変化
天界。
女神達が話し合っていた。
「例の交換した男女の状況はどうなっていますか?」
「想像以上に良い状況で堅調に営んでいます」
「いままで全く考慮していませんでしたが、今後は、交換した場合の因果律も確認すべきですね」
「はい。それと、公平性の考慮も大事かと思われます」
「そうですね、最適解の算出方法に正式に修正を加えることにしましょう。
しかしゴエティアの魔族の社会は戦時下にあってもとても堅調で好感が持てますね。
今後も、ゴエティアへの転移は、魔族にしておきましょう。
それに引き換え、ゴエティアのヒューマンの社会はとても陰惨で荒んでいますね。
ここまで生命の幸福度が異なると、女神として手を下す必要があるように思われますがいかがでしょう?」
「多様性の許容範囲に差があるためと考えられます。
種族差別の差と相関が見られるようです。
ならば、他種族主義を煽動する使徒を、マーサス大陸へ送り込んでみましょうか?」
「内乱ですか。痛みを伴いますが、現状の閉塞状態を鑑みると、仕方のないことかもしれませんね。
介入による因果律の最適解を検討してみてください。
それから、クロウリー大陸の巨人族の動向が気になりますね。
その後、なにか進展はありましたか?」
「巨人族は、アレイスター大陸を失敗兵器の処分場として見ているようですね。
現在は大陸間弾道ギガントゴーレムなる制御不能の
「相変わらず、巨人族には困ったものですね。
主要都市の守護魔人や守護天使ならば撃破できるものなのでしょうか?」
「いえ、今回ばかりは撃破は難しいようです。撃退はできるレベルのようですが……」
「それだと、いずれ都市の魔力が枯渇してしまいますね。
最悪の場合に備えて、グレイプニルの用意をしておきましょう。
巨人族に神罰を下したいところですが、規則上、難しいですね。
各地の冒険者ギルドには、十分警戒するよう、使徒を通じて伝えておきましょう」
「わかりました、手配しておきます」
……
サキュバス組合は、精力処理や美容目的の女性向けの高級総合サロンを開業させ、冒険者ギルドでの無料サービスは銅等級以下の冒険者までしか利用できないように変更した。
ギルドの施術室では、アラクネの女冒険者、ジュリアが気持ちよさそうに施術の余韻を楽しんでした。
アヤナがいう。
「お疲れ様でした。
いつもよりたくさん採取できましたよ」
ジュリアが言う。
「やっぱりかー。
個室って最高だね。
すごく快適。
気兼ねなくアヤナの施術を堪能できる。
先輩達は早速サロン通いしてくれてるし、サキュバス組合には感謝しかないわ。
アヤナはミラさんみたいにサロンにはお手伝にいかないの?」
「ミラさんは特例ですよ。大御所の女性冒険者達から苦情が殺到して、他の施術師に慣れるまでということで、短期的に施術指導に行っているんですよ」
「クロエさんが苦情入れてたって聞いたけど?」
「クロエさんはサロンの施術にすぐ慣れたらしいです。
早速、お気に入りもできたそうですよ」
「そうなんだ。じゃ、かなり負担は減ったの?」
「実はそうでもないのです。
今まで敬遠されていた方からの新規の需要が徐々に増えてきていますね。
中堅の先輩枠を気にして利用を遠慮されていた層です。
ところで、サロンには行かれましたか?」
「うん。半額券つかって試しに1度だけね。
雰囲気も技術もすごくよかったけど、銀等級以上にでもならないと通うのは無理ね。アヤナの施術が無料で受けられる考えちゃうと、かなり高額だもの」
「でも、男性向けのそれよりは、かなり良心的な価格らしいですよ?」
「本当?
男性って、早い人だと、水晶等級くらいから通い出すのでしょ?
