第3話

受験者達は均等に3つのグループに分けられていく。

そしてその3つのグループはそれぞれ筆記試験、クレペリン検査、体力測定の試験を受けて、それが終わった者から再び別の試験へと均等に振り分けられていき、3つ全てが終わった者から面接という流れのようだ。

龍一は筆記試験から受けたいと思っていたが、残念ながら最初に受ける試験は体力測定のようだ。


(疲れた状態で筆記は受けたく無かったんだけどなぁ……)


理想的な順番はクレペリン、筆記、体力測定の順だろう。

あくまでも理想で現実はそうはならなかったが……。


「では、まずは服を脱いでください。」

「はい?」


体力測定の列が進み龍一の番になってすぐ、係の人にそう言われて龍一は固まってしまった。

なぜ服を? もしかして下もなのか? といった疑問が頭を埋め尽くす。

14歳という発展途上の体、更には小柄な体躯という事もあって龍一は素肌を晒すことに対して普通の人よりも羞恥心が強い。

なので、今回の試験で脱ぐ必要があると言われて激しく動揺している。


「あ、上だけでいいですよ。服を脱ぎ終わったらこちらのシールを胸と腕に貼らせていただきます。こちらのシールは心拍数と肺活量、神経の活動を測定する為の物なので体に害はありません。」

「えっと、その……。」

「どうしましたか? 何かご質問でも?」

「い、いえ……。」


意味もなく脱げと言っているわけではないので、抵抗した所で無意味と悟ったのか、龍一は意を決して服を脱いだ。

病的なまでに色白という事はないが、文明がある程度発達している為に屋外に出る事も少なくなっており、その結果日に焼けている部分もなく白い。

健康的な白さという奴だ。

その白さに、童顔女顔、小柄な体躯と合わさって妙な色気が出ている。

胸元隠さないで。

係の女性頬真っ赤にしてるから。

なんかちょっと呼吸も乱れてるから。


体力測定自体は割と真面目……というよりも結構ハードな内容のようで、龍一は早くも胸元を隠すような余裕は無くなっていて、必死な形相でメニューをこなしていく。


メニューの例をいくつか挙げるとするならば、例えば腕立て伏せ、上体起こし、スクワットの基本筋トレメニューをこれ以上無理という所までやるとか。

例えばこれ以上走れないという段階までのランニングマシンとか。

例えばどの程度の重さまで引っ張ることが出来るかといった肉体の限界値を測定するものや、反復横跳びや垂直跳びといった瞬発力を調べるもの、あるいは動体視力や反射神経を調べるものなど多岐にわたる。

全部が全部キツイものでは無いが、既にいくつもこなしている為に恥ずかしいだなどと言っていられる状態ではない。


それらが終われば次はクレペリン検査。

簡単な計算問題をひたすらにやっていくというアレだ。

計算問題自体は小学1年生でも出来る簡単な物なのだが、体力測定で曲者だ。

肉体的疲労で集中するのが難しくなっていて、せめて筆記試験が先ならと思わなくもないがこればっかりは龍一にはどうすることも出来ない。


最後の筆記試験は受験者の年齢がバラバラな上に、学校に通っていた時期によって教える内容が変わる事もあるし、教科書によっても微妙に内容が変わったりもするからなのか、筆記試験と言われて真っ先に思い浮かべるような物ではなく、一般常識や道徳問題、地頭の良さを測る為なのか謎解きやひっかけ問題なんかが試験内容となっている。

試験時間が80分というのも地味に厭らしい。

中学生である龍一にとってはそれだけの時間試験を受けるなんて経験は無いので集中力が途切れそうになる。


そうして3つ全ての試験を終えて隆一は最後の面接へと臨む。


体力測定は体格的にも年齢的にもそれ程高いというものではなく、クレペリン検査も前に受けた体力測定の影響で振るわず、3つ目の筆記試験も慣れない時間設定に四苦八苦してとてもいい成績だとは言えないだろう。

ここしかない。

龍一にはもう面接しか受かる希望はないだろう。

少なくとも、龍一はそれを自覚しており、必要以上に気負っている。

その気負いが吉と出るか凶と出るか……。

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