第11話 楽しい晩餐

「いらっしゃいませ!」


「葵ちゃん おはよう!」


「おはようございます!

ヨーデルさん!」


「随分仕事に慣れてきたようだね!

辛くはないかい?」

(葵はサラさんの店で働きはじめて半年が経ち

13歳になっていた!)


「はい!みなさんがよくして下さって!

毎日の仕事が楽しくって!

私とても張り切っているのです!」


葵は実に嬉しそうに話すのであった


はじめてこの子にあった時は

精神的な不安定さがあり

今にも壊れそうなひび割れたガラスのような

危うさがあったが

今では見違えるように明るくなり

お店の中でも

評判がとても良いようだ!


それに良き友達ができ

彼らの存在も心の支えになっているのだろう、と

ヨーデルは感じていた!

「やはり支えが必要なんだな・・・」

意味深にヨーデルは呟いた


「ラックとアニーとデルは

よく店に来るのかい?」


「はい!私がサラさんの

おつかいで町に行く時

3人とも一緒に付いてきてくれるんです!

前に父さんとのトラブルもあって

心配してくれているようなのです!


もう一人でも大丈夫!って言うのですけど・・

ラックがまわりをキョロキョロ見渡して

怪しい人がいないか?

目を光らせてくれているのですよ!

とても頼もしいのですよ!!」


「そうなのか!あいつがな?」


「だいぶ頼もしくなってきたようだな!

(最近のラックは以前と違い

自分に対する甘えが消えたように思う

人に対して思いやりの言葉をかけ

親切に接せられるようになった事を感じていた)


「葵とラックが出会ってからあいつはだいぶ

男らしくなってきようだな!

ありがとうな!葵」


「えっ?

何がですか?」


「いやいいんだ!

葵これからもし困った事があったら

いつでも私に相談するんだぞ!いいね!」


「はい!ありがとうございます!

ヨーデルさん・・あのぉ・・・

早速なんですが

今晩お時間いただけませんか?

できたらラックとアニー デル4人一緒に!」


「今晩か・・・分かった

丁度いい 今晩村長がうちに来るのだが

お前たちも晩御飯を 一緒に食べるとしよう!」


「村長も葵のこと

気にかけているからなぁ!

お前の元気な姿を見ると

きっと喜ぶと思うんだ!」


「村長が来られる時に

お邪魔しても大丈夫なのですか?」


「勿論だよ!」

(それにあの方もお前に会いたがっていたからな)


□◆□◇◆


その晩 葵はアニーとデルと一緒に

ラックの家にお邪魔する事になった


「こんばんは!

おじゃまします!」


「葵ちゃんよく来たね!

こっちへ来て!案内するよ」

(ラックととても嬉しそうに葵とアニー

デルを客間に案内してくれた)


「オレ達は何度か

お前の家に来た事はあるが

客間に入るのは初めてだな!

何だか緊張するよ・・・」

(アニー)


「そうよね それに今晩村長さん

ご夫婦も来られるそうだから

アニー失礼のないようにね!」


「それはお前だろうが!!!

それにその恰好・・・

お前どういう服のセンスしてるのだ!」


「いいじゃない!

葵ちゃんこの服素敵よね?」


葵も少し苦笑いしながら

デルの服に目がいった


褐色の丈が短いノースリーブフレアワンピース

花柄のリボンがついている

「ヴォーガブランドはとても高いのよ!」


「デル!

とっても可愛いわよ!」


対照的に葵は

柄のないシンプルなトップス

(でも葵ちゃんの方が清楚でよく似合ってるような・・・)


4人で話をしていると

奥の居間から30代半ばの

切れ目の長い楚楚とした美しい女性が


「あなたが葵ちゃんね?」


「はじめまして

わたしは村長ガンメルの妻ルスタ

よろしくね!」


「以前からあなたの事とても気にしていたのよ!

今日会えてとても嬉しいわ!」

(少し涙ぐむルスタ)


「本当・・・どこかあの子に似てるわね

面影があるわ・・・」


ルスタは膝を屈めて葵の正面に立ち

葵の手をしっかり握りしめた


「まだ13歳なのに

こんなに苦労をかけて・・・

でも心配しないでね!

私はこれからあなたの後見人になり

葵ちゃんの面倒をみていくから!!」


「えっ?

どういう事ですか?」


「13歳の女の子は普通学校に行って

外で友達と遊んで

家族でたくさんの思い出をつくる大切な時期なの!

今サラさんのお店で

働かせてもらっていますがそれはあなたを守る為!!

そして温かい家庭にふれて

あなたが、本来のあなたに

戻るきっかけを与えたかったから!!」


「葵ちゃん分かるかな?」


「はい!」

ルスタはどこか母を思わせる

優しい眼差しで語り掛けてくれる

サラさんと同じ妖精族の加護を受けた方かしら?


「もう分かったようね?」


「えっ!・・・・・・」


「わたしはあなたの母さんの

従妹にあたる関係なの!

親戚になるのよ!

あとでゆっくりお話ししましょうね!!

奥でヨーデルさんと夫が待ってるわ!

中に入りましょう!!」


葵たちは客間に通され

そこにヨーデルと村長がおり

そしてラックの母がご馳走を用意し

待っていてくれた


「あなたが葵ちゃんね!

わたしはラックの母シオンです!」


「いつもラックと仲良く

してくれてありがとうね!

会えて嬉しいわ!」


そういうとシオンさんは

葵達を席に座らせてくれた


葵はラックとヨーデルの間で

真向いに村長が座っていた

サラさんの店で一度お会い

したことがある背の高い、恰幅の良い紳士で

ガデムの町の有力者である!


「以前、父さんの事で

辛い思いをさせたね悪かった!!」


ガデム村長は温かい眼差しを

向け葵に話しかけてくれた


「いいえそんな・・

こちらこそ私を助けてくださり

それに父さんの仕事まで

力を貸してくださり

ありがとうございます!」


「いや いいんだ!

もう少し早く 君たち親子の現状を把握していたら

君につらい思いをさせなくて済んだのだ!」


「本当にすまななかった!」

村長は本当に申し訳なさそうに

葵に謝罪をしてくれた


(村長は人格者であり

この町を支えている有力者であり

町で起こる事件や犯罪に対しても

積極的にかかわり

問題解決を図る人物だと言われている

その片腕としてラックの父である

ヨーデルは信頼されているようだ)


「君たちは私に相談があると言っていたが

その前に家内が葵達のために作った

食事を食べて家族団らんを楽しもうではないか!

私たちは家族だ!

血のつながりは関係ない!

わたしは葵を家族の一員として

これからも関わっていくつもりなのだよ!」


そういうとヨーデルは葵の皿に

ガデム村の家族料理をのせてくれた


アニーとデルも美味しそうに食べ

ラックは父の言葉に感動し

葵とより親しい関係になれたようで

感慨深い気持ちになっていた


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