頻度だって女性よりかなり多いらしいし。
男って大変と言うか、なんというか……バカね」
「うふふ、そうですね。
そういうお店は、お酒代もかなり高めに設定されていますしね」
アヤナが、1Fでジュリアを見送っていると、初々しい一組の魔人とダークエルフのカップルがエントランスホールで立ち尽くしていた。
アヤナが優しく話しかける。
「こんにちは。もしかして初めての方ですか?」
魔人の青年が言う。
「はい、そうです! あた……ボク達初めてなんですけど、どうしたら良いですか?」
アヤナが言う。
「もしかして、転移者さまですか?」
魔人の青年が言う。
「はい! そうなんです、因果律の最適解がどうとかで、何故か体を交換されてしまって……」
アヤナがにっこり微笑みながら言う。
「大丈夫ですよ、私もそうでしたから。こちらへどうぞ、冒険者登録を済ませましょうね」
魔人の青年が言う。
「え!? お姉さんもそうだったのですか? うそ!? すごく……素敵ですね」
アヤナが言う。
「ありがと。冒険者証と取説を用意しておいてね。文字は読める?」
魔人の青年が言う。
「はい、あた……ボクは読めます。でも、連れは読めないです」
アヤナが言う。
「そっか。じゃ彼氏くんがしっかりしないとね」
アヤナは二人をエリンのところに案内する。
「エリンちゃん、この二人、お願いできる?
異界から転移してきたばかりなんだって。
彼女さんは文字が読み書きできないみたい、ダークエルフの常識も、女の子の常識もわからないみたいだから面倒みてあげてくれる?
お化粧のやり方も教えてあげた方がいいよ。
取説があるからそれみてアドバイスしてあげてくれる?」
エリンが言う。
「了解。そうなんだ、初々しいね。お姉さんは嬉しいよ。
アヤナちゃんは、お客さんよろしくね。
団体さん4人組。もう待機済み。みんな初見さん」
アヤナが言う。
「わかった。いってくる」
アヤナは施術室に向かう。
4人ともダークエルフの中級冒険者だった。
アヤナが言う。
「お待たせしました。ジェシカさん、ケイトさん、リリーさん、シエラさん。
準備はよろしいですか?」
シエラが答える。
「はい、でも初めてなのでちょっと心配です。
これで大丈夫ですか?」
アヤナは4人の状態を確認する。
アヤナが言う。
「問題ありません。緊張なさらず、リラックスしてくださいね。
痛みは全くありませんからご安心を。
声を出したいときは、恥ずかしがらずに出した方がより気持ちよくなりますよ。
4人まとめて施術しますので30〜40分ほどかかると思ってくださいね」
ジェシカが答える。
「わかりました、よろしくお願いします」
シエラとケイトとリリーが答える。
「「「よろしくお願いします」」」
アヤナが交互に施術を行う。
「うぅ……あぁ……ふぅ………あぁん………」
「……あぁ……うぅ………あぁ………ふぅ」
「うぁ……あぅ……ぅぅ………ぁん………」
「ひぅ……うぁ………あぁん………うぅ」
40分ほどかけて施術を終える。
「お疲れ様でした、施術がおわしました。
身支度をお願いします。
気持ちを沈めるため、10分ほどお茶を飲みながら歓談時間にさせてくださいね。
そちらのソファーにおかけください」
アヤナはお茶を振る舞う。
リリーが言う
「すっごい気持ちよかった。
こんなことならもっと早く来るべきだったね?」
ケイトが言う。
「だよね。まぁ、ちょっと前まで高ランクの先輩がたくさんいて利用し辛かったけど」
ジェシカが言う。
「これはもう病みつきになりそう。美容にもよさそうだし。
ギルド直営の無料店なら安心できるし、通うしかないね」
シエラが言う。
「気持ちよかった、ありがとね、お姉さん」
アヤナが言う。
「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします」
