第二十六話 裏切りは蜜の味がする-8

「うおおおおおおおっ!」


 ハサミは雄叫びを上げて雷に打たれた身体を起こす。


「起き上がった!? 雷と同レベルの電撃を喰らったんだぞ!?」


 驚愕するオルバークに向かってハサミは突撃する。


「何をする気ですのハサミ!」


 オルバークがハサミに再度電撃を放つが、今度はハサミに目視で避けられ、ハサミのアホ毛が鋭い刃に変化する。


「礼を言うぞオルバーク! お前の電撃で目が覚めた!」

「メッシュブレード!? カミキリ様との戦闘で失われたはずのEXスタイルが何故蘇っている!」


 オルバークが放つ電撃をハサミはメッシュブレードで薙ぎ払い相殺する。


「俺は自分を取り戻したんだ! 蘇ったメッシュブレードはその証! もう二度と気持ちを暴走させはしない!」


 発電所の壁や天井を飛び跳ねながら、ハサミとオルバークは対等な攻防を繰り広げる。


「速い! 俺の雷を上回る反応速度だ! まだこれほどの力を隠し持っていたのか右左原ハサミ!」

「いいや! 隠していたんじゃない! 俺は限界を超えて強くなっただけだ!」

「くっ! 訳のわからない理屈だが、お前の強さは認めようじゃねえか!」

「認められるだけじゃ足りねえ! 俺の方がお前より強いと今ここで証明してやる!」

「だったら、俺も全力だ! 俺の憎しみとお前の無茶、どちらが勝るか比べようぜ!」


 オルバークの髪に膨大なエネルギーが収束していく。


「喰らうが良い! 【オールバックスパーク×オメガブースト】!」

「正面から切り伏せる! 一点突破! 【メッシュブレード×トライスターカット】!」


 繰り出された電撃砲の直撃を耐え抜いたハサミのメッシュブレードとセニングダガーによる三つの斬撃がオルバークを斬る。


「断髪断罪――迷いは斬られた」


 ハサミに決め台詞と共にオルバークは地面に膝をついた。


「オール! 生きていますの!?」


 ラセンは倒れそうになるオルバークに駆け寄り、彼の身体を支える。


「心配するな。胸を少し斬られただけだ。……けど、立てるような力は残っていないな」


 オルバークはラセンの肩に身体を預ける。


「大変です、オルバーク様! 警察がこの発電所に近づいています!」


 見張りをしていたCOMBの下っ端が鬼気迫る様子で駆け込んできた。


「ちっ、もう来たか。せめてこの発電所を修繕不可能なほどに破壊しておきたかったが……お前たちは今すぐここから離れろ!」


 声を振り絞って部下たちに呼びかけたオルバークの逆立っていた髪は次第に下りていき、彼の両目は再び前髪に隠された。


「…………俺はもう限界だ。ここに捨てて行ってくれ」

「突然ヘタレに戻るんじゃないですわ! あなたも連れて行きますわよ!」


 ラセンがオルバークを背負って立ち上がる。


「オルバーク、発電所の脱出路はどっちだ!?」

「……わかった。案内するよ、お人好しめ」


 ハサミが先行して、オルバークを背負ったラセンがあとに続く。


「もうすぐ、出口だ」


 三人は発電所の外に出る。


「出てきたかテロリスト! 諸君らは包囲されている!」


 しかし、発電所の出口には大勢の警官が待ち構えていた。

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