第26話 勉強会ってなんですか? 5
「ふわぁ......」
よく寝たと僕は大きく伸びをする。ん〜まだ頭が回らないや。
もう一回寝ようかな。そう思って掛かっている毛布を......って?
次第に目に活力が入り始める。そして徐々に今僕の置かれている状況を脳が理解し始める。
壁に掛かっている時計から今の時刻は8時過ぎ。窓から差し込むような太陽の光。そして部屋は昨日のまま。うん、昨日のままということは......。
僕は先輩の部屋で一夜を!?!?!?!?!?
あああああああああああぁぁぁやっちゃったああああああああああああああああ!?
いくら疲れていたとはいえ、早寝だといえ、まさか先輩の部屋で熟睡してしまうとは!?
両手で顔を隠したい衝動に駆られるけど、僕の左腕に重さを感じて、恐る恐る確認する。
「すぅ......すぅ......」
「せ、先輩?」
そこには僕にもたれ掛かるように、幸せそうに眠る美空先輩。なんて......か、可愛いんだ!?起きた直後には心臓に悪すぎる!
そしてがっちりと僕の指に絡められている美空先輩の右手。な、なんで繋ぎながら眠っているんですか!?
毛布...は多分美空先輩がかけてくれたんだろうけども。その優しさが今やっと込み上げてくる。
で、でも、さすがにこの状況を桃さんに見られたりしたら、何をされるか分からない......!?
「......」
「も、桃さん。落ち着いて、これには訳が―」
「ご馳走様」
「ち、違いますーーーーーーー!!!!!!」
「ふわぁ?......あ...おはようございます......日向くん......?どうして......えへへ、でもぉ...幸せです......。えへへ......。」
ふにゃっとした笑顔を浮かべながら、先輩はゆっくりと抱きしめてきてくれる。ダボッとしたパジャマからも感じられる先輩の柔らかい体。
ん、もう僕は死ぬんじゃないか?3落ち状態以上なんだけど?もうクエスト失敗どころの騒ぎではないんだけれども?
というか死んでるんじゃない?
しばしの間抱きしめられたあと、プルプルと突然震え出した美空先輩。
「美空......先輩?」
「ゆ、夢じゃ......ないん......ですか?」
「先輩......すみませんこんな時どんな顔をすればいいのか分かりません......」
わなわなとふるえ、耳が真っ赤に、本当に熟れたトマトのように染まる先輩。わーせんぱいーすごいあかーい。
まて、幼児化するのは人として超えてはいけないラインを超えている気がする。
「なんでそのネタ知ってるんですか!?天然ですか、天然でその言葉出るなら奇跡ですよ!?うわあああああああすみませんんんんんん!!!!!!
夢の中だと思ってましたああああああああぁぁぁあああ!!!
夢なのに夢じゃなかったああああ!というか夢じゃないのにゆめじゃないですすすすすすす!?!?!?!?!?
うわあああああああとりあえずすみませんでしたああああああああぁぁぁ!!!」
「僕も疲れてたとはいえ寝てしまいすみませんでしたああああああああぁぁぁ!!!
部室の時も、泊まりに来てくれた時も寝てしまいすみませんすみませんすみませんでしたああああああああぁぁぁ!!!」
その後、なかなか降りてこない僕達を見かねた桃さんが仲裁に入るまで、お互いの土下座合戦は終わらなかった。
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「そ、そ、そそそれじゃあお世話になりましししししした」
「ここここここちらこそそそそそ、ご飯ありががががががががが」
「お互い緊張しすぎ」
「でも!」
「だって!?」
面倒くさそうにため息を吐いた桃さん。
「これでお相子」
「「!?」」
無理やり握手されるような形。先輩の柔らかい手の感覚に、今朝のことを思い出してしまう。
その後本当に最後の挨拶を終えて僕は人の少ない電車の椅子で、ぼけーと外を眺めていた。
勉強しに行ったのにあんな事になるなんて。このまま僕は無事に試験を終えるのだろうか。
というか、先輩にダボッとした服装はまずい。本当に僕の心を粉砕、いや部位破壊してくる破壊力。
熱に侵されたように、ゆっくりと眺める電車の外。
先輩と色んなところに行けたらな、なんて事を考えていたらいつの間にか最寄り駅についていた。
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「あとがき」
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