第6話 乙女同盟
俺がソファーでぐったりしていると、そこに
"バーン"
「ぐわっ?!」
扉が勢いよく開き、タツミにあたる
(…罰が降ったんだろうな)
「沙織、ノックもしないで…はしたないわよ」
「そうだぞ。女の子はもっとお淑やかでないとな。扉もそっと開けなさい」
親に窘められる沙織
「お父様お母様、それどころじゃありませんの。修様っ!ちょっと私の部屋までいらして下さい」
ガシッと腕を掴み俺を連れ出そうとする沙織
「子作りね?頑張って!」
伽耶さんアンタさっき、はしたないとか言ってなかったか?今の言葉はどーなんだよ
「沙織、避妊はするなよ?」
おい、おっさん!逆だろ普通。アンタもさっき、お淑やかにとか言っとたよな?真逆じゃねーか
「っ?! ちょい沙織、落ち着けって!」
俺の右腕を胸で抱きしめる沙織
「行きますわよ?」
「わーったよ。行くから腕を離せ、腕を」
「それとコレは別ですっ」
俺の方が背も体格もあるのに、引きずられている
「女の子が欲しいわ」
「何言っとるんだ伽耶?修殿に似た男の子だろ」
「…言われると男の子も良いわね」
「そうだっ!双子だ、双子だよ伽耶」
「?!」
…
「「双子でよろしくーっ」」
「アンタらバカか?!」
八つ当たりでタツミを蹴ってから部屋を出た
〜〜〜
「で、お前はどこの女ボスなんだ?」
来た時の服装とは明らかに違う、怪しげなドレスを着ている。部屋隅にあったであろう木彫りの馬を、わざわざ中央に移動させて跨っているフーコ。
手には黒い手袋をし、仮面を着けている
「待っていたぞ!ケンシローっ」
ノリノリであのセリフを言うフーコ
「待たせてないし、名前違うし。お前らの内緒話に、なんで俺を巻き込むんだよっ」
ここに来た時、俺を放っておいて2人で部屋に篭ったくせに…
「拗ねないのっ!シュウ…今からシュウが主役なんだか…
"コテっ"
降りようとしたフーコ。だがドレスの裾が、馬のどっかに引っかかってしまい落馬した
「イテテ…」
「馬、元の場所に戻しとけよ?」
「気遣いの心がなーい!」
「知らねーよ。第一、なんで服を着替えてるんだ?」
備前家にはドレスコードはないし、服を借りに来たわけでもない。コイツがドレスに着替えてる意味が分からない
「これね? 着てみたかっただけー」
「あ、そう」
軽く流した
「では修様…お願いします」
"シュルッ…ストン"
「沙織、何を…?!」
振り返って見ると沙織が服を脱いでいた
「沙織っ!お前何やってんだよ!」
俺は慌てて目を逸らした
「シュウ…沙織をちゃんと見てあげて」
いつものフーコとは思えないほど、言葉も口調も堅かった
「しかしな…」
俺と沙織にはアッチの関係はない。それどころか、お互いの裸すら見たことがないのだ
「いいからっ!…沙織、勇気をだしたんだよ?」
「修様…お願いします…」
……
…
「分かったよ…。ちゃんと沙織を見るよ」
見ろと言われても抵抗がある。なかなか『はい、そーですか』とは、実際いかなかったが
……
…
「さ、沙織…お前、その酷い痕は…?」
部屋は灯りがあるが、明るくはない
そして2人のことだ。この状況は元から分かっていたはず。部屋のカーテンはきっちり窓を隠していた
そして俺と沙織の距離も近くない
だが、そんな状況でも沙織の身体には…火傷の様な痕が、至る所にあるのが見えた
「じゃあシュウ…出そうか」
出す? "出る" の聞き間違いか?
「じゃあって何だよ?部屋から出りゃーいいんだろ?」
"ガシッ"
動こうとする前に掴まれた
「フーコ、掴んでたら部屋から出れねーぞ」
邪魔をしてどうするよ
「違う!出すの!シュウの子種をココでっ」
真顔で言うフーコ
「待て待てっ!なんで沙織の、女の子の部屋でそんなことしないとならねーんだっ!バカなこと言うんじゃねーよ」
そんなことしたら完全にクズだ
「違うんです。修様の力、風ちゃんから聞きました。その力を私にも是非使ってもらえないかと…」
沙織が泣きそうな顔で話す
方やフーコは自分の胸を両手で揺らす
「あ!…話しちゃったのか」
いろいろ納得できた。あの話は冗談かと思ったが…こういうことだったのか。
「うん。…シュウは知らなかっただろうけど、さおりん…小さい頃からアトピーが酷くて。
最近になってね、痒みを抑える効き目の強い薬ができたから掻かなくなったらしいけど。
でもね、痕が消える訳じゃない。備前グループのことだから、あと10年ぐらい経てば薬もできそうだけど…
それまでさおりんに、今のままでいろって言うの?シュウ」
フーコは自分のことのように話す。今にも泣きそうだ
「本当はね、さおりん…シュウに、今直ぐにでも抱いてもらいたいんだよ?…でも…」
「風ちゃん…」
沙織は既に泣いていた
沙織の為なら…。いや、俺が一肌脱げば良いだけだ。俺が拒否することはありえない
「分かったよ…。出せばいいんだな?
