第二十七話 裏切りは蜜の味がする-9

「しまった! 待ち伏せか!」

「ラセン・スパイラル! オルバーク・ブラインド! そして、右左原ハサミ! 諸君らを国家反逆罪で逮捕する!」

「俺も捕まえる気なのか!?」

「当然だ! 右左原ハサミ容疑者、あなたにはCOMBのスパイとしてWIGから幾つもの機密情報を盗み出した疑いがある!」

「本気で言っているのか!? どうして警察がWIGの機密を知っていながら手を貸しているんだ!」

「我々スカルプリズン警察はWIGの命令に絶対順守の誓いを立てている! この街ではWIGこそが正義なのだ!」

「右左原、警察には何を言っても無駄だ。こいつらは人身売買さえも平気で見逃すほどに腐りきっている」

「ワタクシとオールも昔はWIGに売られた子供だったのですわ。つまり、その頃からこの街はWIGに秩序を蝕まれていたのですのよ」

「そんな……」


 ハサミは狼狽えるが、メッシュブレードを展開してどうにかこの場を切り抜けようと心を切り替えた。


「投降しろ右左原容疑者! 断髪式もWIGの私設組織、あなたに帰る場所はない!」

「確かに帰る場所はない。しかし、俺は立ち止まらないと決めたんだ! 押し通らせてもらうぞ!」


 だが、ハサミと警官たちの間を一筋の斬撃が駆けて、両者の衝突を妨げる。


「ぐああああああああっ!」


 斬撃によって発生した衝撃波で武装警官たちが塵芥のように吹き飛んでいく。


「新手か!?」


 武装警官たちが吹き飛んだ跡に道が開かれ、そこを一人の人物が歩いてくる。


「――ようやくこの時が来たか」


 歩いてきた人物の姿が次第に明らかになっていく。


「カミキリ様!」


 ラセンがその人物の名を叫び、ハサミの心臓が高鳴る。


「約束を果たそう。右左原ハサミ、君は五人の幹部を退けた。アフロスを撃破し、ラセンの命を救い、ローゲンを言い包め、ブレイドと肩を並べ、オルバークとの戦いで力を取り戻した君には私と再び刃を交える資格がある」


 カミキリからは本気であることを示す禍々しい殺気が湧き出していた。


          × × ×


 その頃、フモウは両手を手錠で拘束されてラプンツェルタワーに連行されていた。


「どうだい? 犯罪者になった気分は」


 桂がフモウの前を歩きながらフモウに尋ねる。


「反吐が出るような気分ですよ。桂副長官、どうしてこのようなことをするのですか?」

「君はハサミと同様に我々の真実を知ってしまったから僕たちにとって都合が悪いのさ。まあ、ハサミはいずれ真実に辿り着くだろうとは思っていたけど、君については想定外だった。WIGの待機命令に従わず勝手に行動してもらっては困るよ」

「ハサミの真似をしてみたくなったんですよ。私はこれまで社会の規律を守る品行方正な人間であろうとしてきましたが、命令無視の独断行動というものは意外にも楽しかったですよ」

「ふむ。真面目一辺倒だった君がやっと悪事を覚えてくれたのは嬉しいことだよ。けれど、君が自由に生きられるのも今日が最後だと思った方が良い」


 桂はフモウをラプンツェルタワー最下層の一室へ連れてきた。

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