第20話
「なるほどな。そんな事があったのか」
ダンテ教官のトレーニングの後、私とライアン、セバスチャンはお気に入りの大木の下に座り気持ち良い風に吹かれて休んでいた。
ちょうどティータイムということもあり、ジーナとセバスチャン付きの侍女パメラが準備をしに館へ戻っているタイミングでアウルム殿下の生誕ガーデンパーティーであった事をライアンに話し終えたところだ。
「ヤキモチだな」
「やっぱりそう思う?」
「そりゃそうだろ」
薄々感じていた事をズバリ言われ、問い返した私にライアンは眉を上げた。
「今までセバスチャンがしてもらってた事をフェリックスが知らない奴にやってるのを見てヤキモチ焼いたんだな」
「知らない奴じゃなくてこの国の第一王子だけどね」
苦笑する私に、ライアンはまぁな、とつられて苦笑を浮かべるがすぐに
「しかし、第一王子を睨み付けるなんてなぁ。やるなぁ」
ニヤっと口の端を上げたライアンは今は私の片足に小さな頭を乗せてスヤスヤと眠るセバスチャンの可愛い寝顔を覗き込んだ。
「小さかったセバスチャンも一丁前にヤキモチか」
目を細めてどこか嬉しそうに言うライアン。私も一緒にセバスチャンの寝顔を見つめる。
「どんどん大きくなるなぁ」
なんだかしみじみしてしまうが、そんな事を言ってる私も見た目はまだ子ども。なんか、子どもが大人の真似をして大人ぶった事を言っているように思えてなんだか笑いが込み上げてくる。
「でもま、今だけだろ。兄さん取られちゃう~なんてヤキモチは」
と、ライアンはごろんと、セバスチャンと反対側の太ももに頭を乗せて寝転んだ。
「あ! ちょっと、動けないじゃないかー」
「どっちみちセバスチャンが起きるまで動けないだろ」
ふぁあぁ、と大きな欠伸をしてライアンは長い睫毛に縁取られた目を閉じた。
「まったく……」
呆れたように言ってみるが、この穏やかな気温に心地好く過ぎていく風は昼寝に持ってこいなのは確かだ。
「ふあぁぁぁっ…………」
思わずもれた大きな欠伸。
私は自分の太ももを枕代わりにしている黒髪と赤褐色の髪の手触りをしばらく楽しみ、もうひとつ大きな欠伸をすると手をそれぞれセバスチャンとライアンの胸の上にそっと置いた、
とくん、とくん、と掌から伝わる鼓動。それもまた心地好くて、私は瞼を閉じた。
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