第18話 高校生じゃないもん

「ニヤニヤすんな!気持ち悪い」

「先輩〜、だって里美がっスね…

コイツ…あの日から頭の中が、お花畑になりやがった

「もう5回聞いたぞ!その話」

「幸せのお裾分けっス」

「ほう。そしたらナニか?俺は幸せそうに見えないと?」

「そーゆー事じゃないっス。やだなあ先輩」

バンバンと俺の背中を叩くミノル


「…今度はしばらく入院するか?」

鬱陶しい腕を2本ともへし折ってやろう

「?! …おっと、里美が待ってるから帰るっス。また明日ーっス!」

ピューっと走り去るミノル。まだ仕事は終わってないんだが…


「オサム1人か?」

ヌッとオヤジが現れた

「…まあな。といっても後は片付けだ」

鉄っさん達は車を車庫入れしたり、長靴を洗ったりとあっちも片付け中だ

「ミノルはどこ行った?」

「里美が待ってるから帰るっスー、だと」

「あの野郎…。なあ、ミノルと里美さんがくっ付いたのは失敗だったと思うか?」

オヤジは少し後悔しているみたいだ


「さあどうかなあ。当人達も分からないと思うし、ましてや俺たちには言えんって。あ、性行はしてるみたいだけど?」

「…あのクソ馬鹿が。オサム、ミノルをよく見張っておいてくれ」

「へいへい」

浮かれている奴は何をしでかすか分からない…という事はよくあることだ

「なるべく注意しておくよ」

「頼む」

オヤジはそう言って事務所に入って行った


「と言ったものの、アイツのプライベートあまり知らないんだよな」



☆☆☆

〜翌日〜


「シュウ、ヒマー?」

ああ、忙しい! 馬鹿が『ちょっと風邪気味だから休むっス』だと?ふざけやがって


「ねー、ヒマー?」

休むのが前もって分かってれば、鉄っさん組から1人よこしてもらったのに。俺が現場に着いてから電話をしてくるとは、社会人として失格だろミノル


「ねー、ねー

「だー!うっさい! フーコ、俺すげー忙しいの。なあ?汗びっしゃの俺を見て分かんない?」

汗びっしょりで泥んこだ。まだ仕事を始めて1時間ほどなのに


「シュウ、馬鹿にしてるの?そんなの見たら分かるじゃない。私が言ってるのは、夜暇かってこと」

プクーとフグになる風子

「いや、お前一言も夜と言ってねーし」

「…おや。シュウごめーん」

プシューとフグが縮んだ


「ま、夜は暇だがよ。どした?」

基本的に飯と洗濯ぐらいだ。TVはこれといって観んしな

「じゃ、また夜に。ちゃんと家にいるのよ?」

「子供じゃねーんだ。家にいるとは限ら

「いるのよ?」

「はい」

…言い返せんな。怖くて!


みんなも気を付けて! 彼女や奥さんが同じ事を2回言ったらピンチだよ



☆☆☆

〜夜〜


「…何もせず、ただフーコを待つ…。これはなかなかに苦行だな」

朝、迫力に負けた俺は、ジッと座って待っている。もう2時間ぐらい待っているだろうか


「TVは…つまらないし。ゲームは気分じゃないし。夜って言ったのに連絡ねーし。…風呂でも入るか」

夜に〜って言ったくせにもう22時だ。明日も仕事ってゆーのにアイツ何やってんだ?


シャワーを掛け湯代わりにし、軽く体を流してから湯船に浸かった


「はー…。このままフーコの奴、すっぽかすんじゃねーだろう


"ピンポーン"


…監視カメラ付いてる?」


「はいはい。待ってくださいよー」

せっかく気持ちよく浸かっていたが、フーコが来たので、タオルで股間を隠して風呂場を後にする。背中や足は全然拭けてない


「こんなことなら鍵開けとけば良かったか?」

が今更遅い。ぶつぶつ文句を言いながら玄関を開けた

「おせーよ!フーコ…?

   えーと…どちらさんですかね?」


高校生?ぐらいの女の子が立っていた


「あっ、あのっ…」

「はい?」

「えっと…。ヤダっ、こんなカッコいい人だと思わなかっ…」

「???」

なんなんだ一体? 向こうは面識がありそうな口調だが…


「はーい、シュウ。仕事でーす」

ドアの裏から奴が飛び出して来た


「フーコ、待たせ過ぎだっつーの。それに仕事って何よ?」

連絡もなくいきなり来やがって


「それについては私から」

沙織がひょっこりドアの裏から現れた

「沙織、お前もこんな時間にどうした?」

備前家って門限ねーの?


「ありませんね。ましてやマスターのお宅にお邪魔するのは最優先事項ですから」

蜜葉がドアの裏から顔を出す

…ドラちゃんのピンクのドアですかね、うちの玄関は?

気になってドアの裏を見るが普通のドアだった。気のせいか…


「修様、ついにデビューです」

「なんの?!」

いきなりデビューと言われてもな

「マッサージ師として、です」

「意味分からん。俺、ただの作業員だし?」

「ですから、修様の…その…アレがですね」

……

「アレ?…まさかお前た

「みっちゃん確保!」

「マスター、お覚悟を!」

「やめろっ、離せ!」

くそう…本気で抵抗できない、俺の性格を知り尽くすフーコにしてやられた


そして俺は、蜜葉が運転する黒いワンボックスに乗せられ拉致られてしまった



〜〜〜



「なんだ。おばちゃんの所のラブホかよ」

どこに連れてかれるのか心配だった。が、いつものラブホだった

オレ専用というのも変ではあるが、俺の専用部屋だ。俺的には第二の自宅みたいなもんだがな


「で? 俺をココに連れてきて何をさせるんだ?」

マッサージがどーとか言ってたから、マッサージをさせる気なんだろうが…4人もしないといかんのかね俺は?


「いえマスター。この子1人です」

「蜜葉さん、さっきからちょいちょい人の心を読むの止めてくんない?」

そういうスキルもってんの?だとしたら迂闊なことは考えれんな


「さあ真凜(マリン)ちゃん、シュウに悩みを言って!」

「は、はい」

フーコに急かされる真凜


「ちょっと待とうか。真凜ちゃんって高校生だよね?それなら俺じゃなくて、ご両親に相談してみたらど

「私は19才です」

「…ごめん」

「いえ。よく間違われるので、慣れてますから大丈夫です」

背は低く、童顔で可愛い女の子。どう見ても高校生にしか見えないぞ


「そっか。…悩みは聞くけど、俺に解決出来るか分かんないよ?ご両親に相談はしたの?」

聞かずに追い返すのもなんだ。一応、聞くだけは聞いてみるか


「両親は…いません…。」

「重ねてごめん。本当にごめん…」

相談する人がいないのか。いや待てよ?

だとするとかなり重たい悩みかもしれないな


「私…。私、ワキガなんですっ」

「へ?…脇が…なんだって?」

ワキガって…。悩みはそれか。でもそれは俺じゃなくて、病院に行った方がよくないか?


「シュウ!茶化さないの」

「修様、真凜ちゃんがかわいそうです」

「酷いマスターも素敵ですよ」

三人衆から非難を受けた。いや、1人は違うか


「すみません…」

別に茶化したつもりはなかったんだが…

真凜は恥ずかしいのを堪えて、言ったのだろう。涙目だった


「大丈夫だよ真凜ちゃん。クリームを塗ったら治るから!」

「そうですね。直ぐ効果がでると思います」

「私たちはソレをシュウクリームと呼んでます」

「蜜葉、ちょっと待とうか?」

「わあー。なんだか美味しそうなクリームですね」

真凜は甘い物に目がないのか? でもシュークリームじゃないから!


「真凜ちゃん、美味しくはないと思いますよ?」

「『あぁーん、美味しい〜』ってゆーのはAVの女優さんだけだよー」

「あら、お二方。私はどちらかと言うと美味しいと思いますが?」

『ワインの様に舌で転がしながら味わうんです〜』と蜜葉がレクチャーする


「蜜葉、お前黙っとれ」

「なるほど!舌で味わうんですねっ」

握りこぶしを作り、1人頷く19才

ほらみー。勘違いしてるじゃないか


「舌と下で味わうんです。もっとも下は挿れてもら

「ばっきゃーろう!!」

テメー、19才に何を吹き込もうとしてんだよ


「さあシュウ。出してみようか」

さあシュウ出してみようか…。馬鹿か?

「さあじゃねーよ。フーコ、簡単に言ってくれるなよな」

「思い切りがないわねー。さおりん、みっちゃん…GO!」

2人に左右からガシッと掴まれた


「ちょ?! お前たち、まさか?!」


「まさかではありませんね」

「修様、頑張ってください」

いや頑張れって…


「へっへっへ。にいちゃん、覚悟!」

ニヤニヤしながらズボンのベルトに手をかけるフーコ


アカン!いろいろ拙い。本当に拙い!


「頼むからやめてくれー!!」



止めろと言って、コイツらが止めるはずなかった

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