第三十五話 愛と憎悪と一つの決意-7

「【ツイストゴルゴーン×ミネラリゼーションポイズン】!」

「【オールバックスパーク×オメガブースト】!」


 ブレイドが三つ編みから毒液を発射して、オルバークが電撃波を放出する。

 しかし、毒液は炎に防がれて蒸発してしまい、電撃も熱に打ち消されてしまう。

 そのままフモウの髪がブレイドを返り討ちにしようとする。


「【アフロキャビネット×ショックアブソーベント】!」


 アフロスが肥大化させたアフロを盾にして炎を吸収する。


「【キューティクルメイル×オーバーワーク】!」


 怯んだフモウの身体に巨大化したローゲンがラッシュを叩き込む。


「【スパイラルホーン×アースブレイク】!」


 ラセンがドリルと化した縦ロールで地面に亀裂を生み出し、フモウの脚は地割れに捉えられる。


「行くぞハサミ!」

「姉弟必殺!」

「「【ダブルメッシュ×クロスパニッシュ】!」」


 ハサミと旋風の交差したアホ毛がフモウの胸を切り裂いた。


「オオオォォォッ!」


 ようやくフモウの身体にダメージを与えることが成功したと確信したハサミたちだが、傷は浅く、フモウを倒すほどではなかった。


「エクステンド……コロス……コロス……ウオオオオオッ!」


 怒りに震えるフモウの炎がより一層激しく燃え盛る。


「フモウ……なんでお前はそこまでエクステンドを憎んでいるんだ」

「幼い頃、彼はエクステンドに家族を殺されているんだ」

「知っているのか!? 姉さん!」

「彼が十二歳の時、エクステンドの強盗が彼の家を襲い、偶然外出していた彼だけが生き残ったそうだ。彼はそのことからエクステンドを強く憎むようになり、自らの髪を剃り上げた」

「その犯人はもう捕まっているのか?」


 ハサミの問いに対し、旋風は首を横に振る。


「フモウにとって、私たちは存在そのものが憎悪の対象なのだろう。つまり、今の彼は思考を支配されているのではなく、己の感情を解き放った状態ということだ」

「ヘッド・ギアの影響を受けていないということか!?」

「フモウの頭に植え付けられたDURAは特別製だ。あそこまで強力なEXスタイルを扱うとなればヘッド・ギアでは洗脳出来ない。彼は本心から私たちと戦っている。この警察署を襲った理由もエクステンドが多く集まっている気配に惹き寄せられたからかもしれない」

「だとしたら、俺たちが力尽くでフモウを倒しても……」

「彼の心は憎しみを抱えたままだ。君はどうする?」


 旋風に尋ねられ、ハサミは髪切の柄を右手で握る。


「俺はフモウを救いたい! 言の刃を交え、お望み通りに散髪してやる!」


 ハサミは意を決して髪切を抜く。


「ぶはっ!」


 直後にハサミの身体を強烈な負荷が襲い、ハサミは吐血して気を失いそうになる。


「これが次元の歪み……結構辛いな。全身が内側から色々な方向に引っ張ったり押し込まれたりされているような感覚だ。あまり長く戦うことは出来ないかもしれない……だけど、ここで挫ける訳にはいかない!」


 フモウの髪とハサミの髪切が激突する。

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