第38話 平凡な日常

静さんと運動をした日以降の僕の夏休みは家を出ることもなく平凡な日常をおくっていた。最近はものすごくHPを消費していたから、今こうして寝転がって本を読んでいることが珍しくそして、心地よく思えた。

近頃はいろいろありすぎて本を読むことすらできずに寝ていた。

けどこうして夏休みに入ってひと段落してゆっくりと気ままに生活できるのが夢のようだった。


「ふぅ~全巻読了!続きが楽しみだな~、こんな長時間本を読めたのはいつぶりだろうな」


僕はたまりにたまった本をひたすらに読んでいた。

買ったのはいいもののなかなか読めなかったから、買ってはたまっていく一方だった。それがようやく読めるということで読みまくっていた。


「もうこんな時間か、読んでると時間がたつのが早いな~もう五時間もたってるのか」


娯楽に勤しんでいるときほど時間が早く感じることはない。

もう一分が30秒くらいなんじゃないかと疑うくらいだ。

いつも学校の授業もこんな感覚で終わってくれればいいのにと何度思ったことか..

今何が欲しい?と聞かれたら確実に時間というだろう。

そのくらいたくさん読みたいし、本がたまっているといわけだ。


「とりあえず昼ごはん食べたいな...」


朝から何も食べていなかったので流石にお腹が空いた。

読んでいるときは夢中になっているためにあまりそういったことには気づかないけど読み終わったら一気に食欲が出てきた。

僕は何かを食べようとリビングに向かう


「そうか、今日は朝宮さん出かけてるのか」


今日は雪野さんと遊びに行くって言ってたな。

すっかりそんなこと忘れていた。


「てか僕はいつになったら朝宮さんを名前で呼べるようになるんだよ...」


夏祭りでの出来事


僕はまだあの時言ったことを言えずにいた。


いざとなったときに恥ずかしくて言うことができない

深く考えすぎて余計に言いづらくなってしまっているのだ。

そんなことは自業自得なのだが、最近朝宮さんのことを意識してしまう。

今までも意識してなかったわけではないけれど、それは迷惑をかけないようにしたりの配慮の部分が大きかった。

けど今は配慮する意識と同じくらい別の感情も入ってしまってせっかく慣れてきた会話も無駄に緊張してしまうのだ。この感情のせいでなかなか言い出すことができない。朝宮さんのことが好きなのか?と毎回思うが分からない。

けど


けど


確かにあの時

夏祭りの時

朝宮さんを見つけた時


僕は彼女ともっと距離を縮めたいと思ったのだ。


けどそれが本物なのかどうかが分からないんだ。




僕の心のどこかで




小さかった頃に約束したあの子がいる。


あの子が


初恋の相手がまだ片隅にいる。


あの時約束したペンダントはずっと持ち続けている。


それを思うと一歩が踏み出せない。




「クソ、考えても頭が痛くなるだけなのに......」



僕は静かにカップ麺を取り出しお湯を沸かし始めた。

今この瞬間が凄く暗く感じた。 

                      つづく


あとがき

最後まで読んでくださった読者の皆様ありがとうございます!!!

またこれからこじれた関係性と雷斗と咲奈の約束について語られるシーンを設けようと思っているのでよろしくどうぞ!!!

では!!次話でお会いしましょう!!

                          立花レイ

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