生前のエトセトラ

 時は戻って、約二年前。

 ユウトとアヤナがこの世界にやってくる前のこと。


 日本のような日本ではない場所。

 とある学校の教室での昼休み。


 生前のユウト=キリオカとアヤナ=キタシロは、隣の席で、昼食を取っていた。


 アヤナが言う。

「キリオカって、ボッチなの? いつもお昼はひとりだよね?」


 ユウトが返す。

「うんボッチだよ。昼飯くらい静かに食べたい」


 アヤナが言う。

「そのわりに友達多いじゃん」


 ユウトが返す。

「うん、普通に友達はいるね」


 アヤナが言う。

「それってボッチじゃないよね?」


 ユウトが返す。

「うんボッチじゃないね」


 アヤナが言う。

「で、キリオカって、ボッチなの?」


 ユウトが返す。

「ループしたよね? この話って重要?」


 アヤナが言う。

「いあ、なんとなく、話の流れで……」


 ユウトが返す。

「で、何?」


 アヤナが言う。

「キリオカってネトゲする?」


 ユウトが返す。

「うん『インフィニット・フューリー』ってのやってる。

 もしかして、キタシロもネトゲやるの?」


 アヤナが言う。

「うん、別のやってるよ、『X/ファンタジー』」


 ユウトが返す。

「まじで?

 『X/ファンタジー』か、興味あったんだよねー。

 『インフィニット・フューリー』はマンネリ気味で引退寸前だったしさ、面白い?」


 アヤナが言う。

「うん、私、始めたばかりだから参考にならないかもだけどね」


 ユウトが返す。

「いいなぁ、招待コード送ってよ。

 俺もやりたい。一緒にやらない?」


 アヤナが言う。

「ほんとに? でも、私、ボッチプレイで全然進んでないよ?」


 ユウトが返す。

「ならちょうどいいじゃん、一緒に進めよ?」


 アヤナが言う。

「いいの?」


 ユウトが返す。

「うん」


 アヤナが言う。

「んー、でも、どうしようかな……」


 ユウトが返す。

「なんか問題あるの?」


 アヤナが言う。

「いあ、私、男キャラ使ってるからちょっと恥ずかしいんだよね……」


 ユウトが返す。

「いいじゃん別に。ネトゲなら普通だよ?」


 アヤナが言う。

「ほんと? じゃ、キリオカさ、女性キャラにしてくれない?」


 ユウトが返す。

「うん。いいよ。ネト充カップルっぽくていいね」


 アヤナが言う。

「あとさ、雰囲気壊すから、チャットはロールプレイで女子やってくれる?

 私は男子やるから」


 ユウトが返す。

「問題なし。女性キャラ使う時は中性的な感じでチャットしてるしね。イメージ壊れるの嫌なんだ」


 アヤナが言う。

「わかってるねー。楽しみ、じゃメアド交換しよ? 電話番号もいい?」


 ユウトが返す。

「てか、俺、女子と普通にメアドと電話番号交換してるよ。

 リア充ぽくていいね?」


 アヤナが言う。

「いきなり恥ずかしいこといわないでよ、気にしちゃうじゃん」


 ユウトが返す。

「ごめんごめん、でもよろしくね。俺、いつでもOKだからメッセージ頂戴ね?

 まじでまってるから、寝ないでまってるから、絶対だよ?」


 アヤナが言う。

「重いよ! でも、帰ったら絶対連絡するから、本気だよ?」


 ユウトが返す。

「うん、了解。

 でもなんて名前にしよかな?

