第8話 象さん二頭分
「うわっ! すげー分厚い肉だな、これは」
「でしょ。どうよシュウ、降参かしら?」
なんでお前が威張ってんだよ?このステーキとお前は関係ないだろっ
「フォークをこっちに向けて話すなっ!…いや、ナイフに持ち換えたから、良いってことじゃねえ!」
「うっさいなー。刺すわけじゃないでしょ!」
「違うっ!人に向けたらダメなの!」
「まあまあ、2人ともそのへんで。この肉は風子ちゃんのリクエストなんだよ」
会長から、まさかの発言
「お前?! 一般常識知ってるかっ?!」
フーコを見遣り睨む
「すっごーい。口の中で…とろけーる」
見ても聞いてもいなかった
「…誰も手をつけてないのに…。なぜ1人、フーコお前だけ食べている?」
挨拶…ま、まぁそこまで堅苦しくなくても、会長から一言あってから食べ始めるでしょーがっ!
バカな俺でも知ってるぞ
「にくは、はついうちに…"ごっくん" 食べんだよ?」
最悪だコイツ…
「まあまあ修殿、風子ちゃんの言う通りだ。熱いうちに食べようではないか」
「……そうですね。俺もいただきます」
会長の軽い挨拶?の後、皆も一斉に手をつける
「ところで父上はなんと?」
ジジイのことか。風呂での話しが気になるのか?
「宗元の爺さまは、俺を守護神とか言ってましたね。困りましたよ」
肉を切っていたナイフを止めて話す
「ふむ…。父上にも困ったものだ…。だが修殿、父上を名前で呼ぶのに俺が会長と呼ばれるのは…ちとおかしくないか?」
会長が渋い顔をみせる
「しかし…今更、名前で呼べと言われても…」
「俺が良いと認めてるんだ。構わんよ」
会長そうじゃない。俺が構うんだよっ
「…元就(もとなり)さん?」
「そう! 修殿、やればできるじゃないか。よし、記念に乾杯だっ」
何の記念だよっ!
"パンパン"と元就が手を叩く
お?
なんか高そうなワインをメイドが持って来たなぁ…
「グラスを…」
「はい。いただきます…」
「一本、2百万…今日、このめでたい日にこの金額のワインは気に入らんが…。しかし、コイツは美味いぞ」
2百万のワインが気に入らんて…
……
…
?!
「美味いですね…」
味覚はともかく、ワインを日頃から嗜まない俺だが、コレは美味いと思った
「そうかっ! 遠慮はいらんよ。そんなに高価なものじゃないし、じゃんじゃん飲みなさい」
「そうですか? …それならもう少し」
滅多にない機会だ。も少しだけいただこう
……
…
「…ヒック…。すいましぇん…酔ったみたいス…」
普段飲まないワインを、遠慮は失礼だと調子にのって沢山飲んだ結果…かなり酔ってしまった
「やっぱりシュウ、ねばったわねー」
ねばった?酔ったの聞き間違いかー…
「お父様、睡眠薬の分量間違えてませんか?」
「俺もヒヤヒヤしたが、換算すると象二頭分の量になるはずだ。睡眠薬の効き目が弱いというより修殿が強いのだよ」
?!
「ちょっろ、待へー! すいみんやく?」
何混ぜてくれてんの?!
「沙織、きっちり孕むのですよ?」
くそう!このメンツは全部敵かっ
「もちろんですお母様っ!」
沙織が生き生きとした表情でこたえる
「ここにタツミしゃんか正義がいれば、少しはマシだったきゃも…」
タツミも正義も俺がノックアウトさせた。自業自得か…
「ジャスティス?……ぺっ!」
正義の名前が出て不機嫌になるフーコ。バトルで俺を撃ったから嫌いなんだとか
「お前…唾を吐くなよ…う…最低だ、ぞ」
"ガク"
修は眠りに落ちた
〜〜〜
『カー、カー』
(…カラスか。朝チュンというのはカラスの事だったのか…)
目が覚めた。が、体が重…
(ちょっと待てよ! フーコ、お前は備前さん家でも盛るのかっ?!)
俺は体が怠く、思うようには動けなかった
(隣で『スー・スー』と寝息を吐くのは沙織か。…やばい! 沙織が起きる前に、俺に乗っかっているアホを退かさないと…)
と、モタモタしていると隣から聞こえていた寝息がとまる
俺は恐る恐る隣を見る
「シュウ、あはよー」
寝ぼけているフーコと目が合った
「おはよう…。なんだ、フーコが隣だったか。そうだよなぁ、他人ン家でおっ始めるとか有り得ないよなぁ…ん?」
だったら俺に重なっているのは誰や?!
「おはよう御座います修様…」
耳元に甘い声が聞こえた
「?! ちょっと待てお前たちっ! 俺が寝ている間に何やってんだよ!」
沙織、お前初めてだろっ?!
