アンドロマリウス冒険者ギルド


 ユウトとアヤナは港町アンドロマリウスへ入って行った。

 アヤナは露出が多いので、恥ずかしくて、ユウトの影に隠れるように歩いていた。


 ユウトが言う。

「アヤナ。不審者みたいで悪目立ちしてるから、堂々としてなよ。

 ダークエルフやサキュバスのお姉さんをちょくちょく見かけるじゃん。

 あんな感じに堂々としてないと逆に変だよ?」


 アヤナが言う。

「……うん。しかし、みんな露出がすごいね」


 ユウトが言う。

「だね。しかも、みんなスタイルが良い。

 アヤナもかなりスタイル良くなってるし」


 アヤナが言う。

「自分でそれ言う?

 てか、私が恥ずかしいだけか……」


 アヤナは恥ずかしながらも、堂々と歩き始める。


 ユウトが言う。

「さまになってるじゃん。

 高いヒールも履きこなしてるね」


 アヤナが言う。

「言われてみれば、普通にエロく歩ける。

 超恥ずかしい。

 変なところで基本スキルポイントを使っているんじゃないだろうか……?」


 ユウトが言う。

「あはは。かもね。でも似合ってる。可愛いよ」


 アヤナが言う。

「可愛いとか言われると、恥ずいんだけど」


 ユウトが言う。

「慣れなよ。女の子は当たり前の様に言われるのだからさ」


 アヤナが頬を染めながら言う。

「……わかった」



 二人は冒険者ギルドを探す。

 街の案内版を見つけた。


 アヤナが言う。

「全然読めない。でも、このアイコンがギルドっぽくない?」


 ユウトが言う。

「残念。それはこの街の騎士団の本部だね。

 冒険者ギルドはこれ。

 早速行ってみよう」


 アヤナが言う。

「なんかユウトだけ文字読めてずるいな。

 勉強できるところあるのかな?」


 ユウトが言う。

「あるかもしれないね。

 冒険者ギルドで聞いてみよう」


「ねぇ、ユウト。お願いなんだけどさ。

 もうちょっとゆっくり歩けない?」


「あ? ごめん、いつもの感覚でいた。

 歩幅が全然違うよね、ごめんね」


「うん」


 少し歩くと、冒険者ギルドについた。

 通常はモンスター扱いの様々な種族がいた。

 

 アヤナが言う。

「うあ、アラクネのお姉さん美人すぎ。

 しかも足がめっちゃ綺麗」


 ユウトが言う。

「ラミアのお姉さんも美人だね。

 下半身が艶かしいね。

 あ、受付はあっちだ」


 ユウトはそう言うと、アヤナの手を握って、受付の方へ歩きだす。

 アヤナは頬を染めて恥ずかしそうについて行った。


 受付嬢のダークエルフのお姉さんが言う。

「これはこれは、初々しいカップルですね?

 こちらは初めてですか?」


 ユウトが言う。

「はい、二人とも、まったくの初心者です。どうすればよいですか?」


「冒険者証はお持ちでしょうか?」


「はい」

 ユウトとアヤナは冒険者証をダークエルフのお姉さんに渡す。


「これは素晴らしい。

 ユウトさんは、とても優秀なのですね。

 ユウトさんの実力があればミスリル等級でも不思議ではありません。

 しかし、初心者さまとのことですので、銀等級からのスタートをお勧めいたします。

 お連れのアヤナさんは、琥珀等級がよろしいかと」


 ユウトが言う。

「ではそれでお願いします。

 それと、この世界の基本的なことを学べる施設はありますか?

 アヤナは文字が読めないので学ばせてやりたいのですが」


「もしかして、転移者さまでしょうか?」


 ユウトが言う。

「はい、異世界から来たばかりです」


「そうでしたか。

 冒険者ギルドが主宰しているセミナーが多数ございます。

 転移者さま向けの無料セミナーも多数ご用意しておりますので、是非ご利用ください。

 当館の3Fにある掲示板に開催日程が掲示されております。

 転移者さま向けの無料セミナーは予約制です。申し込み用紙は、3Fの掲示板のそばに置いてありますので、お名前を記入して3Fの受付係にご提出ください。

 ただ、文字の読み書きにつきましては、学習時間を要するので、有料セミナーでの取り扱いになっております、ご容赦ください」


 ユウトが言う。

「わかりました。ありがとうございます。

 あの、転移者って多いのですか?」


「かなりの少数派ですね。なのでセミナーは完全予約制になっております。

 転移者さまとお知り合いになりたい場合は、ギルド併設の酒場で冒険者さまに直接伺うのがよろしいかと思います。

 みなさん、気さくで優しい方が多いですよ。

 改めまして、ゴエティア、アレイスター大陸、アンドロマリウスへようこそおいでくださいました。

 今後とも、当ギルドをご贔屓ひいきいただきますようよろしくお願い申し上げます」


 受付嬢のダークエルフのお姉さんは深々とお辞儀をした。


 ユウトが言う。

「こちらこそ、これからよろしくお願いします」


 アヤナが言う。

「よろしくお願いします」


 二人は、冒険者ネックレスを受け取ると、3Fの掲示板の前に来た。

 