 アリシア? マリッサ? んー」


 アヤナが言う。

「……アヤネ=ニシグロにしてくれない?」


 ユウトが返す。

「邦人系か名前とれるかな? わかった、取れたらそれにする」


 アヤナが言う。

「ありがと」


 ユウトが返す。

「キタシロはどんなキャラ名?」


 アヤナが言う。

「私は、ユウキ=キタヤマ」


 ユウトが返す。

「ふーん、ジョブはなに?」


 アヤナが言う。

「よくわからないけど前衛職してる。盾持って剣ふるの」


 ユウトが返す。

「ほんとにざっくりだね……」


 アヤナが言う。

「うん、始めたばっかりだしね。スキル回しとか教えてよ」


 ユウトが返す。

「いいよ、って俺も初心者だけどね。

 なら、俺は後衛職やるか。

 ヒーラーするよ。ネト充カップルっぽいしな」


 アヤナが言う。

「回復職やってくれるの? マジ助かる」


 ユウトが返す。

「まかせて、忘れずに招待コードおくってね」


 アヤナが言う。

「わかった。夜が楽しみ。連絡するね」


 ユウトが返す。

「俺も楽しみにしてるね」


 アヤナが言う。

「ちゃんとチャットでは女子やってよ?」


 ユウトが返す。

「うん、わかったよ、うまくできるかわからないけど頑張る。

 おかしなところがあったら、指摘して。

 リアル女子にネカマ講習受けられるチャンスは滅多にないし」


 アヤナが言う。

「キリオカってさ、女の子になりたかった感じ?」


 ユウトが返す。

「いあ、可愛いキャラが男言葉話すのがちょっと苦手なだけ。

 それにさ、画面みてて、ムサイ男が表示されてるより、自キャラは可愛い女の子の方が楽しくない?」


 アヤナが言う。

「そっか、よくわかんないけど、わかった。

 私も似たようなものだし」



 ……



 その夜、二人は、連絡を取り合って、ゲームにログインする。

 アヤナはユウキ、ユウトは、アヤネというキャラ名だ。

 

 ユウキが発言する。

「ありがとね、ボクといっしょにゲームやってくれて」


 アヤネが発言する。

「いいよ、私もやってみたかったし」


 ユウキが発言する。

「そうだ、これお礼、受け取ってくれる?」


 ユウキは、アヤネにトレードを申請した。


 アヤネが発言する。

「これって、課金アイテムじゃん。

 いいの?」


 ユウキが発言する。

「うん、この指輪のアバターを装備しておくと、相手の位置へテレポートできるから便利でしょ?」


 アヤネが発言する。

「ありがと。てかこれ、婚約指輪だよね? 私、勘違いしちゃうからこういうサプライズやめてね?」


 ユウキが発言する。

「ま、ゲームだし、気にしないで、便利さ優先だからさ」


 アヤネが発言する。

「わかったありがと。あ、そうか、ウェディングドレスとかもついてるのか。すごいね。なんか課金させちゃって、ごめんね、ほんとありがとね」


 ユウキが発言する。

「あのさ、教会に行ってスクリーンショット取らない?」


 アヤネが発言する。

「うん、いいよ。女子はそう言うの好きそうだね」


 ユウキが発言する。

「今は、ボクが男子だから」


 アヤネが発言する。

「わかってるー、私が女子だよね」


 二人は、教会に移動して、タキシードとウェディングドレスのアバターを装着する。


 ユウキが発言する。

「わーい、彼女ができちゃった」


 アヤネが発言する。

「あはは、彼女を通り越して奥さんだからね?」


 ユウキが発言する。

「そうだね、ボクはアヤネの旦那さんだったね」


 アヤネが発言する。

「スクショとった?」


 ユウキが発言する。

「もうちょっと、向き変えて」


 アヤネが発言する。

「こう?」


 ユウキが発言する。

「うん、OKありがと楽しかった。

 狩りいこっか?」


 アヤネが発言する。

「了解。ユウキ、PTさそって」


 ユウキが発言する。

「誘ったよアヤネ」


 

 二人は、夜明けまで狩りを楽しんだ。



 ……



 翌日の昼休み。


 ユウトが、眠そうに昼食を取っていた。


 ユウトがアヤナに話しかける。

「ごめん、夢中になりすぎた、マジごめん」


 アヤナが返す。

「全然OKだよ。すごーく楽しかった。

 週末は引きこもり?」


 ユウトが言う。

「うん、そのつもり、Lvあげする」


 アヤナが返す。

「なら私も付き合うよ、メッセージ頂戴?」


 ユウトが言う。

「いいの? 結構やりこむよ?」


 アヤナが返す。

「自分の奥さんに負けるのはやだから私も頑張る」


 ユウトが言う。

「おー、いいね。さすが旦那様。

 ゲーム内だとマジでイケメンだよね?

 ロールプレイうまいよね」


 アヤナが返す。

「キリオカはちょっとあざといかな。

 男子ってバレるよそれだと。

 まぁ、微妙なかんじだから、都度指摘してあげる」


 ユウトが言う。

「それは助かる、今夜もINする?」


 アヤナが返す。

「うん、メッセージ送るね。

 一緒に狩りしよ。

 抜け駆けはだめだよ」


 ユウトが言う。

「わかった。まってる」

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