「何って?…ねえ?」
フーコが沙織を見る。コイツ、パスしやがったな
「修様、恥ずかしいですわ…」
おっと?沙織がもたついてる。ここはビシッと注意しとかないとな
「沙織、恥ずかしいと思う事を何故したん…
「朝から皆さん、騒がしいですよ?特にマスター!女の子に恥をかかせるものではありません」
蜜葉が全裸で、髪をタオルで拭きながら隣の部屋からスタスタと歩いて来た
あ、ここはゲストルームじゃなくて沙織の部屋やったんかーって、
どうでもいいんじゃそんな事!
「蜜葉さん、アンタもなんで裸なん?」
一応聞いてみる。大体の予想は出来るんだが…
「もちろん、身体中ベトベトになったからですね。皆さんもシャワーを浴びられた方が良いですよ?」
言われんでも浴びるわい
「はあ…。殺されかけてこれか。俺をなんだと思ってるんだお前たち?」
溜め息しか出んな
「またまた〜。殺されかけたとか大袈裟だよシュウは」
「お酒に睡眠薬を混ぜたら危ないのっ! 学校で習うだろ!」
「「「習いませんね」」」
「ん?…じゃあ、常識だぞっ!」
方向を変えてみた
「確かに常識ではありますが。はたしてマスターにそれが適用されるのか?と言われると…」
「シュウなら問題ないよね? 睡眠薬ってビタミンの一種だよ」
んな訳ないだろ
「……」
「沙織?どーした、ダンマリして?」
会話に入ってこない沙織。少し心配だ
「修様の…大きくなりました…」"ポッ"
「あ、そーすか」
沙織、そういうのは黙っておくもんだ
「シュウ、どの辺りが元気になったポイントかな?」
興味深々のフーコ
「知らねーよ!俺に聞くんじゃねえ!!」
「マスター、開戦ですね?」
蜜葉さんも喰いついてくるなよ
「開戦しねーよ! 2人ともシャワー浴びてこいっ」
フーコと沙織は『怒っちゃイヤン』と言いながら、2人でシャワーを浴びに行く
「マスターとサシのバトルですね?」
鼻息荒い蜜葉
「違いますー。蜜葉さんは早く服を着て下さ〜い」
しないからね。というか、今何時よ?
「あら?もう8時過ぎましたね」
俺の心を読んだのか蜜葉が言った
「は?! 8時? …俺は半日以上も寝てしまったのか」
やばい。仕事に行かなくちゃ…
…オヤジに怒られてしまう
「睡眠薬とこの部屋の暗さが原因かと…」
ふむ。確かにカーテンを閉め切っているから暗いな。部屋の電気も薄暗くしてあるし…
「てゆーか、睡眠薬が原因て…。蜜葉さんも共犯者だろ?」
「違います! 私は意識がないマスターを襲っても楽しくないと申しましたっ」
拳をプルプルさせる蜜葉
「す、すまん…。フーコが主犯なのは分かってるから…」
「意識がないマスターを襲うのも、案外アリだと思いましたね」
自分の右頬に手を当て、ホゥっと溜め息を吐く蜜葉
「バカやろう! 俺の謝罪をか…
「「きゃーっ!」」
シャワーを浴びているであろう2人から悲鳴があがる
「ど、どうしたっ?!」
俺は慌ててシャワールームに駆けつけた
「さおりんの肌、真っ白で綺麗…」
「は?」
俺は沙織を見る。そこには痕が全く無い、いや、例えるなら美術品のような体をした、美しい沙織がいた
「修様…あまりじっくりと見ないでください」
恥ずかしがる沙織
「わ、わりー。直ぐ出るよっ
「ちょいと待ちねえ!」
またしても岡っ引きに捕まる
「シュウ、さおりんに何かないの?謝るんじゃなくて…ほら、さあ」
フーコが何を言わんとしているか分かった。分かったが…沙織に面と向かって言うのも恥ずかしいのに、フーコや蜜葉さんが横にいるこの場で…
沙織が期待してる顔で待つ。そんな表情するなよ…
「えーと…。なんと言いましょうか…
…なった。綺麗にとても思いますよ?」
しどろもどろになりながら答えた
「ちゃんと日本語をしゃべれ!」
フーコのダメ出しが入る。沙織は…
沙織は赤い顔をしていた
「文法おかしくても、ちゃんと伝わったぞ」
要は気持ちの問題だ
「さおりん、今のでいーの?」
「…うん。気持ちが伝わってきた…」
「ならいっかー」
フーコよ。お前が判断するのはおかしくないか?
「みなさん、朝食を食べに行きましょう」
そこに蜜葉さんからお誘いが。
…ナイスです蜜葉さん
「腹ペコだ。朝食を食べに行こうっ」
「「あっ!」」
俺は逃げるように部屋を出た
いつもならとりあえず遠慮するのに、今はどうにかして気まずいこの場から逃げたかった
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