箸でハンバーグを1口大に切って食べ始めた。
僕も食べなければと思いながらハンバーグが山のように盛られている皿から2つほどハンバーグを取る。
そして彼と同じように箸で1口大に切って口に入れる。
口に入れるとあまりの肉汁で火傷しそうになった。このハンバーグはどうやって作っているのか詩音に聞きたいほど美味しかった。
僕はペロリと1つ目のハンバーグを食べ終えると2つ目に取りかかる。
「どうやら雅楽さんを除いてみんな集まったみたいだな。聖、キミは少し話したいことがあるんだろ?」
僕が2つ目を食べ終えてハンバーグが盛られている皿から取ろうとした時に詩音がみんなに向けて話す。
ハンバーグに気を取られて気づかなかったのだが僕の左隣には鉄秤が腕を組んで座っていた。
「は、はい。まず俺の名前は
聖は大人数でも動揺したり
「実は俺は水色の髪の毛をしている少女に狙われたんだ。まずは証拠を出してと脅されてそんなの分からないと言ったら首を絞めてきて……。」
聖の顔が突然暗くなると同時に彼は言葉を切った。僕はその事を聞いて強い違和感を覚えた。
七海の髪の毛は確か群青色だったはずだ。水色髪だとすればまた別の人になる。
彼は一体誰に襲われたのだろうか。そして証拠とはなんだろうか。
「そして苦しんでいたら蛇みたいなのが襲いかかってきたんだ。助かったと思ったら何故かその人も俺の証拠を欲しがっていたらしくて、蛇を使って俺を傷つけて……。気づいたら鍵路月さんに助けてもらったんだ。」
あまりにも説明が下手なのかなんなのか分からないが説明がイマイチ頭に入ってこなかった。
ざっくり説明すると謎の少女に証拠を出せと脅されて首を絞められていたら、七海に証拠を吐かせるためなのか知らないが嫉妬の蛇に傷つけられたと言うところだろうか。
改めて考えると証拠というものがなんなのか気になる。もしかしたらその証拠がアークにとって大切なものやアークの勝利を決定づけるものかもしれない。
「全く……聖は国語は苦手だもんな。という訳だ。わかったか? 」
いやいや、分かるわけないだろと僕は心の奥底でツッコんでしまう。
そんな僕に対して突然友絵が立ち上がると聖に向かって口を開いた。
もしかしたら彼に質問があるのだろうか。
「証拠ってなにかな? そして……良ければ友絵達に見せてくれない? 」
「う、うん、わかったよ。実は夢の中で天使と出会って貰ったものだけど……。」
そう言いながら聖は手のひらほどの大きさである5角形の赤い宝石を見せる。そしてその宝石を見た途端に突然宝石から声が聞こえた。
「我……カマエル……アークゼノ………理想………。」
あまりにも途切れ途切れで聞こえずらいがどうやら聖はカマエルで夢の中で出会ったようだ。
カマエル――
確か7大天使の1人ではないが栄光の天使の1人として活躍しているのは知っている。
破壊の天使の1人でもあり、主に汚れ役を買って出たという影の英雄みたいな存在であるというのを講義で習った。
その後に言っていることの方が大事そうだがよりによってほぼ情報がなく、繋ぎ合わせても全く分からない。
「何を言っているかイマイチ分からないな。幻夢ならこのことに詳しいはずだが……。何かわかるか? 」
「は、はい。彼は――」
僕は鉄秤に言われるがままに答えようとした時、突然勢いよく扉が開かれると血だらけの状態で従美が部屋にはいってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます