第33話 保健室の瑠美先生

ボチボチと再開します。

皆様申し訳ありませんでした



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「や、やっちまった!!」


目が覚めると同時に体を起こそうとした俺の視界に掛け時計が見えた。時間は6時前。


なんてこった。一度家に帰るような時間は無いぞ。

とりあえず服を着なくては!と、俺は再び体を起こそうとするも起こせない。


「…ん、ん〜……もうダメ……。」


「………」


分かってはいた。分かってはいたんだが…

玲子さんが隣で寝ている。俺の腕枕でスヤスヤと!



俺は帰るつもりだったのだが、どうやら疲れて(?)そのまま寝てしまったみたいだ。

そうなると、こっから学校にはタクシーで出勤する事になる。

これは学校に携わる者のやる事ではない。とまでは言わないが、今日は出勤初日だぞ…


んー……


バレたら記者会見間違いなし!!


………

……

「保健室でおとなしく引きこもっとくか」


俺はこっそりと出勤して保健室に引き籠る事にした



〜〜〜


あの後更に一悶着あり、玲子さんとホテルで別れた俺はタクシーを呼んで出勤中。我ながらクズだと思う。

ルームミラーに映る運ちゃんのニヤニヤ顔が腹立たしいが、俺の気のせいかもしれん。


しばらく無言の空間を体験していると、学校の正門が見えた。登校中の生徒がわんさかいるな。


当然だ


しかし、今の穢れた心(被害妄想)で彼らに接するのは躊躇いがある。降りるべきはこの場じゃない


「すみません。裏門…ここからぐるっと反対側の場所でお願いします」


タクシーを裏門に着けてもらった俺は代金を払って降りた。



「さーて、と。今日は保健室から出んぞ」




俺は校舎に歩み寄る。目の前の建屋に入ってしまえばすぐ目的地。何故かと言えば保健室は裏門の方が近いのだ。

この時間、裏門は人の気配がないみたいで、実際に誰とも出会わない。もう少し早ければ誰かしらいるかもしれないが。


「よっしゃ当たりだ! 裏門からの出勤は案外いーー


"ガシャン"


真後ろで音がして振り返る


「………」


植木鉢が降って来た?


コンクリートの地面で粉々になった鉢。俺はすぐさま棟を見上げた。


屋上に人影がある

……あれは蜜葉だな


「おーい!先生方に当たったらどうすんだー?手が滑ったじゃ済まされないぞー!」


「マスター?昨夜はなぜ帰って来られなかったのでしょうか。私h…コホン、みなさん待ってたのですよ?」


「?!」


……やばい。蜜葉が俺をマスターと呼んだぞ。ブチ切れてらっしゃる?! 

おかしい。俺はきっちり(?)連絡したはずだ。


「すまんg


「知りませんっ!!」


蜜葉はスッと姿を消した


嫌な予感がする



♦︎



……まてよ?


保健室のドアに手を掛け俺は止まる。


昨夜の件は…お互い未成年ではないし、玲子さんとは合意のもと…。

別に全然、これっぽっちもやましい事なんかじゃねーわ!

全くもってビクビクする必要もないじゃないか。


「おはようございまーす!」


気分を入れ替え、ノックして元気よくドアを開ける。職場にどんよりして入るのはダメだと思ったからに他ならない。

それに初日である。今、まさにこの出だしが大事。


「ーーうっ?!」


部屋の中が蒸し暑い。まるでサウナじゃないか!

ムアっとした室内は廊下より暑かった。一気に俺のテンションが下がる。


季節は秋になっているが、どうやら今日は真夏日の気温らしい。『え?まだ泳げるんじゃね?』と思ってもおかしくない程だ。


俺は上着を一枚脱いだ。だいぶマシになったがそれでもまだ暑い


「おはようございます。今日は暑いですねー。はい、家礼せんせ」

「あ、こりゃどーも。…ええと…おか?」

「…??」


同年代の綺麗な女性から冷たい麦茶を勧められた。これは有難い。

すぐにお礼を口にしたが、彼女の名前が出てこなかった。

やばい!職員のファイルをチラ見しただけじゃ覚えられなかった。

なんだったかなー……この色っぽい人、えーと、、岡がつくんだよ。何岡だっけ…?


ダメだ全然思い出せん!


これはとても失礼な事だ。でもこれについては言い訳がましいが、なんせ先生方が多過ぎてまったく覚えられなかったんだ。チラ見だし。

せめて職場の、保健室の同僚の方くらいは名前を覚えておかないといけなかったと反省。


社会人としてこれではイカン。


「あら、悲しいわ。同僚なのに名前を覚えてくださってないなんて…」

「すっ、すみません!」


俺は深々と頭を下げて謝った


「ふふふ。冗談ですよ先生。教員や私たち養護、職員関係者を含めたら此処には沢山居ますもの。それに第一、家礼先生方は挨拶されたから私たちは知ってますけど、私たち職員からは未だですよね。知らなくても仕方ありませんわ」

「そう言って下さると有り難いんですが…本当に申し訳ありません」


「私の名前は松本瑠美です。覚えて下さいね?先生」

タグを胸から取り出して俺に見せた。

(岡なんてついてねえ!!全然ちゃうし!)


「はい! バッチリ覚えましたよ。これから宜しくお願いします松本先生」



しかし、IDタグを胸の中に入れてる方も悪いと思う。なぜ隠すんだ?

……

というか!

あなたブラしてますか?



余談だが保健室には俺以外に3人いるとの事。

松本先生以外、今見えないから職員室にでもいるのだろうか?

(あとで他の先生の名前も調べておこう)


更に言えば学校の保健室とは別に、少し離れた建物に合同診療所っていう場所があるんだと。そこは病院みたいな感じでいいと思う。

そこには他の学校からも養護教諭が集まったり、在中の方が居たりで人数は30人近くなるんだとか。


無理だな。

全員の名前なんて絶対に覚えられん!つか、覚える気もねーし!



「松本先生、今日みたいに暑くてもクーラーは使わないんですか?」

備品の団扇をパタパタ煽りながら尋ねた。


クーラーはある。俺が今眺めているから。

だが、学校の方針で節約がどーのとかいうことなら、使わないのも仕方ないか。


「今日は使えないんです。ごめんなさいね」

同じくパタパタ煽りながら松本先生は答えた。


「今日は使えない?」

どうやら節約の方針はないようだ。


「あ、違います。今は使えないんです。ちょっと調子が悪くて、修理待ちなんですよ。直らなかったら買い替えですけどね」


「故障でしたか」

「ええ。一応動くんですけど、水が漏れてしまうんですよね」


「それ、詰まってるだけじゃないんですか?」

「詰まってる?」


「ゴミとか虫とかで詰まることがあるんですよ。知りません?」

「そーなんですか?」


「俺はあまり機械に詳しくないですが、詰まってるぐらいなら直せると思います」

「じゃあ、、お願いできます?」

「いーですよ。やってみましょう」

直すことができたらこの暑い部屋ともおさらばだ。

俺が直せるぐらいのトラブルならいいが…



〜〜〜




「なんだ。やっぱり詰まってたみたいですねー」


脚立の上に上がってクーラーの中を見る。排水の所にゴミが溜まっていた。これが水漏れの原因で間違いないだろう


「詰まってたんですね」


「そうですね。これでイケると思います」


クーラーを元通りにし、脚立を降りてスイッチを入れた。

しばらく二人で眺めていたが、水が落ちてくる気配はない


「もう大丈夫だと思いますよ」


早速お役に立てれた俺は少し嬉しくなった



♦︎


「家礼せんせ、もう少し右です」


「………」


俺は今、非常に困っている。

何故かって?それは松本先生を肩車しているからだ。


「松本先生?脚立が真横にありますよね?」


「ありますね。それが何か?」


「なぜお使いにならないのでしょう?」


「脚立を登ったり降りたり、ズラしてたら面倒臭いじゃないですか」


……そう言われると


そうかも。


「ちょっと家礼先生?もう少し右ですよ、右!」


「こ、これくらい?」


「もー! 棚の場所を見ないから位置がズレるんですー。上を見てくださいよ、上を!」


そーは言ってもな。首を太ももでロックされてるから見上げにくいんだよ。

それにさっきから首周りがしっとりと……


違う!

これは俺の汗だ!そうに違いない!


俺は邪念を捨て見上げると


「はあ…。すみmーって下、下、下!!!」


「上だって言ってるでしょ先生!」


「ち、違います! 松本先生の下乳が!」


「あ。暑いから服を捲りました。ブラは着けてません!」


「何でだよ!」


「汗疹が出来たらどうするんですか!…先生が責任とってくれます?」


「とれませんねー」


俺が責任とるっておかしくねーか?


「なら言う事を聞いてください」


「はいはい……はぁ」


朝っぱらから俺は一体ナニをしてるんだろうと溜息をついた

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