第4話 風子、美乳になる

〜翌日〜


「今日は日曜日…か。備前さんの所に行かんといけないなぁ」

昨日1日フーコからの連絡はない

やっぱり変化なかったか…

……

「待てよー?行くって、スーツどうしよう…」

入らないのをすっかり忘れていた

「それに手ぶらじゃ行けねーし…」

スーツも菓子折りも、どっちも手元にねえ

「あかん…無理だ。…もう寝よう…」

せっかく起きてタオルケットから出たのに、『よっこいしょ』とまた、タオルケットに潜ろうと横になる


"ピロリ〜ン・ピロリ〜ン・ピロリキ〜ン"


…なんつー着信音だ

フーコに触らせるとロクなことにならんな…


「はいはい。苦情も愚痴も受け…

『大変!大変!スッゴイよ?マジで…』

…この分だと何かしら変化があったみたいだな

「ほう、どう大変なんだ?」

『あのねっ、BがCでDなの!BCDよ?凄いよマジで』

「なんだその予防接種みたいな言葉は?」

『だーかーらー

"ガチャ"

「BがCになったと思ったら、Dになってたのよねー」


?!


「いや、お前…。今どうやって入って来た?」

あまりに嬉しくて、来ながら電話していた…というのは納得しよう

「え?そこのドアから」

フーコが玄関を指差して答える


「そうだね。それは見てたから分かるよ。

…って違う!俺が聞いたのは、玄関には鍵が掛かっていただろ?って事だよ」

すげー自然に入って来やがったよな


「あー、それね。コレコレ」

ピンクのグリップに、可愛いキャラクターが付いた鍵を俺に見せる


「魔法の鍵でしょうか?」

「ここの合鍵でしょうね」

「でしょうね。じゃねーよ!なんでお前がもっとんのじゃ?!」


『だって妻ですから〜』と訳の分からない事を言い出すフーコ

「勝手に複製すんなっ!アパートだけど、俺の家だぞ」

「何ムキになってるの…ア・ナ・タ?」

「なるでしょうが!」

「シュウも私の家の鍵、持ってんだからいいじゃない」


『まったく、合鍵を持ったぐらいで、はしゃぐんじゃ無いわよ?』感を出しているフーコ

「へ?…今なんておっしゃいました?」

「合鍵持ってるんだからいいじゃない?」

「知らねーぞ?そんな鍵」

まったく分からない。何を言ってんだコイツ


「ほら、コレよ。こーれ」

フーコは俺のキーケースを手にして持ってきた

「このピカピカに輝いて…

「ちょい待て。記憶に無い鍵が付いてんなーと思ったが…コレお前んちの鍵か?」

「もちろん。…え?何?気が付いてなかったの?」

知らねえよ。気がつかねーよ


「…でも…合鍵持つって、何か嬉しい気持ちになるな」

「でしょう。私の気持ちを察しなさいよ」

「はいはい。そうですね、以後気をつけます」

「それ…ダメなヤツじゃん!」

ムキーっと怒り出す


「で、話を戻すけど…どうだって?」

「そうそう。それよ…。ま、見せた方が早いわね」

スポーンと服を脱ぐフーコ

芸人さんみたいに脱ぎ慣れとんなー


「ほーら、コレ! 左右均等にDになりました。はい、拍手!」

「拍手はいらんだろ」

見れば均等に、それに大きくなってるのが分かる

形も張りも…まさに美乳になっていた


「シリコン整形…?」

「て・ん・ね・ん」

「国宝になっちゃって…」

「世界遺産ね」

「お前、それ言い過ぎ…と言えない自分がココにいます」

「よろしい。では、堪能したまえ少年よ」

椅子の上に立ったフーコが、俺の顔の近くに胸をもってくる


「わーい、いただきまーす! …とは、ならんだろ普通」

コントに少し付き合ってやったが、俺はもう寝るのだ


「いろいろ切迫しているので寝ます。おやすみなさい」

タオルケットに向かって、フラフラ〜と歩いて行く

「どうしたの?」

「いやね。スーツが入んなかったし、菓子折りも買わないといけないし…。第一何を持って行けばいいのか分かんねー」

『もームリさー』感を出しつつタオルケットを胴体にかける


「スーツならレンタルあるじゃん。付き合ってあげるよー? 私もブラ買わないといけないし。菓子折りって、何処にもって行くの?」

レンタル出来んの?そんなシステムあったっけ?

