閑話 鐘の音

 カーン

 カーン

 カーン


 この世界、時計はあれど人の生活に寄り添うのは鐘の音。

 

 鐘一つ。

 暗い空が淡く色付き出す時を告げる光の音。


 鐘二つ。

 お日様すっかり顔を出し、皆の背を伸ばす風の音。


 鐘三つ。

 足をしっかり踏みしめて今日を良き日にと祝福を込める土の音。


 鐘四つ。

 糧をいただく火の音は喜びと感謝を心におさめて。


 鐘五つ。

 やがて来る影への恐れを静かにそそぐ水の音。


 鐘六つ。

 身を労り宿り木へと導く響きの木の音。


 鐘七つ。

 今日の糧を捧げ、明日へと繋ぐ夜の時を安らかに越える為の闇の音。


 カーン

 カーン

 カーン


 鐘が鳴る。


 カーンと今日も鐘が鳴る。

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