第4話
アレンティウス王国の中にある王立アレンティウス学園。15歳から18歳まで通う学園だ。
この学園は貴族だけが通う学校ではなく、執事見習いや騎士見習いなど様々な学生が通っており、学科ごとに棟が分かれている。
私は一般教育部門の棟に通っていて、キリアは将来執事になる為に執事専門の棟に通っている。
「ユリシア、おはよう。」
このゲームの悪役令嬢役のマリアナ様が声をかけてくる。
悪役令嬢は攻略済みだ。マリアナ様はこの国の王子であり攻略対象のユークリス様が好きなので私がどれだけキリアが好きで王子に興味がないか力説をしたら納得してくれた。引き気味だったが今ではいい友人だ。
「マリアナ、おはよう。」
「今日も入ってましたの?例の手紙」
「えぇ、入ってたわ。いつも通りに。」
私はパンパンになった封筒を机から取り出す。
手紙には気持ちが悪い程私に対しての事が事細かに書かれており、黒い薔薇の花弁が入っている。
黒い薔薇の花言葉は(貴方は私のもの)だ。
誰があんたの物よ、私の物は私の物よ!っと怒鳴りつけたい位だ。
「やはりキリアさんに直接相談した方が宜しいのでは?カフェで噂を流すくらいで留まるかしら?」
「確かに噂を流すくらいで止まるような人だったらこんな事はしないと思うけれど、これも作戦のうちよ。」
「作戦とは?」
「噂を流せば、この学園の情報屋カイルの耳に入るわよね、そこからキリアの耳にも入る筈!そして、焦ったキリアが私に問い詰めてくるっていう私の中のシナリオよ。」
私の事を大事に思っている筈なら、絶対問い詰めてくる筈。問い詰めて来ないと逆に私に対して興味がないと考えてしまう。恋愛に対して臆病な私は、これをきっかけにもっとキリアに近づけたらと考えている。
「そんなまどろっこしい事しなくても、素直に相談した方が可愛らしいと思いますけれどね。」
「この私がキリアに素直に話せれると思う!絶対に無理だわ……気持ちがいっぱいいっぱいで吐きそうになる……。」
「そんな調子じゃ、いつまで経っても進展しないわよ。」
「わかってるわよ、だからいつも放課後に図書館で恋愛指南書を読んでるじゃない。」
「そんな書物に頼らず、実戦あるのみよ。私の恋愛相談に乗れて、自分の恋を発展出来ないなんて可哀想だわね。」
おい待て、そんな事言って顔が笑ってるわよ。
王子と最近上手くいってるのかわからないけれど、余裕こいて私の事を内心笑ってるよね。
なんて言える事なく、授業が始まる合図の鐘が鳴る。
「とにかく貴方は遠回しに裏で動くのではなく、積極的にキリアさんにアピールするべきね」
そう言ってマリアナは席に戻る。
そんな事が出来るならもうしてるわよなんて言い返す事も出来ず私は授業の準備に取り掛かるのであった。
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