第25話 勉強会ってなんですか? 4
「ふぅ......」
足を伸ばしながら、湯船に浸かる。こんな経験ほとんどない。そりゃ桜雅くんの家に泊まりに行ったり、もち丸くんの別荘に泊まり込みで遊んだ経験はあるけど、女の子の家のお風呂にお邪魔するなんて経験今まで無かった。
僕の知らない洗顔と書かれたものとか、それ以外にも棚いっぱいに置かれた色々なボトルが目につく。
女の子って大変なんだなぁ。僕の知らないところで、牡丹さんと梨花さんも色々と苦労しているんだろうか?
なんたってお婆ちゃんと春香姉さんは良い意味でも悪い意味でもズボラだからなぁ。
ゆっくりと、お湯に体を温めながら最近こんなに幸せでいいのかと思う。可愛い先輩に出会ってここまでのことをしてくれて、僕の知らない世界を教えてくれて。
「日向くん〜」
「ひゃ、ひゃい!?」
突然話しかけられてびっくりした。裏声気味の返答がとても恥ずかしい。
「着替えここに置いておきましたから〜」
「は、はーい」
ん?着替え?何かの言い間違いか、それともタオルとかのことかな?
僕はその後、もう少しだけ体を温めてから周囲を確認して浴室から出た。そして備え付けられたような洗濯機と、綺麗に畳まれた衣服がタオルの上に置いてある。
えーと、うん?僕の衣服、ここに置いておいた筈なんだけど?一応隠すように置いておいたパンツは無事...っと。
何やら嫌な予感がして僕は洗濯機に回る衣服を見てみると、そこには確かに僕が着ていたシャツがぐるぐると気持ちよさそうに.....回って......いたぁぁぁぁ!?
「なんで!?」
思わず声に出る。と、とりあえず用意されたものを着て......っと。少し大きい先輩の着ていた灰色のスエットのようなパジャマ一式。
大きくでかでかと『お父さん用』と書かれたそれを僕は着ると、髪の毛を乾かさずに2階の先輩の部屋に走った。
「せ、先輩!」
「は、はい?どうかしましたか?」
「ぼ、僕の服が洗われているんですけど!?」
ドアを開けながら、先輩は僕を部屋に入れると事の次第を話し出した。
なんでも入っている間に桃さんが、勝手に洗濯機に入れてしまったらしい。
本人は軽く洗って乾燥するらしいが、先輩が本洗いにしてしまったらしく、全て終わるまで一時間ほどかかるとの事だった。
先輩はともかく、桃さんは完全に善意でやってくれたそうなので僕も怒るようなマネはしないけど......。
時刻は夜の八時過ぎ。良かった早めに夕食食べておいて。
「ま、まぁ事情は分かりました。服が乾くまで、その......お邪魔しますね......?」
パァと顔が明るくなる先輩。その後すぐにお風呂入ってきますね?と言い残し部屋に僕だけを残して行ってしまった。
信用されているのか、完全に男として見られていないのか分からないけど、先輩不用心です......。
とりあえず深呼吸を何度かしてから、とりあえず英語の勉強の続きでもしようと思った。ノートと教科書、それに単語帳もだして僕はノートへとペンを走らせる。
...............。時計の針の音が耳に響く。..................。
うん、集中できないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
だってこうなるなんて思わないじゃんか普通!?先輩の家に来るのだって、しんどいのにせせせせ先輩と同じシャンプーとか使って!?先輩の部屋で勉強とか!?
早く服が乾かないかな。いや、乾かない方が嬉しいのかな?
そんなことを悶々と考え続けていたら、先輩がお風呂から上がった。
少し湿った様な髪の毛と、お湯であったまったような顔。同じようなパジャマを着ているってだけでどうしてこう胸が騒がしくなるのか。
どんな顔をしていいのかわからず思わず僕は顔を背けてしまった。こんな時桜雅くんとかなら上手くやるのだろうか、それともアニメの主人公なら気の利いた台詞でも言えるのだろうか。
こんな正直な僕が少しだけ、醜いと初めて感じた。
でも、先輩は僕の隣に座ってモニターを付けると笑ってくれる。
「えへへ、なんか照れちゃいますね?」
「え、はい。そう...ですね......」
「服が乾くまでもう少しだけ時間があるので、さっきのアニメの映画見ませんか?映画版もクオリティが高いんですよ〜」
僕の返答も聞かずに、ウキウキとした調子でアニメの映画の準備を始める先輩。そんな先輩に救われた気がした。
映画の為だと言って、部屋の電気を少し暗くする。
画面に映る先程見たアニメの映画。ようやく再会できた二人、だけどヒロインの女の子は記憶を失っていて......。
次第に重くなる話。ついでに言うと僕の瞼も重くなる。朝からずっと勉強したり、なれないアニメを一気見したり......。家でのこととか、急にお風呂に入るとか......また怒涛の一日だった気が......するなぁ......。
「先輩......」
先輩の前で、寝てしまいそうになるがこういう時でも体は非常に正直だ。
「はい?」
「かわいたら......起こして......ください......」
微睡むようなそんな状態。ごめんなさい、少しだけ......。
「日向くん?」
先輩。まだ寝てない...ですよ......。
「お疲れ様です。」
左の手が握られたような、そんな感覚。柔らかい何かが僕を優しく包む。
「えへへへ......日向くん......」
微睡むような、夢心地の状態で先輩の囁く声が近くに感じる。ああ、だめだ。意識が遠のいていく。
「おやすみなさい。日向くん」
おやすみなさい、先輩。
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