美味いものを描写するだけが、飯テロではない。

 オレはメシテロを書く際、

「うまいものを描写する」

 だけでトドメない。


 

「食事シーンから、なにか感じ取ってもらえるか」

 まで意識する。


 というのも、だいぶ前に「王将」行ったのね。

 

 ウチは基本、ラーメンに至るまで「全部シェアする」のよ。


 座敷席を選んで、大皿で頼んで、家族で分けるの。

 から揚げもエビチリも餃子もラーメンも。

 だから、「セット物」を頼むとたいてい詰むのよ。

 腹一杯でもまだ食うものが残ってしまう。


 まあ、ウチのオカンの家系が

「大酒飲みで、食細い」

 ってもんで、自然とそういう形になったんよ。

 母方のジイさんなんて、から揚げのキャベツだけ食って

「もう腹いっぱいじゃ」

 って人だったし。


 とても、一品さえ食えない人なのね。



 ただ、テーブル席で食ってたとき、家族三人連れがオレらの横に座ったの。


 そしたら三人が三人とも違うセットを頼んでて、しかも一切シェアしない。


「そういう家族もあるんやね」

 と思った。


 彼らには、彼らなりの距離感があるのかも知れない。

 そう考えると、視野が広がったなと思った。


 昨日ゼリアでも同じように、

「違うランチセットを頼んで、シェアしない」

 夫婦を見た。


 つまり何が言いたいかと言うと、


「食いたいもの、美味しいと感じるものは、人によって違う」

 ということ。


 シェアしない家族は、激しく好き嫌いがあるかも知れない。

「自分の料理は自分の担当」という教育を受けている可能性もある。


 客のテーブルひとつひとつとっても、ドラマを嗅ぎ分けることができる。



 この点は、ドラマ版『孤独のグルメ』一期の焼き肉回が秀逸だ。

 毎回画面が切り替わるごとに生レモンサワーをおかわりする客がいるのね。


 あれは、焼き肉をとにかく描写して肉の旨さを表現なんて凡庸なことはしない。

「客の動作」で肉の旨さを物語る。


 どういうことかというと、

「生レモンサワーを数十分おきにおかわりする客」

 を出すことで、


「暑い季節」

「濃い味付け」

「店内の熱気」

「客の職業」


 をすべて表現するのだ。


 実際、その生レモンサワー男性は工事現場の作業服を着ていた。

 つまり、季節も職場も暑いのだ。


 ここまでできて、初めてメシテロ作家を語っていいと思う。


 オレは、この領域までたどり着けるやろか?

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