 アヤナが言う。

「やっぱり、全く読めない。

 申込書がどれかすらわからない。

 文字の読み書きセミナーってどれ?」


 ユウトが言う。

「うーん。今いくら持ってたっけ……アヤナの分と合わせても結構手持ちが少ない気がしてきた。

 文字の読み書きってかなり高額だ。流石に足元見てるな。

 とりあえず、無料セミナー受けまくろっか」


 アヤナが言う。

「そうなの……?

 私も読み書きスキル欲しかったな。

 でもさ、無料セミナーで文字の読み書きが必要だったらどうしよう?

 てか、私さ、申込書に名前すら書けないよ?」


 ユウトが言う。

「都度、ボクが教える。ちょっとずつ必要なのから覚えよっか」


 アヤナが言う。

「わかった。まずは自分の名前くらいは書けるようにしないとだね」


 アヤナは、自分の首に、冒険者ネックレスを付けながら言う。 

「ちなみに琥珀等級と銀等級ってどれくらい差があるの?」


 ユウトが答える。

「やっぱりそう思うよね……」


 アヤナが言う。

「どう言う意味? かなり差があるってこと?」


 ユウトが答える。

「全22等級あって、琥珀は下から3番目。銀は下から18番目……」


 アヤナが言う。

「……私、お荷物かな?

 魔人じゃなくて淫魔って言われた時点で嫌な予感がしてたんだよね」


 ユウトが答える。

「一緒にがんばろ? ボクはアヤナから離れるつもりないからね」


 アヤナが言う。

「……ありがと。身の回りの世話とか、雑用は私に任せてね」


 ユウトが答える。

「そこまで、卑下しないで、気長に頑張ろ……?」


 アヤナが言う。

「……うん。でも、雑用は私が受け持つね。でないと耐えられない」


 ユウトが答える。

「わかった」


 ユウトは、適当な申し込み用紙を一枚取って、その裏に、現地の文字で『アヤナ キタシロ』と書いた。

 

 ユウトが言う。

「これが、アヤナ=キタシロ。ここがアヤナで、こっちがキタシロ」


 アヤナが言う。

「わかった、練習してみる」


 アヤナは別の用紙を取って、裏紙に練習を始めた。


 ユウトは必要な無料セミナーの用紙をとって『ユウト=キリタニ』と書き始める。


 アヤナが言う。

「なんか楽しそうだね?」


「うん。自分の名前がさ。ユウト=キリタニなのがすごく嬉しくて」


 アヤナが言う。

「え? なんで?」


「実はさ、ボクね、アヤナのことがずっと羨ましかったんだ。

 アヤナみたいな男の子に生まれたかったから。

 今は自分がユウト=キリタニなんだなって実感したら楽しくなってきちゃった」


 アヤナが言う。

「そっか、そんなに女子が嫌だったんだね。

 ここまできたら観念して私がアヤナをがんばるよ」


「ありがと、アヤナ」


 アヤナが言う。

「気にしないで、これからめちゃくちゃお世話になりそうな感じだしね。

 せめて、苦手な女子くらいは引き受けないと申し訳ないから」


「だから、卑下しないで、ボクは大丈夫だから」


 アヤナが言う。

「でもさ、そう言われてみると変な感じ。

 私がアヤナ=キタシロなんだよね。

 いま書いてる文字って、アヤナ=キタシロなんだよね。

 そっか、私、アヤナ=キタシロなんだ」


「そうだよ、君はアヤナだよ」


 アヤナが言う。

「だよね。

 で、どれに名前書けば良い?

 こんな感じであってるよね?」


「うーん……?」


 アヤナが言う。

「え? おかしい?」


「うん、それだと、ヤマメ=イマシタになってるよ」


 アヤナが言う。

「……どこがどう違うの?」


「ここがこうで、こうやって、こう。それでここがこうでこう」


 アヤナが言う。

「うあ、微妙なんだねー。読み書きセミナーの料金が高額なわけだ」


「うん。練習続けて」


 アヤナは1時間ほどかけて、どうにか自分の名前を書けるようになった。

 二人は、3Fの受付係に申込書を提出してその場を去った。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る