第4話 楽しいこと  (お出かけ編)

出かける日の当日、いつもと同じ時間に起きた。

いつもは学校に行くために毎朝早く起き、起きた瞬間の憂鬱さが嫌でたまらないけどやはり何かの娯楽のために朝早く起きるというのは憂鬱という概念がない。むしろ早く起きたことによって自分の時間が増えるという捉え方をし優越感に浸ることができる。魔法にでもかかったかのように...この違いが何なのかはいまいちよく分かっていないが不思議とこんな感情を抱く。

やることを済ませて集合場所に向かうため僕たちは家を出た。


集合場所につくともう久遠たちは来ていた。


「よう!早かったな!遅れてくると思ったぜ!」

「遅れるわけないだろ」

「じゃあ、いこっか!」


ショッピングモールに着いた。


「結構広いな」

「お前ここ来たの初めてか?」

「行く用もなかったしな」


出かける用事なんて本を買いに行くことくらいしかなかったし、わざわざ家から結構な距離があるところまでなんて買いになんか行かない。大体ぼっちがこんな広いところにいたら場違いにもほどがある。ここは陽キャの娯楽スポットだろ!?一人で来てたら恥ずかしいだろうが!!!


「ここ何でも揃うぞ、本屋も割と大きい」


確かにあたりを見回してみてもたくさんのジャンルのお店がある。ほんとに何でも揃えられそうだ。まさに大きいショッピングモールって感じだ。これは本屋も期待できそうだ。


「まぁ行く前ににお前のオシャレ計画が先だな」

「実際それがメインだしな」


僕たちは買い物をする前にカフェによった。


「おいしいね!この新商品!」

「うん、おいしいな」


カフェなんてカップ一杯に何百円も払うなんてバカバカしいって思っていたけどコンビニで売っているものより数倍もおいしい。このくらいのお金を出す価値はあるのかの知れない。女性が良く来そうだ。


「集合場所と時間きめとこーぜ」


久遠が口に出した。

まぁ別行動するなら決めておいたほうがいいだろう。後々めんどくさそうだしな。


「何言ってんの?一緒に買い物するに決まってんじゃん」

「は?」

「男受けとかあるでしょ!わかってないな~、大体別行動してたら一緒に来た意味ないでしょ!」

「そりゃそうだけど...」

「なんか文句ある???」

「ないですよ...」

「その代わりにそっちの服のセンス見極めてあげるから」


結局、一緒に服を選ぶことになった。


朝宮咲奈


「ねぇねぇ咲奈!これ可愛くない!」

「わぁ!可愛いね!けどこっちもいいな~」

私たちはアクセサリーショップに来ていた。

久しぶりにアクセサリーショップに来たから少し興奮した。

あの人はどういうのが好きなのかな~、あんまり興味なさそうだし...

「雷斗くんが好きなのは何かな~??」

「急にそんなこと言わないでよ...!!」

「だってそう思ってたんでしょ??(笑)」

紅葉がニヤついた顔で言ってきた。

「チャンスじゃん!今、目の前にいるんだよ?聞かなくてどうすんの?」

「うぅ......」


聞きたいけど勇気がない。簡単に聞くことができればどれだけいいことだろう。

けどできない

言葉にしたい気持ちは山々なのに踏み出すことができない。

急に聞かれて驚いたり、困惑したりしたらどうしよう...

そんなことを考えてしまう。これだからいつまでたっても距離は縮まらない。

私が逃げてばかりだから何も進展しない。

ダメだな私......


「やってみないとわかんないでしょ?成功するかもしれないし、失敗するかもしれない...結果はどうあれ挑戦するべきだと思うよ!もじもじしてたっていつまでたっても縮まんないよ?たとえ失敗したとしても何度も挑戦すればいいじゃん!重たく考えないの!」


また光が見えた。私はまた紅葉に救われた。


そうだ。失敗したからなんだ。失敗したならもう一度、いや何度でも挑戦すればいいんだ。私は重たく考えすぎていた。チャンスは何度立って訪れる!


