リア充、オーバーヒートする

 正午過ぎ、ユウトとアヤナは、ベッドで微睡まどろみから覚醒したばかりだった。

 二人は、ベッドに寝転びながら、話をしていた。


 ユウトが言う。

「おはよう。どうにか、1ヶ月やり抜いたね」


 アヤナが言う。

「おはよ。でもあっという間だったね。充実して楽しかった」


 ユウトが言う。

「専業で、どれくらい貯蓄できるかわかったから、そろそろ兼業を始動しよっか」


 アヤナが申し訳なさそうに言う。

「ありがとね。なんか、完全に私のためになっちゃてるよね。

 申し訳ないけど、頑張って銅等級になりたいから、それまで手伝ってくれる?」


 ユウトが言う。

「もちろんだよ。兼業でも十分な収入が確保できるから気にしないでね」


 アヤナが言う。

「ほんとうに、ありがとう」

 

「………」

 アヤナは無言でユウトを見つめる。


 ユウトが言う。

「なに? どうかした?」


 アヤナが恥ずかしそうに言う。

「……あのさ、いままで言い出しずらかったのだけど、

 流石に見てられなくなってきたので、私から言うね?」


 ユウトが言う。

「なにを?」


 アヤナが赤面しながら言う。

「……抜いとく?」


 ユウトが驚きながら言う。

「は? ……ええ!?

 いあ、えっと、どうしたの?」


 アヤナが恥ずかしそうに言う。

「いあ、我慢しないでいいから。

 私、サキュバスなんだよ?

 ユウトの〝アレ〟の事情、かなり知覚できるのだからね?

 これ以上、説明が必要?」


 ユウトが恥ずかしそうに言う。

「えーと……じゃ、お願いしようかな。

 でも、ほんとにいいの?」


 アヤナが頬を染めながら言う。

「あたり前じゃん。

 私だって、二人の関係を前に進めたいんだよ?

 それに、自分の彼氏をアレの問題で困らせるとか、サキュバスの名折れだし。

 そういうこと我慢されるのは、私にとっての恥になるのだからね?」


 ユウトが恥ずかしそうに言う。

「サキュバスってそういうものなんだ……すごいね。

 よくわからないけど、ありがと。

 ボク、こんな経験初めてだし、実は、どうするか困ってたんだ。

 悪いけど、お願いするね」


 アヤナが頬を染めながら言う。

「悪くないよ。

 良い事だから気にしないで。

 まかせて」


 アヤナは、起き上がると、サキュバスとして初めての作業に取り掛かった。

 そして、ユウトのアレの問題を解消した瞬間、体がオーバーヒートして、気を失ってしまった。


 ユウトは、急いで氷結魔法を使ってアヤナの体を丁寧に冷却する。


 アヤナが目を覚ます。

「……うーん、あれ? 私、気を失ってた?」


 ユウトは恥ずかしそうにかつ申し訳なさそうに言う。

「だいじょうぶ?

