第3話 ラックとの出会い

次の週 

今日はダンにとって特別な日だった

朝からとても機嫌が良い 

ガデム村の行商人が来る日で 

デムの実の買い取りが行われ 報酬が手に入るからだ


デムの実は リムラ村の特産品で

とても味の良い果実であり 

そのまま食べても美味しいが

煮込むと深みのある味になり

保存食としても重宝されている


行商人ヨーデルは

葵が住むリムラ村を統括する

ガデム村の村長の右腕とされる有力者

人格者であり とても厳格だが

葵の良き理解者でもあった


ヨーデルにはラックという

14歳の息子がおり 

葵と年が近い事もあり出会いが衝撃的だったので

ふたりは すぐに友達になれた


葵とラックとの出会いは 

ラックが父の仕事でリムラ村に一緒にやって来た時 

ダンの作業小屋の前で

何と!倒れている少女を発見したのだ!


ラックは酷く驚き

恐る恐る葵に駆け寄り 声をかけた


「どうしたの!!大丈夫?」

ラックが何度声をかけても 反応はなく 

まさか死んでいるのでは?と驚き

すぐに父ヨーデルを呼びにいった!


かけつけたヨーデルは 

葵を抱きかかえ

息をしている事を確認すると 

自分の荷馬車へ運び寝かせると

冷たい水に浸したタオルを葵の口元へ持っていった


「父さん この子大丈夫かな? 

まさか・・・死んでないよね!!」


「大丈夫だ!ラック 

安心しな!おそらく熱中症だと思う 

それより・・・」

ヨーデルは言いかけた事をやめた


「ラックこの子には 薬が必要なようだ 

エリーおばさんに手紙を書くので 

急ぎ 呼んできておくれ!

頼んだぞ!!!」


「うん 分かった!」

ラックは急いで荷馬車を飛び出して

エリーおばさんの家まで駆けて行った


ヨーデルは深刻な顔で呟いた


「ダンの奴め!

何てことを!!!


葵ちゃん!葵ちゃん!大丈夫かい!?」

ヨーデルは急いで葵を荷馬車に乗せると

エリーおばさんの家に向かった


葵はうっすらと目をあけると

エリーおばさんの顔が・・・


(ここは?)

葵はエリーおばさんの

ベットで横になっていた


そしてすぐ側で罵倒する声が!


「ダン!

貴様なんて事をしたのだ!

葵ちゃんはまだ12歳なのだぞ!

こんな幼い子に重労働をさせ 

栄養失調と脱水で死にかけていたのだぞ!

この間も注意した筈だ!

それをまた・・お前は・・・」


「旦那様 申し訳ありません 

私も気をつけていたのですが 

コイツ私に何も話さないもので・・・」


「お前を恐れているからだろう!

そんな事も分からないのか!?」


その様子を見ていたエリーおばさんは思わず叫んだ!

「旦那!

葵ちゃんは私が引取るわ!

この男に父親の資格はないよ!!」


「葵ちゃんは

アンタの奴隷じゃないのよ!

どうしてもっと優しく接してあげられないの?」

(血が繋がっていないからといって・・

これでは葵ちゃんが可哀すぎるよ!)


「葵ちゃん 私と一緒にここで暮らしましょう!

私があなたの面倒を見るわ!

大切にすると約束する!

あなたに苦労はさせない!

あなたに沢山の愛情を注いであげるから!」

エリーおばさんは葵を抱きしめ

涙ながらに葵に訴えた!


「待っておばさん(ラックが口を挟む)父さん・・・

葵ちゃん僕達と一緒に暮らせないかな?

家族になって欲しい!

お願い!父さん!!!!」

ラックは必至だった


「そうだな・・・

父親とは距離を置いた方がいいかも・・・」

(その方がこの子の為になるかも)

葵はまわりの大人たちの会話を聞き 

俯いていて話を聞いていたが・・


「わたしは・・・父さんと一緒にいたい!」


「えっ!?」

エリーおばさん ラック ヨーデル

 みんな声を合わせて驚きの声をあげた!


「ダメだよ!葵ちゃん

このままダンさんといたら

いつか命が・・・」

ラックは涙ながらに必死に葵を説得しようとした!


ラックは14歳の男の子だが

事の深刻さは分かっているようだった


しばらく話し合いがなされたが・・結局

葵の思いを尊重する事になった


「いいかダン!

今度葵ちゃんに手をかけたら 赦さないからな!

お前との商売の取引きも終わりにする!

仕事を失う事になるから覚悟しておけよ!!

分かったな!!」


「ハイ・・・・」

(くそ!葵の奴め・・・

何でオレが責められなくてはいけないんだ!

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