第5話 妖精の涙

「いらっしゃいませ!おや?

はじめて見る子ね?

お嬢ちゃんお名前は?」


「はじめまして 葵です」


「葵ちゃんか?

よく来てくれたね!」

お店のマスターの女将サラは

とても綺麗な人で

この店一番の人気者だった


「どこか昔の私に似てるような・・・」

サラは葵の顔をじっと見つめた


葵は見つめられ 真っ赤になり

恥ずかしそうに俯いてしまった


「サラさんそんなに見つめたら注文ができないよ!

オレはワインとガラスタ料理を頼むよ!

ラックはどうする?」


「オレの前に

葵ちゃんが先さ!」


「ハハハ!

ラック葵ちゃんに惚れてるのね!」


「なっ!何言ってんだ!サラさん

葵ちゃんは・・うん・・確かに可愛いし

こんな妹がいたら最高だろうな!

と思ってはいるけど 

ほっ惚れてなんかあるわけないよ!」


ラックは顔を真っ赤にして

タジタジでかなり焦っているようだった

(こいつマジで惚れてるな(笑)


その様子をみていたサラは

「葵ちゃん 

いいボーイフレンドがいて

あなたは幸せ者ね!」


「もう!サラさん!!

からかうのは辞めてください!」

「恥ずかしいよ!!!!!」


「お姉さん注文していいですか?

わたしはデムの実のサラダをください」


「えっ?サラダ?

デムの実のサラダは美味しいけど

もっと主食をしっかり

食べないと大きくなれないわよ!」


「そうだよ!葵ちゃん

葵ちゃん言ってたよね!

食事は朝と夕一日2回で

毎日デムの実しか食べてないって!!!」


「デムの実だけですって!?」

(サラ)

驚いたサラは持っていた

盆を床に落としてしまった・・・

(そして顔つきが険しくなった)


「旦那さん!

今日 葵ちゃんに出会えて

私はすごく嬉しいの! 

だから葵ちゃんの食事は私に

ご馳走させてください!

いいですね?」


そう言うとサラは

お店の奥に消えていった


そして20分ほどしてラックとヨーデルの

注文した料理が先に運ばれてきた


「葵ちゃんは

もう少し待っててね!」


「私はサラダだけで!」

そう言いかけるが・・・


「そろそろ出来る頃ね」

そう言うと慌てて

お店の外にある大きな竈を開けた


すると店内いっぱいに

ご馳走の香りが漂い広がった


「サラさんこれって!

もしかしたらガデムの村祭りで

一年に一度しか振舞われない

ガデム地方で由緒ある伝統的なパサラ料理では!?」


サラは満面の笑みで

ご馳走を運んできた


サラは葵との出会いを

運命のように感じていたので


お店が出せる最高の料理

銀貨5枚の価値がある

パサラ料理を葵にふるまったのだ


何が高価かというと材料がとにかく高い!

肉はガデム祭りがおこなわれう前に

王都からとりよせるデムの肉(銀貨2枚)

香辛料が妖精の涙といわれる貴重な香油(銀貨3枚)


この妖精の涙はとにかく貴重で

王族でさえなかなか手に入らない

伝説の香料で、ビンの中にたった1滴しか

入っていないのに銀貨3枚もするというのだから

その貴重さは普通ではない


伝説では 寿命を2倍に延ばす効力があると伝えられている


今から2000年前

妖精族である初代巫女の涙が 数滴 後世に残された

時の権力者が 大金をはたいて購入したところ

寿命が延び 180歳まで生き

長寿を全うしたとの事


(めったに手に入らないものをどのようにして)

ヨーデルは不思議でならなかった


「おいおいサラさん!これはいくら何でも」


「いいのよ!

わたしは葵ちゃんに

幸福になってもらいたいの!」

この料理はただ材料が

高いだけではない食べた瞬間から

幸せな時間(世界)が訪れる

不思議な作用があると言い伝えがある


ただの伝説かもしれないけど妖精の涙は

異世界に繋がる鍵と

言われている伝説の香料


これまで誰も妖精が住む

異世界に行った人はいないけど

私は妖精の涙が存在する以上

異世界はあると信じられている


「今日葵ちゃんに出会って

不思議な感覚に捉えられたの!

あなたはとても可愛い子

心がとても澄んでいる

そして特別な加護があるように思える

わたしの2000年前の先祖は

大陸エデンに住んでおり

初代巫女様に仕えた妖精族と言われているのよ!」

(この妖精の涙は

預言者アブラハ様が授かった

我が一族の家宝!葵ちゃんあなたはもしかしたら)


サラはただの思いつきで

パサラ料理をふるまった訳ではない

不思議なことだが神の導きがあり行動したのだ!


葵は特別な存在なのだから


葵の前に出された

伝説のパサラ料理を目の前にして

葵は躊躇することなくスプーンを手にとり

小さな口に料理を含んだ・・・

(いつも遠慮する葵が勝手にスプーンに手をとっていた)


「不思議な味・・美味しい 」

肉料理よりこのキラキラ光る不思議な香辛料が

とてつもない存在感を放っていた!


すべてを食べ終え

葵は静かな眠りに 入ってしまった

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