 体に流れる魔力が一気に上限を超えちゃったみたいだね……なんかごめん。

 我慢しすぎちゃってたみたい」


 アヤナが恥ずかしそうに言う。

「え? あーそうか。

 あーしてから、あーするべきだったのか……。

 今のは私の経験不足のせいだから……ごめん。

 次からは大丈夫。

 簡単にできると思って気を抜いてた。

 やっぱり私、ポンコツだね。

 心配かけちゃってほんとごめん」


 ユウトが恥ずかしそうに言う。

「いあいあ、ボクはとても助かったよ。

 なんだか大人の階段を上がった気分。

 男性ってこういう感じなんだね。

 ちょっと嬉しい、いあ、とても嬉しい。

 てか、サキュバスってすごいね……」


 アヤナが赤面しながら言う。

「……恥ずかしいから、それ以上は何もいわないでね。

 私の心のライフはもうゼロだから」


 ユウトが言う。

「あはは。わかった。ありがとね。

 おかげでスッキリした。

 次からはちゃんとボクからお願いするから」


 アヤナが赤面しながら言う。

「……うん、そうしてもらえると助かる。

 本当はちゃんと受け入れてあげたいのだけど、

 まだ恐くって……ごめんね」


 ユウトが恥ずかしそうに言う。

「わかってる。

 お互い、ゆっくり慣れて行こう」



 ……



 ユウトは冒険者として目覚ましい成長を遂げていた。

 アヤナと一緒に冒険者ギルドへ行くと、高評価を得やすい依頼書を5枚見繕って、受付に申請した。

 そしてマーケットへ向かい、飲料水や食材、ポーション類などを補充し、旅の準備をあっという間に整えると、自分の馬にまたがって、アヤナに手を伸ばした。


 ユウトが白馬に乗って言う。

「さぁ、ボクの後ろにのって」

 

 アヤナは、ユウトに引き揚げてもらい、生まれて初めて初めて馬に乗った。


 アヤナが言う。

「ユウトの王子様感がすごくてステキだと思う反面、

 何故か、むしょうに敗北感を覚えている私がいる……」


 ユウトが言う。

「あはは、何それ?

 落ちないようにボクにしっかりつかまっててね。

 舌を噛まないように気をつけて。

 いくよ!」


 アヤナがユウトの腰に手を回すと、ユウトは馬を疾走させた。


 そして、一日で、5件の依頼を完遂させて、帰投する。


 アヤナは、一気に3段階等級が上がり、珊瑚等級に昇格した。


 二人は、ギルド併設の酒場で祝杯をあげた。


 アヤナが新しい冒険者ネックレスを見ながら言う。

「一気に3等級も上がっちゃった。いいのかな?

 私、らくをしすぎてない?

 もう、6番目の珊瑚だよ? すごくない?」


 ユウトが言う。

「冒険者仲間に教えてもらったコツがあるんだ。

 それに、10番目の瑠璃等級くらいまではサクサク上がるらしい。

 アヤナは、今日一日で、冒険者としてかなり経験を積んでるから順当な成長だよ。

 決して楽はしてないと思う。正当な評価だよ」


 アヤナが言う。

「ならよかった。

 嬉しいな、2回目の冒険なのに珊瑚等級とか……。

 でも、ユウトはすごいね、すでにベテラン冒険者の風格があるよね。

 危険な任務もたくさんこなしたのでしょ?」


 ユウトが言う。

「まぁ、それなりだよ。

 冒険者仲間で助け合えば大抵のことはへっちゃらだからね」


 アヤナが言う。

「ユウトは冒険者向きの性格してるんだね。自慢の彼氏だよ。

 逆に、私はミラさんに、受付係向きだって太鼓判おされてる……」


 ユウトが言う。

「ありがと。なら、頑張って銅等級にならないとね」


 アヤナが嬉しそうに言う。

「先は長いけど、希望が出てきた。

 ありがとね、ユウト。感謝してもしきれないよ」


 ユウトが言う。

「気にしないで。明日も行くからあと2段階あげて、真珠等級にしちゃおうね」


 アヤナが言う。

「わかった、楽しみにしてる。

 危険な任務は怖いけど、ユウトとの冒険は楽しいよ」


 ユウトが言う。

「ありがと。ボクもだよ、アヤナ。

 できれば専業で連れ回したいくらいだよ」


 ユウトが恥ずかしそうに続ける。

「……それと、就寝前にさ、アレ、お願いしてもいい?

 アヤナと一緒にいるとその……」


 アヤナが赤面して言葉を遮る。

「……うん、まかせて。

 私を求めてくれてすごく嬉しい。

 オーバーヒート対策もちゃんとするから安心していいよ。

 あと、恥ずかしいからそれ以上は言わないでいいからね」


 この日を境に、二人の関係もさらに深まっていった。


 アヤナは、兼業ウェイトレスをしながら、わずか1ヶ月で、12番目の翡翠ひすい等級まで上がった。


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