06.

 ゆっくり、くちびるをつけて、そして、離れる。


 彼。


 もぐもぐするしぐさ。


 そして、飲み込む。


「ありがとうございます」


 彼。朱い顔。


「できれば、その、噛んでないほうが、いいかな?」


 彼の言葉。


 意味がわからなくて、少し止まって。理解して、紅くなってしまった。


 手も離してしまう。


 そして、すぐ繋ぎなおす。繋いでいなければ。意味が、なくなるから。


 彼のほうを見ずに、持っているハンバーガーを彼のいる方向に差し出した。


 彼が、もぐもぐする音。


 そうっと、彼のほうを見る。


「おいしい?」


「おいしいです」


 もぐもぐする彼。


 この瞬間だけが。


 続けばいいのに。


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