第53話 限界を超えていけ
「あ~~~~終わった~~~!!」
濃い時間がようやく終了した。バイトよりもきつかった。手は動きっぱなしで休む暇もなく大変だった。
「この2時間が一番きつかったわ・・・」
「みんなよく頑張ったよ!」
「一人途中で抜け駆けしたクズがいるけどな」
「その節は誠に申し訳ございませんでした。」
決して僕が悪いわけではないのだ。だがしかしあの後輩たちの感動シーンを見せられてはあの人達のせいにするのも気が引けてしまう。
だからここは素直に謝罪をした。
「いきなりイケメンになって帰ってきやがって、チクショー」
「雷斗くんに一体何があったんですか・・・まさか!?陰キャを卒業するために!?私をおいて行かないでくださいよ~~~!!!」
「僕は一生陰キャを背負っていく立場だから安心してくれ大丈夫だ」
「じゃあ、皆そろったことですし今度こそ一緒に回りましょう!」
「おおおぉぉぉ!!」
「ご、ごめん僕は他に用事できちゃったからあとで合流するよ」
「なんだなんだ誰かにパシられたか?」
「ま、まぁそんなとこかな。あはは・・・」
「じゃあ用事が終わり次第連絡ください!!」
「わかった」
「あ!先輩!こっちです!」
僕が集合場所に来た瞬間に静さんの呼ぶ声がした。
「あんまり長くは付き合えないぞ」
「分かってますよ!けどこの少しの時間だけは私だけを思っててください」
告白?みたいなことをされてから僕に対しての静さんの様子が変わった。少しグイグイくるようになった。といえばただしいのだろうか。いつもの静さんとは違い、意識されるような行動をとってくるようになった。別にそんなことをしなくても海での出来事以降、必然的に意識するようになっている。そんなことを思っていたところで静さんには届いていないから意味がないのだが。
「だから先輩この間だけでも名前で呼んでください!!」
「は!?」
「いいじゃないですか!!前にも言いましたよね!凪沙でいいって!なのに全然呼んでくれないし・・・」
「徐々にって話じゃなかったっけ!?」
大体いつからデートみたいになってるの!?
「そんなことは覚えていません!!大体呼ぶ気あるんですか!?努力が見れません!」
「分かった!分かったよ呼べばいいんだろ!!」
「理解が早くて助かります。流石優等生!」
「うるせー。じゃ、じゃあ行くぞ凪沙」
「はい!雷斗せーんぱいっ!」
「先輩何食べます?」
「午前中はスイーツしか食べてなかったから塩辛いものが食べたいな」
「じゃあ串焼き食べますか?ちょうど見えてきましたし」
「そうするか」
僕たちは列に並んだ
「いろいろありますよ。焼き鳥にももにつくねもなりますよ」
「どうしような。まぁ無難に一つずつ頼むか」
「そうしましょうか」
僕たちは人影が少ない場所で座って食べることにした。
「風が気持ちいいですね~~!!まだ生暖かいですけど」
「夏休みが終わったからって夏が終わるわけではないからな。9月でも今は暑い」
「私たちが小学生の時はこんな暑くなかったですよね~~、ん~~おいしい~~~」
頬に手を置いてホントにおいしそうに食べている彼女を横に僕も口の中にいれた。
「なかなかうまいな」
「ですよね!学校でこんなの食べられるなんて幸せです!」
どこかの焼き鳥屋で出て来そうなくらいのおいしさだった。
学校もバカにはできないっていうことだ。
準備をしているだけある。
「そういえば、いつの間に未希たちと仲良くなってたんですか!」
「仲がいいわけではないだろ。会ったの初めてだぞ」
「それにしてはいい感じでしたよ?」
「そう見えたのはあの後輩3人のコミュ力があるだけだよ」
特に仲が良くなったわけではない。あの人たちの固有スキルが強いだけだ。
圧倒的なコミュ力と友情であたかも仲良く見えるように話しているのだ。ただそれに飲まれていただけなのだ。
「君の友達はいい人達だな」
「どうしたんですか。いきなり」
「体育祭の時に話してくれただろ?隠していること」
「話しましたけどそれが何か?」
「僕は君の友達と話せて良かったよ、おかげでスッキリしたよ」
「私は全然スッキリしてないんですけど・・・」
「君は言ったよね。トラウマかもしれないって」
「言いましたね」
「一度起きてしまった辛くて苦い過去はもう二度と味わいたくないと思うのは必然的なものだよ。当然、恐怖を抱いてしまう。そして目を背けようとしたくなる、僕だってそうだ。嫌われていい気分はしないし、できるのであればそんなことは味わいたくはない。けど、背け続けるのは違うと思うんだ。僕は今まで女子に嫌われ続けてきた。何もしてないのにだぞ?だから拒絶反応とまではいかないかもしれないけどそのくらいの嫌悪感と共に恐怖を持っていたんだ。けどある時、その壁を壊してきた女子が現れたんだよ。何にも抵抗なく気さくに話しかけて来てくれたんだ。僕はそれに驚いてさ、こんな人がいるんだって。普通はその場の空気に流されて、なんとなく嫌っておく、ってパターンが9割を占めているんだよ、僕の経験上。けど彼女は違った。誰にも転がされず歩み寄ってきたんだ。それが凄く嬉しかった。女子には嫌われるってのがディフォルトだった僕の道を絶ってくれたような気がしたんだ。
それで君の友達の言葉を聞いて確信した。世の中には酷い人達ばかりじゃないんだって。必ず壁を壊してくれる人が現れるんだってことを。僕の場合は人に壊してもらったパターンだけど、自分から壊しに行くっていう選択肢もあるんだ。僕は彼女たちが上辺だけの薄っぺらい言葉で話しているようには思えなかった。むしろ、こんなに友達のことを大切に思っているんだとまで感じたよ。静さんが僕の言葉をどれくらい本気にするか、どう捉えるのかは分からないけど、一度君から歩み寄って言ってもいいんじゃないかな。その行動には相当な勇気がいると思うけど、超えた先にしか幸せは訪れない、死に物狂いで掴みにいかないと恐怖に怯えたままで成長なんかしないと思う。まぁ君のお友達はいい人達だからきっと中学の時のようにはならないよ。それは僕が保証する」
やべっ!なんか我を忘れて語りすぎてしまった!!
恐る恐る凪沙のほうを向いてみると・・・
「ぜんば~~~いい!!!」
「え!?なんで泣いてるんだよ!!!」
「だって~だって~~先輩がそんなに考えてくれていたんだって思ったら我慢できなくて~~~(泣)」
「はぁ・・・・・・」
まさか泣くだなんて思ってもいなかったからめちゃくちゃ焦ってしまった。
まぁつまらなさすぎて寝ているとかではなかったため安心した。こんなに長々と語っていたのはものすごく恥ずかしいが・・・・・・
「私、乗り越えて見せます!こんなところで立ち止まっていては先には進めませんからね!先輩!ありがとうございます!」
「どういたしまして」
「なんか満足しました!今日のところはこれで切り上げます!先輩も友達のところに行ってあげてください!」
「そうか。じゃあまたな」
「はい!」
そして僕は立ち上がり歩き始めた。
歩きながら残っていた焼き鳥を食べた。
「硬った!」
もう焼き鳥は冷めきっていた。
つづく
あとがき
最後まで読んでくださった読者の皆様ありがとうございます!!
なんか久々に長々と語っているシーンをかいたような気がします。
語っている量も一番多いんじゃないでしょうか??
たまには熱く語るのもいいですよね!
では次話もお楽しみに!!
立花レイ
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