第7話
4時間目の授業。
朝飯を食べずに来た俺は腹が減って限界だった。
こんな状況で授業に集中などできるわけがない。いつもだろとかいうツッコミは無しだ。
ということで授業内容は耳を右から左に聞き流し、空腹に耐え、耐えに耐え…
『キーンコーンカーンコーン』
よっしゃー! ! !
昼飯じゃあー!
しかし肝心なことを忘れていた。
飯がない……
今から購買行っても朝組に買われててほとんどないだろうな。
はぁどうしよ。
そんな感じで意気消沈していたところに聞こえてくる聞こえてくる。
渥美を中心にしたリア充共の声が。
その中に淳二も入って……
「しーちゃーん、一緒に食べよや」
いなかった。てか現在俺の目の前にいる。
リア充が俺みたいなぼっちに関わったら大変なことになるのは、スクールカーストの常識。
ここはやんわり断っとくか。
「いや、俺、その、今日遅刻してきたからさ……」
「あー、それで飯ないっちゅーわけか。ほな俺のおにぎり1個やるわ」
「え? マジで? 」
「おう。マジで。久しぶりやからしーちゃんともぎょーさん喋りたいしな」
うぉおおおお!
神さま仏さま淳二さまとはこの事か!
とりあえず感謝を。
「ありがとう」
「どういたしまして。てかしーちゃんはいつもあーちゃんと食べてへんの? 」
この声の大きな発言がリア充軍団の耳に届いたらしく、てか教室全てに届き、なんとも言えない空気となった。
まぁクラスにすぐ馴染めてたやつが、1ヶ月以上経っても馴染めてないやつに話しかけたら、そりゃあ変な空気にもなる。
「なんやなんや? この空気? こんなん苦手やねん。俺なんか変なこと言った? 」
「いや、別に。変なことは言ってない。けど、まぁ見たら分かるだろ? 一緒には食べてない」
「なら呼ぶしかあらへんな」
は? 呼ぶ? 渥美を俺らの元に?
いやいやいや、まさか
「おーい、あーちゃん! 」
「大きい声出すな! そんなに大きい声出さんでも聞こえてるわ! 」
「やっと腹から声出したな」
「は? 」
辺りを見るとみんな俺を凝視していた。
まぁぼっちがリア充転校生と一緒に飯を食ってるだけでも異様な光景なのに、こんな大きな声出したら、みんなこっちを見るわな。
名前もほとんど知らないクラスメイトだが。
すると渥美がグループを抜けこっちの方へ歩み寄ってきた。
「ちょっと、声大きい」
「やっと来たなあーちゃん! なぁ一緒に飯食わへん? 」
「うんまぁ、いいけど」
「よっしゃ決まりや! 昔みたいに3人で食べよや! 」
なんか渥美のやつ凄い小さい声で返事してたな。
いや、淳二の声が大きいんか。
渥美はグループに言ってこっちの席に来た。
家以外では遠くで昼飯を食べていた渥美と一緒に食べるとか違和感が半端ない。
小学校の時はよく3人で食べてたな。
そんなことを思い出した。
「いやー、久しぶりやな3人で食べんの」
「そうだね」
「淳二は何部入るか決めたのか? 」
ここで淳二がちょっとムカついたような顔をして俺に言ってきた。
「なんやねん淳二て。昔から俺らはあーちゃんとあっちゃんとしーちゃんやろ?それでええやん」
「いやでも流石に」
「なんや? なんかあかんのか? 」
「いや、別にそういうわけじゃねーけど」
「ならええやん。な、あーちゃん」
「うん」
なんで了承しちゃうのかなこの子は。
あーちゃんなんて小学校以来だぞ。
中学では名前だったし、高校では幼なじみってことを言ってないのに、これじゃ幼なじみってことを言いふらしてんのと変わらない。
淳二はあのコミュ力があるからいいが、学園のアイドル的存在の渥美と幼なじみとか、俺もう男子の妬み嫉み買いまくりで、破産する……
「なーに話してんの? 」
「あ、凛」
この子は
身長は結構小さい。
性格は明るくて、人望がある。
ショートカットは渥美と同じであるが、渥美とは違いかわいい系である。
渥美の親友で、俺と渥美と同じ中学、同じ部活だった。
だから中学ではたまに話したこともあった。
高校では話したことが無い。
「どうしたの? 」
「ちょっと気になってね。3人はどういう関係? 」
「ただの幼なじみだよ」
「へぇー、いいね。私幼なじみとかいないから憧れる。てか渥美ってあーちゃんって呼ばれてたんだね。私もそうやって呼ぼうかな」
「やめてよ〜。凛は今まで通り渥美って呼んでよ。それにこの2人以外から呼ばれるのは違和感しか感じないし」
「いいねその感じ。3人の絆だね」
「もう、そんなんじゃないって」
なんかキャッキャウフフなガールズトークを聞かされており、淳二は一緒になって笑っているが、あのコミュ力モンスターが会話に入れていないのだ。
俺は元から入る気なんて無いがな。
実際俺みたいな陰キャ、幼なじみで転校生っていう肩書きがあるからここまで話しかけてくれるのだ。
もし、俺が転校生でみんなからチヤホヤされている期間に陰キャと関わろうなどと思わない。
淳二も俺の周りに漂う空気を感じでいるはずなのに、それでも話しかけてくれた。
渥美も強引に誘われたが、学校で俺と話してくれている。
そのおかげが久しぶりに騒がしい昼食を取れた。
淳二には感謝しないとな。
ただこんなことを言葉に出すのは照れくさいから言わないけどな。
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