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 連絡が入った。


「はい」


『どうだった』


 上司。


「いい街です。空気もいい。警察も、地方とは思えないぐらい機能しています。過剰に点数をあげたりもしていない」


『そうか』


「自分のわきまえているつもりです。遅れてもうしわけありません。すぐに次の地域に」


『わたしは、君の上司だ』


 言葉を待った。やはり、見られている。


『そして君は、どこを探しても見つからないような、有能な部下だ』


「わかっています」


 内偵調査をする人間に求められるのは、弱点がないこと。つまり、大事な人間を、持っているかどうか。


『君にいなくなられるのは、困る』


 仕事を、辞めたかった。


 彼女の隣にいられるなら、仕事なんていらない。


 同じ気持ちの人間がいる。守ろうとして、傷つけることができる人間が。だから、一緒にいたい。


 違う。


 好きだから。初めて、人を好きになったから。一緒にいたい。

 そしてそれは、許されない。


「辞めません。すぐに次の地域に、向かいます」


 逆らえない。


 自分には。


 何かを守ろうとする、自分には。

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