2話:Encounter (遭遇)

 僕は“ラミエル”の光を頼りに家を飛び出してアスファルトで舗装ほそうされていた道を歩いていた。


 マノ東京とうきょう――

僕の住んでいる地区で流行の最先端を行く都市だ。しばらく歩いているときらびやかな服を来ている女性達が僕の横を通っていいく。

 女性達はまだこの世界が近々“イレギュラー”の影響を受けることなんて知らないだろう。

僕はラミエルが与えてくれた情報を真に受けるわけではないが、全く信用しないのもまずいと考える。

 頭の中でゆっくりとラミエルと話していたことが音声となって蘇っていく。


“マノ世界”と“ゼノ世界”が融合される――

 僕はその言葉が1番引っかかっていた。

“ゼノ世界”とはなんだろうか。僕達と同じような世界なのかそれとも――


「あっ、そこのキミ!止まりなさい! 」


 僕はその声でハッとすると同時に歩みを止めて声のする方向を向く。

止めたのはレッドブラウンのウルフカットが目立つ女性の警官だった。

 彼女を見た時、“ラミエル”がずっしりと重く感じて僕の頭にふと身分確認と銃刀法違反の文字がちらつく。


「僕ですか?どうして――」


 僕は何かを言おうとしたが彼女によって遮られてしまった。

額から冷や汗が流れて今でも逃げ出したくなりそうな気持ちを堪える。


「キミのその武器……“アーク”の1人なのか? 」


 女性は子供のような純粋な目で武器を見つめながら困惑している僕に対して訊ねる。

それを見た彼女は申し訳なさそうにぽつりと言った。


「おっと……少し困らせた。あたしの名前は朝火詩音あさひ しおん。このとおり警察官をしている。キミは? 」


「僕は雷電幻夢。大学生です。」


 僕は軽く答えると彼女の方をちらりと見る。

雰囲気だけでなく口調までもが男らしく、彼女の性別が男性なのか女性なのか困惑しそうだった。


「そんなにかしこまらなくていい。

 雷電幻夢……か。たしかキミの父親は雷霆らいてい学園の教師で柔道部の顧問だったよな? 学生だった頃にはキミの父親に世話になった。」


 雷霆らいてい学園はマノ東京にある有名高校で僕も卒業生の1人だ。

父親は厳格で常に厳つい顔をしている人だが、そんな父親に慕われていたという雰囲気を彼女の言動を見て感じる。

 嘘ではないと僕は頷くと彼女は照れくさそうに手を差し伸べた。


「しかし仲間がこんな近くにいるとは思っていなかった。幻夢、これからよろしく。」


 彼女もアークの1人だったのだとその言葉で察する。

そう言われて気づいたのだが、彼女の背中には彼女の背丈と変わらないほどの大剣を身につけていた。


「は、はい、よろしくお願いします! 」


 僕は慌てて彼女の手を握って握手する。

彼女の手は女性とは思えないほどがっちりとしていた。


「だからかしこまらなくていい。ウリエルに選ばれたあたしを頼ってくれ。」


 彼女はニコリと笑うと自分の胸に拳を当てる。街中で警官がそのようなポーズをとるのは恥ずかしくないのかと思いながら僕はそれを言えずにいた。


 ウリエル――

7大天使だけでなく4大天使の1人とされている。最初に人間になった天使もウリエルというのははっきりと覚えている。


「キミは7大天使の誰かから情報は聞いてないか?仲間ならば情報を共有しておいた方がいいと思うが……どうだ? 」


 確かに彼女の言う通りだが、他にも仲間がいた時に話した方がいいのではないかという疑問が浮かぶ。

正直に意見を言った方がいいのかそれとも少しオブラートに包んだ方がいいのか正直悩んでいた。


 その刹那せつな、僕達の目の前に1台の黄色い高級車が止まると運転席のドアが開いた。

そして長い金髪のスレンダーな男がゆっくりと車を降りて僕達の前に立つ。


 なぜこのような人が僕達の目の前にと彼の姿を見てその感想を抱いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る