GEARS

椎茸大使

第1話

時は2042年。

技術はより進歩してより便利な世の中になっていた。

そんな中、ある技術に対して一石を投じられる出来事が起こった。


『これまでにおけるVRとは専用のゴーグルやVR用映像を携帯端末で流しつつ特殊なゴーグルで試聴したりというものだった。

そのVRも時代の流れとともに世の中に普及していき、今では一家に一台のVRゴーグルと言われている。

しかしここで1つ疑問に思って欲しい。

果たしてあなたが持っているそれは本当にVR……すなわち仮想現実、ヴァーチャルリアリティーなのかということを。

仮想現実と言いつつもそこにあるのはただの映像を見れるだけの機械だ。

特殊なカメラや編集によってより現実感のある映像となってはいても所詮は映像だ。

もう1度問おう。

それは本当にVRかと。


今、私が皆様に紹介したいのはそのVRに関してです。

これまでのものとは一線を画す、ドラマや映画で見たようなVRをついに実現したのです!

それがこのVRポッドです。

このVRポッドはこちらの専用VRスーツを着用して中に入り、中にある各種センサー器具とVRスーツと接続し、最後にヘルメットとマスクを装着した後内部を専用液で満たした後起動します。

すると視覚、聴覚はヘルメットから嗅覚はマスクから、触覚はヘルメット、マスク、VRスーツから出力されあたかも実際に体験しているかのように感じることが出来るのです』

『あの、質問いいですか?』

『どうぞ』

『では、先程ドラマや映画のようなと仰いましたが、説明を聞く限り確かにすごい技術だとは思いますがドラマや映画に出てくるものとは違うように思うのですが、その辺の違いに理由はあるのでしょうか?』

『つまり、これまでの延長線上でしかなくドラマや映画のようなは言い過ぎだと、そう仰りたいのですね?』

『端的に言えばそうなります』

『それについてですが、確かに当初はそのタイプも案の1つに存在しました。

ですが、脳波や神経に干渉する機械が本当に安全なのか? という疑問が浮上した事によってこの案は破棄されました。


考えてもみてください。

各種五感を刺激されているのだと錯覚するほどの情報量を常に人間の脳や神経に出力され続けているのですよ?

それがどれほど脳や神経に負荷をかけるのか、想像に難くはないでしょう。

それに、その刺激によって精神にどう影響するのか検討もつきません。

また、仮想世界内での出来事が実際に起こったと錯覚し肉体にどのような影響が出るかも分かりませんし、脳波、神経に干渉するという事は、外部からその人間を操作、支配する事も出来るのではないか、という懸念もあります。

そんな危険なものを1企業が開発するなんてとてもじゃないけど出来ませんよ。


それに、技術的、資金的問題も存在します。

まず、技術的ですが、精神、脳、神経に干渉する事自体かなり困難です。

それらを研究するのに人体実験をするのも倫理的、道徳的に考えても問題がありますし、個人的にもそういう行いはやりたくないですからね。

次に資金面ですが、VRの舞台となるワールドの作成にVRスーツ装着者の五感に与える刺激のデータ作成、装着者に刺激を与えつつ装着者の動きを人が知覚できないレベルにまでタイムラグを無くしたりといった様々な研究が行われました。

それだけでもかなりの額になったんですが、それ以上にかかったのがVRシステムを管理維持するスーパーコンピュータですね。

購入と維持をするだけで予算の半分以上を持っていかれましたから。』

『成る程。

確かに言われてみれば納得の理由です』

『他に質問のある方は居ますか?』

『では、私が』

『どうぞ』


この後も質問やVRに関する説明などが行われた。

その発表から半年。

このVRによる新作ゲームのベータテスターが募集される事で物語が始まる。

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