第55話 入った亀裂

約2時間ほどのライブが終了した。

やはり人気なだけあって時間が長かった。


とてもじゃないがしんどい。


「いや~~初めて見たけどなかなか凄かったな!」


「みんなカッコよくて歌とか全然耳に入ってこなかった!」


それはどうなの雪野さん・・・・・


「咲奈はどうだった?」


「初めてライブを見たけどすごい迫力だね!凄かったよ!」


「イケメンだったでしょ!?」


「うん!カッコ良かった!!」


そう言いながら僕のほうを見てきた。


「な、なに?」


「なんにもないっ!」


「へ?」


なになにがあったの???なんか気に病むことをしましたかね?


「朝宮さんになにやらかしたんだ?」


「いやなんもしてないぞ!!心当たりはこれっぽっちもない」


「咲奈さんちょくちょく雷斗くんの方見てましたよ?」


「え?そうなの?」


「はい」


え?なに?僕わかんない。

こんな状況で今から朝宮さんを誘わないといけないの?

気まずいもいいとこなんだが・・・・・

どうすりゃいんだよ・・・


「それにしてもこんな時間か。そろそろ後夜祭が始まるころだろ」


18時を回ったところだった。

これから後夜祭。

キャンプファイヤーにフォークダンス。

そして最後に花火が待っているらしい。

僕は後夜祭なんてイベントには出たことなかったからどんなものなのかは案外気になるものだ。


そんなことを思いながら運動場に行くとそこには炎が燃え盛っていた。


「凄いですね!!私の学校には後夜祭というものがなかったので新鮮です!」


「なかなかのもんだな」


「いいだろ?キャンプファイヤー、後夜祭も悪くはないんだよ」



やけに先輩ずらしてくる久遠にイラっとしたが悪いないのは確かなために何も言い返すことができなかった。


「これからフォークダンスが始まるぞ。誰かとやって来いよ」


「やる相手をよこしてくれ」


「私とやりますか?」


「やらないよ、恥ずかしい」


「で、ですよね・・・」


な、なんでそんな悲しそうなんだよ。

いくらそういった場とはいえ陰キャがフォークダンスに参加してたら気持ちが悪いもいいところだ。何が何でもやりたくない。


それは置いておいてどうやって朝宮さんを誘うかだ。

もう最後の花火しかチャンスは残ってない。

なにかいい案はないのか。


「後夜祭も盛り上がって言いますか!!それではいよいよフォークダンスです!!カップルの皆さんや好きな人を誘って踊ってくださいね~~!!ではスタート!!!」


合図と同時に一斉に炎の周りを取り囲んだ。


「この光景を見ている側の人はなにをしているんだろうと思わないのか・・・」


「いや思わないわけないだろ。バカなんじゃないかって。だが花火のためだ」


「お前そんなに花火好きだったのか?」


「まぁいろいろあってな」


「そ~か」


「そういやいつの間に雪野さんいねぇ~な」


「花火も場所取りでもしてんだろ」


「ほんとにそういうことしてそうだな・・・」


「朝宮さん誘わなくていいのか」


「なんでそんなしないといけないんだよ・・・・ってのは違うか。」


「きっと待ってるぞ」


「分かってるよ」


「なら今からでも行け」


「ああ」


久遠に言われて行動をとった。チャンスを狙ってなどといってたらいつまでたっても進歩しないのはわかっている。僕もまだある壁を壊していかないといけない。



「朝宮さんちょっといいかな」


「う、うん」


僕は人がいない場所にいき


「花火、一緒にみ、みてください!」


少し戸惑っていたのか反応がなかった。

僕が顔をあげたら


「なんで私なのかな」


「なんでってそれは・・・」


「なんで凪沙ちゃんを誘わないのかな」


「なんで静さんの名前が・・・」


「だって見ちゃったんだもん・・雷斗くんと凪沙ちゃんが一緒に回っているところ」


「それは静さんに誘われたからであって・・・」


「じゃあなんでそう言わなかったの?」


「言いずらいから・・・」


「それで嘘をついたの?」


「だからなんだって!!朝宮さんがどうこう言う権利はないだろ!!」


朝宮さんの態度が

言葉が

今の僕には刺さった。何故こんなことを言われなくちゃいけないのか。


確かに予定を変更してしまったのは申し訳ないと思っている。

だから僕はそのために嘘をついた。

僕は嘘がすべていけないものとはおもっていない。

噓も方便

嘘も場合によっては必要だということ。

嘘で傷つくことを回避することだってできる

嘘で成長することだってできるんだ。

僕は朝宮さんに変な感情を抱いてほしくなかった。

雪野さんに言われた言葉

僕を待ってくれているかもしれない君に正直には言えなかった。

言えるわけがなかった。


だから嘘をついた。


「なんだってじゃないよっ!いつもはしないくせに髪のセットまでしちゃってさ!」


「別にいいだろ!!何がそんなに気に食わないんだよ!!」」


「どうして気づいてくれないのっ!!」


「そんなの言われないとわかんないんだよ!!今も先の見えない話で!言いたいことがあるならはっきり言ったらどうなんだ!!!」


僕は今ある胸の内をすべて吐き出した。


「ごめん、一緒に花火見れないや・・・」」


彼女は泣いていた。


それで僕は我に返った。


ああ。なにを泣かせているんだ。

何を本気になって本音をぶつけているんだ。

今ここで嘘つくべきだったんじゃないのか。

何が壁を壊していく。だ

それどころか大きな壁が増えてしまった。

僕を思ってくれていたからこその怒りだったはずなのに僕は・・・


けどもし君を誘った理由を問い詰められたら何と答えるだろうか。


今の僕には到底答えを出すことができない。







ああ。





僕はなんてヘタレなんだろう。


                  つづく


あとがき

最後まで読んでくださった読者の皆様ありがとうございます!!

ギクシャクしてきた雷斗と咲奈

これからどうなっていくのか!?

自分でも分からないので気になりますね!!

ではまた!次話でお会いしましょう!

                  立花レイ

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