② 瓦礫の中から顔が出た
いつの間にか、会場内には白い霧が漂っていた。
霧の中に浮かぶ黒い巨大な影──霧の中から、鉄板製のママエプロンをして体の左右が赤と白のツートンカラーをした、ドクロ顔の巨大ロボットが現れた。
頭の左右にお好み焼きのおこし金〔コテ・テコ・ヘラ〕をくっつけた、亜区野組織【ロボット軍団機械友・スカルオカンW2】の肩には、亜区野組織の女性幹部【ロボット使いのデスミント】が防毒マスクを被り、電磁ムチを持って立っていた。
デスミントが電磁ムチの柄を前方に向けて言った。
「妨害せよ」
デスミントの指示を受けたスカルオカンが、頭から外したおこし金を手に持つ。
《紅白のおめでたい日に、ごめんなさいね、ごめんなさいね》
ドクロの口から笑いガスを出しながら、スカルオカンW2がおこし金で研究所の建物を切断する。
《これも仕事だから、ごめんなさいね、ごめんなさいね》
瓦礫に埋もれていく、うつ伏せ状態の正義ロボット。
笑いながら新橋博士が頭を抱える。
「ひひひひっ、やめてくれぇ!! あっははひゃはははははぁぁ」
ビネガロンが完全に瓦礫に埋もれると、霧に包まれたスカルオカンW2はデスミントと一緒に去り。
同時に格納庫で廃棄処分が決定していた、メタルグリーンの巨大ロボット──亜区野組織でビネガロンの姉ロボ機械友【緑嬢ライム】と命名されるコトになるロボットも姿を消していた。
スカルオカンの襲撃から二時間後……奇跡的に負傷者ゼロの研究所があった瓦礫の山で、スコップを手に笑いながらビネガロンを掘り起こしている新橋博士の姿があった。
「ひひひひっ、ふざけやがって。亜区野組織め、ふざけやがって……ひゃはははははははっ」
強欲さゆえに無意識に人の倍の笑いガスを吸い込んでしまい、ガスの影響が体に残っている新橋博士は涙目で笑いながら瓦礫を一人で除去していた。
「ひひひひっ……パイロットさえいれば、三人のパイロットさえいれば、ビネガロンで反撃できたのに……ひひひゃはぁ」
研究所を失った新橋博士の脳裏に、研究所建設中に敷地内に無断で、ちょくちょく侵入してきて林で秘密基地なるモノを作っていた小学生たちの存在が浮かんだ。
小学生たちから、敷地の一部を使わせてやる代わりに。小遣い程度の金を毎月徴収していたが。
(ひゃひはぁ……あいつら中学生になったら急に、秘密基地の興味が薄れて来なくなったな。
まだ、秘密基地が残っていたら儂が利用させてもらおう、ひひひひっ)
そんなコトを考えながら作業をしていた新橋博士の目に、離れた場所で瓦礫を退けている作業服姿の巨漢男が映る──清掃職員の山吹だった。
「おおっ、君もビネガロンの発掘を手伝ってくれるのか……ひゃはははひゃはぁっ」
「いや、オレは未開封フィギュアが入った、自分のロッカーを探しに」
新橋博士と山吹が会話をしているところに、今度はメイド服姿の東雲がやって来て言った。
「あのぅ、うちのバイト代……どうなっていますか?」
「おぉ、君も研究所再建のために来てくれたのか。ひゃはぁ」
「いや、うちはバイト代もらいに来ただけで」
新橋博士、山吹、東雲の三人がいるところに。
今度は制服姿の国防が野次馬根性でヒョッコリ現れた。
「おっ、なんか集まっている……なんだ、なんだ」
大きめの瓦礫に腰かけた国防は、持参した缶ビールを飲みながら見学している。
見ているだけの国防に新橋博士が言った。
「見学するなら金を出せ!! まったく、三人目は野次馬か──ん? 三人?」
新橋博士の表情が明るく輝く。
「パイロットが三人集まった! いける! いけるぞ!」
山吹、東雲、国防の三人は新橋博士の三人のパイロットという言葉を全力で否定する。
「オレはフィギュアを探しに来ただけで!」
「うちのバイト代!」
「見学者のオレは関係ないだろう!」
瓦礫の山で新橋博士の哄笑が響き渡った。
回想話しを交えながら、DVDを観終わった国防が椅子から立ち上がって言った。
「ビネガロンを迎えに行ってやるか……ビネマシンが無かったら、オレたち失業だもんな」
国防の脳裏には、埋もれたビネガロンを掘り起こした時、なぜか頭部だけが胴体から外れていて掘り進めるほどに瓦礫の中から巨大ロボットの頭が転がって出現した光景を思い出していた。
とある田舎に、国防たちは公共交通を乗り継いでやってきた。
バス亭の前で村営バスから降りた国防たち三人は、農業雑誌に写っている風景を指差して納得する。
「あの山だよな、ビネガロンの背中越しに写っていた山は」
「だな……それにしてもなーんにもない村だな」
国防たちがそんな会話をしていると、バス亭近くの道祖神を祀った小さな祠の後ろで小動物たちの会話が聞こえてきた。
「この村で間違いないはずでチュ、この村のどこかで初代銀河探偵ザ・ステンと宇宙怪人の戦闘が行われ。
出撃した『戦闘空間発生マシン恒河沙〔ごうがしゃ〕』が戦闘空間を発生させた時にレアメタルを含んだ部品が、恒河沙の体から飛び散ったでチュ。
その飛び散ったレアメタルを利用して人間の心を腐らせるでチュ」
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