第29話 交流会ってなんですか?

 僕はゆっくりと、桜雅くん、それにもち丸くんを連れながらある場所へと歩いている。校内のはずなんだけど、いつまでたってもつく気配がない。


 本当にこの学校どうなっているのだろう......。入る学校を間違えたかなとも考え出した時、前方で人影を見つけた。


 僕の待ち人であり、今日朝に突然Limeを送ってきた張本人だ。その人物は、一瞬もち丸くんを見て動揺したが、直ぐにいつものように青筋をうかべ僕に突っかかってきた。


「おっそいわよ!昼食の時間なくなるじゃない!?」

「い、いやこの学校、いやもう学校かどうか疑わしいこの敷地。でかくて......」


 昨日の杠先輩は実は妖怪だったのかな?全然優しくないんだけど......?そんな杠先輩の隣で、遠慮がちに手を振る人を見つけた。


 低身長で、スタイルが良くて、黒髪に似合う綺麗な顔立ちの先輩。僕が色々なことを知っていくきっかけになった大切な先輩。


「お、お久しぶりです。美空先輩......」

「お、お久しぶりです。日向くん......えへへ」


 ふにゃっとした笑顔をうかべる美空先輩。なんだろう、久々に会えたからか、とても可愛く見えるのは気の所為だろうか?それとも......。


「んで、なんで俺はともかく、もち丸も呼んだんだよ日向?」

「え、僕も知らないんだけど、とりあえず杠先輩が仲良い友達呼べって......」


 そう言われもち丸くんは顔をパァと明るくする。言ってはいけないと僕も思っているし、おそらくこの場にいる全員も思ってるんだけどね?


 あえて言うね。もち丸くん可愛い。


「か、可愛いわね。」

「ええ、すごく!なんだかマスコットみたいです〜。あ、別に貶してるわけじゃ!」

「もち丸〜お前照れてんなぁ〜?」


 わっしゃわっしゃと桜雅くんにお腹を撫でられるもち丸くん。とてもふくよかな体だけど、清潔感があるもち丸くんはクラスの中でも、可愛い男子ランキング一位となっている。らしいことを興奮する橘さんに力説された。


「それで、どったんですか?先輩達〜」

「「きゅん!」」

「へ、変な効果音なりましたけど?」


 そう言われ杠先輩はコホンと咳払いすると、事の経緯を話し始めた。


 どうやら今度、別の高校との交流会があるらしい。交流会とは名ばかりの自慢大会だと先輩はもんの凄く嫌な顔をしていたけれど。


 近辺高校の生徒会と、ほか数名を連れた合同パーティーが行われるがその時こちら側もそれ相応の人間を選ばないと行けない。それに僕達と美空先輩、ほか数名が選ばれるそうだ。


「交流会とは名ばかりのマウント合戦よ」

「で、出るの嫌です〜」

「だめよ、でないと部室使わせて貰えないわよ」

「ええ〜」


 これが生徒会の仕事を手伝うってことか。それは分かるんだけど、どうして桜雅くんやもち丸くんを?僕は思ったことを口にした。


「僕はまぁ部室使ってますけど、どうして桜雅くんやもち丸くんもでる前提なんですか?」

「こっちとしても面倒事に巻き込んで申し訳ないと思ってるわ。でも信頼と信用がおける人物の選出がなにより大事なのよ」


 少なからず信頼されているとみていいのだろうか?はたまた部室を使っているのだから、手伝うのは当たり前というカテゴリーなのか?


「花影の友達なら、あたしは安心してるわよ。まぁそこの金髪ヤンキーは、どうでもいいけど」

「おいこらてめぇ」


 だから友達も呼べっていったのか。なんだろう、すごくくすぐったい。


「まぁそこの金髪ヤンキーは、雑用でもやらせて」

「杠、てめぇ」

「花影とえ〜ともち丸くん?だったかしら」

「もち丸です〜」

「は、信用してるわよ。まさか花影にこんな秘密兵器があったとは。私達の噂も知らない様子だし、あとはこっちで練習ね」


 ん、?練習とな?


「当たり前でしょ。マウントの上を獲るようにマウント重ねていくのよ?格ゲーやったから分かるでしょ?」


 いや僕それ全敗だったんですけど?


「とりあえず、今日の放課後から色々と特訓よ。第4体育倉庫での使用許可は取り付けてあるから。なぁに、ちょっとダンスの練習と社交的な会話、それにグラスの持ち方、食べ方の指南、挨拶ぐらいしかないから」


 ははは。うん、僕も少なからずゲームやアニメを嗜んできたから今こそ言おうかな。


「それなんて言う無理ゲーですか?」

「あ、日向くん、それ私も思ってました!」


 どうやら使い所は間違ってなかったみたい。子どものように喜ぶ僕と、嬉しそうに顔を染める美空先輩。


 疲れたように眉間にシワを寄せる杠先輩と、大きく笑う桜雅くん。にこやかに笑うもち丸の姿がそこにはあった。


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