「ツタ○にスーツあったかなー?見たことないけど…」

もしかしてR ー18の暖簾を潜って行くとこか?


「バカっ、ある訳ないでしょ。紳士服店よ!レンタルできるとこ」

「なら知らなくて当然だ。行くことねーから」

「菓子折りはね…先方の好みが分からない時は無難に"今の流行"を持ってくのがいいわよ」


好み…か。

「備前さんの好みなんて…

「ちょい待ち。今、なんて?」

フーコの顔がやや険しくなる


「備前さん?」

「そう!それっ!…大問題ね、これは」

『私もついて行くから』と何度も言う


「フーコや、お前沙織と和解したんじゃなかったか?」

和解。そう…昔はフーコと沙織、仲がとっても悪かったのだ


「和解?和解どころか今は親友よ。年は私の方が上だけどね」

「そーだったな。2個違うんだっけ?」

「そうよ。今あの子、22才だよ」

「じゃ、なんで険しい顔したんだよ?」

「乙女の秘密?」

ほえー。乙女…乙女ねぇ…


「乙女って、処女の女の子にしか使えないんだよー。フーコ、残念!」

クスクス笑う俺


「女の子の処女を貰って、『俺も初めてさ。ありがとう風子さん』って感動して泣いたお兄さんを私は知ってるなー。シュウ、残念!」


ぐはぁ!


(ば、ばかな…。ブーメラン、確かに俺はブーメランを投げたかもしれない。だが、風車の羽が戻って来やがった)


「すみません。本当にすみません…。自分少し…調子に乗っておりました。フーコさんにはいつも大変感謝しております。これからも私、修をよろしくお願いします」

土下座をして謝罪する

プライド?…は? そんなモノは必要ねえ


「うむ。言葉には気をつける様に」

「はっ!勿論でございますっ」

これからは投げっぱなしでいい、槍の様な言葉を使うように心掛けよう


「シュウ、菓子折りの件だけど…何も買わなくていいわよ」

「おおっ、何かいいモノ見つけたか!」

しかし…この部屋に菓子折りに代わるモノなんてあったっけ?


「何言ってんの?あるじゃない、これ」

フーコが俺の股間を摩りながら言う

「ちんこ?」

「…まぁ、沙織は大喜びするわね。そうじゃなくて、魔法のオイルよ」

…喜ぶと思うか?

「すげー…微妙?」

マッサージも素人だ。微妙どころか不快にさせるかもしれない…


「まだアノ効果に自信がないの? …アレはこの世界の理を外れている、神秘のモノよ」

「そりゃまた大袈裟だな」

理とか神秘とか…少し鼻で笑う俺


「シュウ、全然価値が分かってない!これは世間に知られたら、とても拙いモノよっ」

「例えば?」

「死ぬまで監禁…。いや、最悪はクローンを造られてオリジナルは解剖ね」

「……そんなに拙いの?」

「当たり前じゃない。外科的な事をせずにこの結果よ?」

"ぷるんっ"


「やばい…フーコ、俺怖くなってきた…」

全身がガタガタ震える

「大丈夫。私もついてるし。…沙織、いや備前家の力も借りましょう」

「頼むっ!」

「そうと決まれば、このままで行きましょう。スーツは要らないし、私のブラも今の方が分かりやすいから」

「よし!じゃ、行こうか」


2人は備前家に車で向かった



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