…ちょっとトイレに行ってくる」
2人の女の子に泣かれた。だが沙織の痕が治せるなら、恥ずかしいから"しない"という選択肢は…俺には無い
準備されていた容器を片手に持ち、部屋から出ようとすると
「ちょっと待ちねえ!」
江戸時代風の岡っ引きに御用になった
「トイレに行く必要はな…ううん、行ったらダメっ!」
「何でだよっ!」
「新鮮なモノじゃないと効果が落ちるかもしれないじゃない?」
「トイレで出しても、時間経過はあまり変わんないだろ?!」
「さおりんに、最高の状態で提供しようと思わないの?」
「くっ」
それを言われたら反論できねーじゃねえか
……
…
「…分かった、分かった。ここでやるから…アッチへ行ってろ」
はあ…。覚悟を決めるか…
「は?何言ってるのシュウ?」
『全然意味わかんなーい』みたいな顔をする
「いや…だから」
「シュウは私が何の為にドレスを着ていると?…シュウをサポートする為よっ!」
バーンと胸を張るフーコ
「サポート…ってお前…」
開いた口が塞がらない
「さあさあ、さあさあ!早く脱ぎなさいっ。
時間がもったいないよ?男ならスパーンと二枚抜きだぁ!」
「…お前さぁ、おかしな煽り方すんなよな」
しかし…こうまでおかしなテンションで煽られると、逆にすんなり脱げるな
「「おお〜っ!」」
2人から歓声があがる
「あのね…。俺、別にストリップしてる訳じゃないんですよ?お客さん」
「何?シュウもノリノリじゃない?」
しまった! おのれフーコめっ
「さおりん、見ててね〜」
「…うん」
「ちょい待ち…おおうっ?!」
フーコの手袋はシルクかっ?!
「ふふんっ、どうよシュウ?」
「バカな?!感触が、まるっきし違うとこんなにもっ」
「こんなにも?」
「やめてー!沙織っ、俺を見るんじゃない!」
「修様っ、ガマンは体に毒ですっ!」
「いやぁぁぁっ!!」
〜〜〜
「俺はもうダメだ…。お婿に行けない…」
隅っこで横たわりシクシクと泣く
「シュウ、婿に行けないってさ」
「ふふふ…その必要はありませんね」
「ねーっ!」
2人は互いの顔を見て頷く
「何でだよ!お前たち冷たくねーか?!」
ひどい!綺麗だからとか、可愛いから…で、女の子を判断すると失敗すんぞオマエ等っ!
よー、見とけ!これが失敗例だ!
「「私たちがお嫁にいくもんっ」」
「あ、そうですか」
…来るんだってさ。ごめんオマエ等、失敗例じゃなかったよ
勝手にどんどん話を進めちゃってください
「修様、不貞腐れてますよ?」
いや、不貞腐れてはいませんよ?
「いつもの事よ。でも今は…ほーらシュウ?大事な大事な仕事よーっ」
"魔法のオイル"を作り終えたフーコ
「いつまでその隅っこにいるのよっ!ほらほら、さおりんが待ってるわよ」
フーコが起こしに来た。…言われんでもやりますよ
「はー。沙織?…って、お前も段取り早いな」
ベッドに仰向けでスタンバってる沙織
「じゃ…やるぞー?」
「お、お願いしましゅ…」
〜〜〜
(間近で見ると…かなり酷いな…
ケロイドみたいになってる所もあるな…
これじゃ今まで、スカートや肩が出るような服とか着れなかったろう。オシャレがしたくても無理って…女の子なのに、だ。しかも周りの友達がオシャレする中、1人辛かっただろうな…)
神さん アンタさ、ちゃんと仕事してるか?
沙織がいったい何したんだよ
こんなに綺麗な身体なのに
痕なんかつくらせやがって
罰が当たったとか言うんじゃないぞ
コイツは今まで耐えてきたんだ
何も悪いことしてないんだよ
神さん 見てたらお願いだ
治してくれよ 綺麗にな
いや違う そうじゃない
シンシンと降る雪の様な
神秘的で誰もが見惚れる肌にしてやってくれ
できないとか言わないよな?
俺は沙織の為なら…
殴りに行くぞ
「ふー…。一応、隅々まで塗ったけど…
沙織、嫌じゃなかったか?」
沙織の顔が真っ赤だ
お互い恥ずかしい気持ちを抑えて、マッサージをやったんだ。終わったら一気に恥ずかしくなることだってある
「い、いえ…嫌じゃなかったです…けど…」
「けど?」
「濡れましたっ!」
「さおりん、私もそれ分かるー」
「あっそ」
俺1人、沙織の部屋からさっさと出る
「タツミさーん、風呂に案内してー」
風呂に入って気分転換でもしよう
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