第4話 綻
煙草を吸った日の翌日、カメラを持って一人海に向かっていた
晴れた空を眺めて電車に乗っていると心地よくて心が安らいだ
電車に乗るのも遠くへ行くのも久しかった、海に行くなど私にすれば一大行事で
何故ここまで気分に従順に動けたのか自分でもわからなかった
でもカメラは好きで何か撮りたかったからうきうきした
海は日光に照らされて煌めいて本当の汚さは近づいてみないと分からなかった
海は汚い、人間が汚しているのにその人間は何の悪意もなくそのことを口にする
今日も多くの人が海ではしゃいでいるが、そのことに気づいている人はどれほどだろうか
そんなことをぼそぼそ思いながらも写真を撮ったり、海鮮を食べたり
普段とは違う一日を楽しんでいた、思えば一人でいる時間が多いのは友達がいないことよりも一人が好きなことにあった
そうこうしているうちに日が暮れて、写真もたくさん撮れた
人気が徐々に少なくなって、反対に火を囲う人たちが出てきた
海にはいろんな景色があるな、そう思ってシャッターを再び切った
火を囲う水着姿の若者はとても楽しそうだった
笑顔で楽しそうに談笑している姿はまさに陽キャだった
しかし自分と対極にいる彼らを見ていてもうらやましくは思わなかった
いつもはあの笑顔を見ては頭の中で悪口を言っていたが今日は違った
今日は自分なりに彼らの笑顔に匹敵するくらいの一日を楽しめた
少し自分が誇らしかった
それから電車に乗って帰り、夕飯を食べた
今日は母の仕事が休みだったので久しぶりに手料理を食べた
充実した一日に更に良いことがあって、深い高揚感の中で暖かい眠りについた。
眩暈 Y. @kasainobvel
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