第2話
新型VR技術を使った新作ゲームのベータテスター試験会場。
そこに1人の少年が現れる。
彼の名は青野龍一。
ごく普通の一般家庭に生まれたごく普通の少年。
彼は期待の新技術に新ゲームというワードに飛びつき、ゲームのベータテスターに応募をし今に至る。
普通のゲームであれば当選倍率を勝ち抜けさえすれば参加出来るが、今回の場合は新技術であるし、その仕様上の問題もありこうして試験が設けられた。
「うわっ……めっちゃ人居る……」
試験会場は全国に幾つもあり、龍一が居るこの場所もその1つでしかない。
しかし、この場所にも千人規模の人が集まって来ており、そこから選ばれるベータテスターは5人までという狭き門である。
「ん? あ、あそこに居るのは林じゃないか……マジか、あいつも居るのかよ……」
龍一が見つけた林というのは彼の通う中学校でとても有名な生徒である。
簡単に言えばモテる男だ。
顔が良くてスポーツが出来る。
彼が所属するサッカー部は彼のワンマンチームだが、それでも県大会に出るくらいには勝ち進めている。
彼の力によって。
何かに秀でている人間はそれだけで魅力があり、その上で容姿が優れているのだから当然モテる。
それに対して龍一だが、名前は龍一という勇ましさがあるものの実態は小柄で童顔女顔。
特に何かに秀でているわけではない普通の生徒だ。
なので当然モテない。
「あいつには負けたくない。絶対にベータテスターになってやる」
そうして決意を新たにした所で試験開始のアナウンスが流れる。
『ご来場の皆様。本日はお集まりいただきありがとうございます。これより新作VR技術及び新作ゲーム【GEARS】のベータテスター試験を開始します。まずは前方のスクリーンをご覧下さい』
アナウンスに従い、会場に集まった人々がスクリーンを見るとそこには記者会見にも出ていた企画開発を担当した男、葛城劉水が現れ、試験に関しての説明を始めた。
『さて、では試験の内容を説明しようか。
今回の試験は新作ゲームである【GEARS】のベータテスターを決めるためのものだ。
そこでまずは改めて【GEARS】について説明していこう。
この【GEARS】はプレイヤーが頭、右腕、左腕、胴体、右足、左足の6箇所にギアと呼ばれる武装を装備して戦うものでジャンルはVRアクションゲームになるかな。
そのギアの種類によって、近接戦闘に特化したり、遠距離戦闘に特化したり、はたまた空を飛んだり、高速移動したりといった様々なスタイルで戦うといった家庭用ゲーム機で行ってきた戦闘を自分で行えるものとなっている。
ただ、飛行技能に関しては現在製作途中という事で、その辺のデータ取りなんかもベータテスターには期待していたりするがね。
それじゃあ次は今日の本命、ベータテスター試験についての説明をさせてもらうよ。
試験は4つ。
簡単な筆記試験、クレペリン検査、体力測定、そして最後に面接だ。
ただ、これはあくまでも参加者の能力や人格を見るのが目的だからね。
好成績を出したからと言って必ずしも受かるわけじゃないという事を先に伝えておくよ。
あくまでも求めてるのはベータテスターだから、それに合わせて様々なタイプの人材が欲しいんだよ。
あ、もちろん性格に難があるような人ならそれだけで除外させてもらうけどね。
例えば、体力測定で一位なんだから俺の合格は確実だな! なんて考えて後の試験をいい加減にしたりするような人とかさ。
この試験はただベータテスターを決めるだけではなく、今後のVR技術の発展に繋がる重要なものだと理解して臨んで欲しい。
では、試験を開始する。
試験に関してはアナウンスや係員の指示に従って行動してくれ。
それじゃあ、健闘を祈っているよ。』
葛城劉水の説明が終わると再びアナウンスが流れ始め、参加者を試験会場へと誘導し始める。
龍一もその流れに身を任せて試験会場へと向かう。
(何か特技があるわけじゃなかったけど、これならなんとかなるかもしれない。絶対に、受かってみせる!)
移動の最中に、そう、深く思いながら。
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