アヤナが、あと3回、施術を終え、1Fで見送りをしていた時、先ほどエリンに案内した、異世界転移カップルの魔人の青年が各種掲示板をみながらうろうろしているのを見つけた。
エリンと連れのダークエルフの女の子の姿なかった。
アヤナは、魔人の青年に話しかける。
「おつかれさま、なにか探し物?」
魔人の青年は恥ずかしそうに答える。
「あ、先ほどはありがとうございました。
ちょっと暇つぶしです。
連れがエリンさんから、メイクのレクチャーを受けてる最中なんです」
アヤナが言う。
「あら、そうなんだ」
アヤナは、自分がメイクのレクチャーを受けている時に、ユウトが気を使って手回ししてくれたことを話してあげた。
魔人の青年が言う。
「なるほど、参考になります。
お姉さんの彼氏さんてそれを普通にできるイケメンさんなんですね。すごいな。
そっか、これからはボクがそういうの気にしなきゃいけないのか」
アヤナが言う。
「あ、そうだった、私、アヤナっていうの。よろしくね」
魔人の青年が言う。
「あ、ボク、ミ……じゃなかった、タツヤっていいます。連れはミヅキっていいます。こちらこそよろしくお願いします、アヤナさん。早速なのですけど、連れのバイトと拠点探しの相談に乗ってもらっても良いですか?」
アヤナが言う。
「もちろん。
拠点探しは、宿屋の店主さんに相談するといいかも。私か私の彼氏のユウトの名前を出せば話しが早いと思う。郊外の物件は治安が悪いからやめた方がいいよ。タツヤが大丈夫でも、ミヅキが危険だからね。
おすすめのバイトはギルド併設の酒場のウェイトレスかな。文字を読めなくても大丈夫だし、暗算くらいはできるでしょ?
私、OGだから、店主さんに紹介できるよ」
タツヤが言う。
「ほんとですか? それ、とても助かります。
タツ……じゃなかった、ミヅキが戻ってきたら、紹介してもらっていいですか?」
アヤナが言う。
「うん、もちろん」
タツヤが言う。
「あ、もどってきた」
タツヤがミヅキに駆け寄る。
タツヤが言う。
「ミヅキちゃん、美人さんだね。
それ、自分でできるようになったんだ、もうすっかり女子だね?」
恥ずかしそうに、ミヅキが言う。
「もー、他人事だと思って……」
タツヤがニヤニヤしながら言う。
「他人事だしねー。他人事にできるようになったのはちょっと嬉しいかも。
ミヅキちゃんさ、もう、どうにもならないのだからさ、あきらめて女子を頑張りなよ」
エリンとアヤナは二人のやりとりを微笑ましそうに眺めている。
アヤナが言う。
「あ、そうだ、エリンちゃん。
ダークエルフの後輩ちゃんだし、エリンちゃんから酒場の店主さんにミヅキを紹介してあげられる?」
エリンが言う。
「そうだね。紹介してあげた方がいいね。ミヅキは向いてそうだし。
ミヅキはどうする? そこの酒場でウェイトレスのバイトやってみる?」
ミヅキが言う。
「おれ……私に、できるのでしょうか?」
エリンが言う。
「全然問題ないよ。文字の勉強時間も取れるしね」
ミヅキが言う。
「そうなんですか。エリンさんがそう言うなら挑戦してみます」
エリンが言う。
「じゃぁ、彼氏くん、彼女を借りていくね。
悪いけど、面接とかいろいろあるからさらに1時間くらい暇つぶしてきてね」
エリンはミヅキを連れて、酒場に向かって行った。
ちょうど、ユウトが任務から戻ってきた。
ユウトは任務報告を終えると、アヤナとタツヤの元に来た。
アヤナが言う。
「ユウト、おかえり。
おつかれさま」
ユウトが言う。
「珍しいね、アヤナが男性と一緒なんて、ちょっと妬いちゃったよ?」
アヤナは事情を説明した。
ユウトが言う。
「そっか、ならボクが宿屋の店主を紹介してあげる。
あと、お金のこととか、冒険者任務のこととかも教えてあげた方がいいね」
そう言うと、ユウトはタツヤを誘って、ギルドから出ていった。
アヤナは、受付の裏で、事務処理の続きを始めた。
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