第4話 労働の対価

事件が起きた 2週間後 

「葵ちゃん元気にしてるかな?」

ラックはダンの小屋周辺を散策し 

葵の姿を捜していた


葵はどこにもいない・・・

「もしかして また?」

ラックは作業小屋とデムの実の畑の

道中に葵が倒れているかも?

と心配をし必死に探し回った


「葵ちゃん!!

どこにいるの?」


「ここよ!ここいいるわラック!!」

葵はニコニコ笑顔で 

森林の中から姿を現した


「葵ちゃん!!

ここにいたのか!?」


「うん!今日は仕事が早く終わったから

散歩していたのよ」


「そうなんだ・・・」

ラックは安堵し 

葵と行動を共にすることにした


「葵ちゃん元気にしてた?」

「うん とても元気よ!」

確かに・・・

初めて合った時に比べ 

表情が明るくなったように思える


「何か良いことあったの?」

(ダンさんが優しくなったのかな?)


「うん 

とても素敵なこと」


「なに?教えてよ・・」


「内緒(笑)」


「えっ?教えてよ!」

(まぁいいか!葵ちゃんが元気なら それで十分だ)


ラックは葵が暴力を 振るわれていないかそこか?

そこが心配だった 

でも聞けない・・・

聞いてはいけないように思われた・・・


「葵ちゃん お腹空いてない?」


「えっ?

お腹は空いてないわ」

葵は細身の体で 

12歳の女の子の成長段階より

ひとまわり小さいように思える


ラックはカバンから葵の為に

用意したピクルスのサンドイッチを手渡した


「今朝母さんが作ってくれたんだけど 

葵ちゃん 良かったら食べてよ!」


「ありがとうラック 

でも・・・こんなご馳走もらえないわ・・・」


「どうして?」


「わたしの食事は朝と夕 

デムの実1個と 決まっているの・・・」


「えっ!?たったそれだけ?」

ラックはとても驚き身体を震わせた・・・


「そんなの あんまりだよ・・・」


ラックは毎食ご馳走とはいえないけど 

十分な食事が与えられており

葵がデムの実だけなんて信じられなかった・・・


「ラック 

せっかくのサンドイッチだけど 

気持ちだけで十分よ!

本当にありがとう!」


葵の笑顔に

ラックは胸が締め付けられる・・思いになった


「葵ちゃん そんなこと言わないで・・・

君の為にもってきたサンドイッチなんだ!

お願いだから食べてよ!」


ラックは必死だった!

自分の好意を受け取らない葵に対しては同情しかないが・・・

そのような生活環境にいる葵 

親としての責任能力に欠くダンに対して

激しい怒りをおぼえて 仕方がなかった


はじめて葵にあった 

その日、作業小屋前で倒れ 

意識を失っていた葵


エリーおばさんと父さんが

葵を必死に守ろうとしたが 

葵の意志は固く 

ダンとの生活を続けたいと願った

ラックはそのことがとても不思議であり 

理解ができなかった・・・


「葵ちゃん 

どうしてダンさんと生活続けたいの?」


「えっ!?

どうしてって?そんなの当たり前じゃない!

私の父さんなのよ!

一緒にいたいに決まってるじゃない!

ラックもお父さん好きでしょ?」

葵は真っ赤な顔をし どこかしら悲し気であった・・・

(何か事情があるような・・

やめよう・・これ以上葵を追い詰めたくない・・・)


ラックは葵とダンの関係性は親子といより

雇人と奴隷のような下働きという関係にしか・・・思えなかった


葵がダンとの関係を切ることを拒む理由が 理解できなかった

(あの二人の間に何があったのだろうか?)


「ラック 

あなたが持ってきてくれたサンドイッチ 

半分づつなら・・・

もらってもいい?」


「もちろんだよ!

君の為に持ってきたものだから・・・」


葵がラックからサンドイッチを受け取ろうした瞬間 

何と!ダンに発見されてしまった!


「葵 お前何やってんだ!」

ラックから受け取ろうとした

サンドイッチは地に落ち 

ダンは無理やり葵の腕を掴むと

小屋の方へ 連れていかれてしまった・・・


突然の出来事にラックは 

ダンの威圧的な行為に恐怖し固まってしまい

動けなくなってしまった・・・

そして言葉を発することができなかった・・・


「クソ!僕が子供でなく 

もう少し大人だったら・・・・

葵ちゃんを・・・守れたのに!

でもいつか!必ず葵ちゃんを守ってみせる!!

ラックは固く決心するのだった!


ダンに無理やり連れていかれた葵は 

デムの実の搬入の手伝いをさせられた

しかし親方のヨーデルの手前 

葵には優しく接しているようだったので

一安心だ・・・今日のところは


ヨーデルは ダンと葵が自分の

荷馬車にデムの実の箱を

運んでいる様子を見ていた


ラックが森林から戻ってきた


「ラック 葵ちゃんの手伝いをしてあげなさい!


「勿論だよ!父さん」

ダンはラックが手伝う事を少し嫌そうにしていたが・・・

親方の命令なので・・・


「葵ちゃん僕も手伝うよ!」

「ありがとうラック」

ラックは張り切って手伝った


デムの実の箱は全部で100

ひとつの箱には20個 かなり重い

ふたりの初めての共同作業だった


ラックは重たい箱を葵と持ち

バランスを崩しそうになり 

倒れそうになるが 必死でこらえた


普段こんな重たいデムの実を葵が

運んでいることを知り

胸が痛くなる思いであった


「葵ちゃん頑張ろう!

僕が手伝うから!」


「うん でもラックも無理しないでね!!」


2時間かけてようやく作業が終わった


「よし!いいだろう!!

ダン!これが約束の金だ」

ヨーデルは銀貨3枚をダンに渡し 

葵とラックにお駄賃として

銅貨を1枚づつ手渡してくれた


「これで町に遊びにいってきない!

いいだろダン?」


「えっ!まぁ・・・」

親方の命令に逆らえず 

渋々葵とラックが遊びに行くことを許してくれた


「葵17時までに帰ってこいよ!

分かったな!」


「はい!ありがとう 父さん」

葵はあまり気乗りしないようだったが 

ヨーデルさんの馬車で

ガデム村まで送ってくれることになった


「疲れただろう!葵ちゃん?」


「いいえ 大丈夫です!ヨーデルさん」


「葵ちゃんは町に行ったことはあるかい?」

「いいえ ないです」

葵はこれまで村から出たことがなく 

はじめての体験だった


「葵ちゃん 

オレが町を案内してあげるよ!

とっても美味しいランチが食べられる店があるんだ!」

(ラックはどうしても葵に

栄養のある食事を食べて欲しかったのだ)


「いいでしょ!父さん!!」

「ああ 勿論だ!」


「えっ そんなの悪いです。。」


「葵ちゃん 

人の好意は受けるべきだよ!

葵ちゃんは日頃から大人並みに働き 

労働をしているんだ!

働いた労働に対して対価というものがある 

葵も十分な対価を受けるべきなんだよ!」


「1時間働いて対価は幾らだと思う?

今回君の父さんに支払った報酬は銀貨3枚だ

銅貨100枚と銀貨1枚と同等 

大人が一日働いて受ける報酬は銅貨10枚が相場だ」


「1時間たと銅貨1枚ですか?」


「そうだ!

葵ちゃんは頭が良いね!」


葵が褒められて

ラックは自分のことのように嬉しかった


「さぁ着いたぞ!

今日はワシがご馳走するから

ラックも葵ちゃんも好きなもの注文して良いぞ!」


お店はとても繁盛しており

奥の間に1席だけ空いていて

そこに葵たちは案内された

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