第三十四話 愛と憎悪と一つの決意-6

 大男は腰布だけを身に纏った野獣のような出で立ちで、頭からは橙色の炎が噴き出していた。


「…………フモウ?」


 ハサミは大男と目を合わせて驚愕する。

 大男の正体は変わり果てた姿のフモウだった。


「あれがフモウだと!? 髪が生えているぞ!」

「エクステンド、コロス! エクステンド、コロスッ!」


 フモウは片言で同じ言葉を繰り返し、頭の炎が火力を増す。


「どう見てもまともじゃない! 何があぅたんだフモウ!」

「きっとDURAで操られているのだろう! あの炎はEXスタイルだ!」

「クタバレッ! エクステンドオオオッ!」


 フモウが髪を振り乱し、周囲を火の海に変える。

 振り下ろされたフモウの拳をメッシュブレードで受け止めるハサミだが、威力を殺しきれずに吹き飛ばされてしまう。


「はあああああああっ!」


 ハサミに気を取られていたフモウの背後に旋風が回り込む。


「唸れ! 【メッシュエッジ】!」

藍色のアホ毛をハサミと同じように一振りの刀へと変化させて、フモウに斬りかかる。

しかし、メッシュエッジの刃はフモウの肌に傷一つつけられなかった。


「シネェ! エクステンドッ!」

 フモウはハサミと旋風の二人がかりでフモウと戦うが、二人の攻撃がフモウに効いている様子はまるでなかった。

 フモウの頭突きによってパトカーが凹む。


「流石は『鉄頭のフモウ』と呼ばれた男。暴走してもこれほどの戦闘センスを発揮するのか」

「フモウ! 目を覚ませ!」


 ハサミの呼びかけも空しく、フモウは二人を薙ぎ倒して避難民に向かって炎の髪を振ろうとする。

 炎を向けられた人々はフモウの前から逃げ出すが、一人の幼い少年が腰を抜かして逃げ遅れていた。


「くっ、危ない!」


 ハサミは咄嗟に少年を庇い、背中を灼熱の炎に焼かれる。


「うあああああああああっ!」

「お兄ちゃん!?」


 呻き声を上げて立ち上がるハサミを少年は半べその目で見上げる。


「……あのテロリスト、子供を庇ったのか?」


 人々はハサミの行動に戸惑い、傷だらけになりながらもフモウに立ち向かおうとしているハサミの姿に心を揺さぶられる。


「カミキリ様! アフロスたちを解放いたしましたわ!」


 そこへ留置場から解放されたアフロス、ローゲン、ブレイドが合流する。


「うおっ! 右左原ハサミ! それにカミキリの旦……姐御! ラセンたちが言っていた話は本当だったんだNA!」

「知りませんでした。まさか、カミキリ様が女性だったとは……それはそれとして、私たちを助け出していただいたこと、感謝しますよ、右左原ハサミ」

「アタシはカミキリ様のこと、なんとなくわかっていたけどね。とにかく、今は目の前にいるデカブツを倒すことに集中しましょう!」


 ハサミ、旋風、幹部五人が並び立ち、EXスタイルを一斉に発動する。

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