「分かったなら行ってきな、颯は私が引き付けておくから、頑張りなよ!」


私は何度彼女に助けられるのだろう。いつか恩を返そう。


「うん!」


一ノ瀬雷斗


「アクセサリーか~俺も着けてみようかな?」

「いいんじゃないか?お前チャラいし似合うだろ」

「もっと他のいい方はなかったのかよ!?...お前も一緒に買おうぜ!お揃いとかいいな!」

「買うのは100歩譲っていいとしてもお前とお揃いだけは絶対やだな」

「そんなに嫌なのかよ!? 確かに男同士でお揃いはよく考えたらキモイな」


男同士でアクセサリーお揃いって他の何かよりも相当気持ちが悪い気がするな...いや確実に気持ちが悪いな、ホント本人がキモイということに気が付いてくれて助かった...そうでもしなきゃいろいろ丸め込まれて買いそうだしな...


「ちょっと颯!飲み物買いに行こ!」

「は?一人で買いに行って来いよ」

「いいから行くの!それと!一ノ瀬くん咲奈が呼んでたよ!」

「ちょっ!おい!離せっ!」


久遠は雪野さんに強引に連れていかれるのを横目に呼ばれている朝宮さんの方へと向かった。


「朝宮さん、何か用だった?」

「一緒に見てほしくて...!どれが似合いそうかな?」

男の人の意見が聞きたいとか言ってたな。けど何が似合うとか全然分かんない。

僕でよかったのか?久遠の方がこういうことは分かると思うんだけどな。

「何か自分の候補になっているやつはないの?」

「う~ん、迷ってるのはこれとこれかな?」


指をさしたのは黄色の花のネックレスと三日月に青色が少し混じったネックレスだった。


「僕は黄色の花のネックレスのが好きかな、あくまでも僕の意見だから参考にならないけど...決めるのは朝宮さんだからね!」

「私それにするよ!」

「ほんとにいいの??僕のことは気にいなくていいからね!?」

「これがいいの!だって雷斗くんが好きって~...」

「ん?どうした?」

「うぅん!何でもない!」

「じゃあ!買ってくるね!」


そう言ってレジに行ってしまった。

待っていたら久遠と雪野さんが戻ってきた。


「咲奈買うもの決まった?」

「今買いにレジに並んでいるとこだよ」

「そっか~よかった!よかった!」


首を上下に揺らしながら目をつぶって微笑している雪野さん。

少し不思議に思ったが聞くことはなかった。


「お待たせ!」


するとニコニコした顔で戻ってきた。

満足するものが買えたのならよかった。僕がいいといったアクセサリーを無理に買ったんじゃないかと少し不安もあったけどそんなことはなさそうで何よりだ。


「じゃあ!次は俺らだな!まぁお前だけどな」


次は僕たち(ほとんど僕)の買い物が始まった。


「結構な値段するな......」

「服はこんなもんだぞ?オシャレな奴の服はこれよりもっと高いぞ!」

「そうなのか...オシャレ恐るべし...」

「この組み合わせとか良さそうだな、これ一回試着してみてくれ」

「分かった」


僕は当然オシャレという言葉に程遠い人間なので服はすべて久遠が選んでいる。僕が選んだ服を見てセンスがないとはっきり言われて跳ね返された。

着替え終わってカーテンを開ける


「おー!似合ってるじゃん!この服装だったら外に出ても恥ずかしくないな、よし!これを買え!」

「分かったよ」


僕は拒否することもなくレジへと向かった。


たくさんのお店を回っていたら時刻は夕方をを過ぎて空は薄暗くなっていた。

こんな時間までショッピングモールにいたことがないので新鮮な感じだ。みんな満足のいく買い物ができたのか表情が笑っている。僕も服のほかにたくさんの本を買うことができた。


「買い物してたらもうこんな時間か~」

「たくさん買った~、満足だ~!」

「結局お揃いのもの買ってないしな(笑)」

「それはまた今度ってことでいいじゃん?」

「そうだね!」

「あ~たくさん歩いたし疲れたな~、せっかくのお泊りなのにすぐ寝ちゃいそうだよ~」

「確かにすぐ寝そうだな、深夜テンションの気力も残ってないかもな」

「夜ごはん買って帰ろうか!」

「だね~」


またこの様な時間があっても悪くはないと思った。そういう時のために服を買ったんだしな。

僕たちが外に出るときにはもう辺りは暗く月が見えていた。

                            つづく



あとがき

最後まで読んでくださった読者に感謝申し上げます。

まだまだ楽しいことは終わってません!次のお泊り編もお楽しみに!!

ではまた来週!!         立花レイ









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